年に1度行われる体力測定・・・

・懸垂
・立ち幅跳び
・50m走
・ソフトボール投げ
・1500m走(女学は1000)

の種目で0〜20点の点数が付けられる。
5種目で75点以上取った学生には体力褒賞フィジカルバッジという物が贈られる。


「真壁すげぇなあ〜」
「あいつ陸上部も行けたんじゃないか?」

50m走 20点
1000m走 18点
ソフトボール投げ 15点
懸垂 12点
立ち幅跳び 10点

担当の久坂はおお、と驚くと

「真壁!凄いぞ!ギリギリ75点、1級だ!」
「え?やったー!!」

大喜びする中男性陣は

「あいつ1番小さいのになんだあの体力・・・」
「剣道だからな、肩は強いはずだ・・・」
「避雷針、女王様の次は化け物だ・・・」
「女子で75点以上は知念!」

久坂に名前を呼ばれると知念はわーい!と手を上げ、麻琴と手を取って喜ぶ。

「さすがみやちゃんだね!」
「麻琴こそ凄いよ!」

こうして麻琴と知念はフィジカルバッジを手に入れた 。





「・・・ってことがあったんです〜」

体力測定の結果を岩崎に報告してこい・・・と先輩に言われたためシンチャイは岩崎と岡田の居室にやってきて体力測定の話をしていると岡田はそうかそうかと相槌をうつ。

その横で、岩崎は1年生全員の体力測定の結果をエクセルに打ち込んでいく。

「ふむ・・・なるほど。真壁と知念は女学にして置くのがもったいない逸材だな」
「あはは、そうですよね〜!」
「岩崎、出来たのか?」
「はい。データはこちらに」
「サンキュ」

USBを抜くと部屋長に渡し、部屋長は

「今年は勝つ・・・!」

そう言い残すと部屋を出ていった。
それを見送ったシンチャイと同室の同期である草間は首を傾げると

「ふっ、時期に分かるさ」



11月・・・開校祭の始まりだ。






11月に行われる最も盛大な行事とされている開校記念祭。普段は事前予約で学校を見学できるのだがこの2日間は政府高官招いての観閲式、模擬店、居室や研究室、訓練展示などが公開さたり防大生が案内する開校祭ツアーなどなど・・・要は文化祭だ。毎年2万人近くのお客様が防衛大学校に足を運ぶ。

そして1番の大目玉が棒倒し。
各大隊から150名が選出され攻撃、守備など細かな戦略を立てて優勝を目指す。

これらの準備もしなければならないため、ただでさえ忙しい防大生はもっと忙しくなるのだ。


11月まで当分先・・・だが、早くも準備が進められている。


1大隊である麻琴の割り当ては


「・・・模擬店?」
「そうだ!お前には模擬店の客寄せをしてもらう!」


芹澤に熱弁され麻琴は分かりました、と頷く。

「悪いな、男衆の何割かは棒倒しに専念してしまう。俺も顔を出せる時には出そう」
「了解です! 頑張ってください!」

麻琴の仕事は模擬店だけではなく、女子達は他大隊の潜入調査の役割もある。
永井や知念と共に練習をする他の大隊の練習風景を録画し、それを持っていく。

そして展示部屋である実習室の飾り付け・・・時間の余った麻琴は部屋で黙々と準備をしているとノックをされたので返事をした。


「やあ真壁。失礼するよ。」
「岩崎さん。こんにちは!」

慌てて床から立ち上がったが足が痺れてしまいよろけてしまった。すると咄嗟に岩崎が手を差し出して麻琴の手を握ると

「ははは!だいぶ集中していたみたいだな!」
「す、すみません!」

岩崎も床にあぐらをかいて、麻琴も床に座る。

「さすが女子だな、部屋が華やかじゃないか」
「えへへ、やってたら楽しくなっちゃって。作りすぎちゃったので、岩崎さんの居室にもどうです?」

何個か有り余った折り紙で作った飾りを渡すと、岩崎は目をキラキラさせて喜んだ。

「いいのか?!ありがとう!うちの部屋っ子達はセンスが無くてね・・・おかげで華やかになるよ!」
「えへへ、そうだ。棒倒しどうです?」
「ああ、順調だよ!今年も猿は坂木だ!」

坂木・・・その名前を聞くと麻琴は少しだけ目を見開いたのを岩崎は見逃さなかった。

「今年こそ勝って、ウィニングロードを練り歩くんだ」

そう言って目を輝かせる岩崎に麻琴はああ、と手を合わせると

「舎前を優勝の看板を持って歩いてるやつですね!」
「そうだ! 残念ながら、オレはまだ歩いた事がなくてな・・・先輩達と一緒に、今年こそは歩きたい」

そして岩崎は麻琴の手を握ると

「真壁、突然で悪いんだが頼みがあるんだ」
「はい?」

岩崎は大きく深呼吸をすると真剣な目で

「・・・もし棒倒しで優勝をしたら、オレとデートしてくれないか?」
「・・・・・・・・・・・・」

突然の申し出に、麻琴は笑顔のまま硬直した。

「・・・真壁?大丈夫か?」
「・・・っは!え、えええっ!何でですか!?あれ、内恋は禁止だと・・・」

小声になった麻琴に岩崎はクスクスと笑うと

「否定派も居るし撲滅派も居る。オレは肯定派だ。上手く隠せば、それはそれでいいと思っている。」
「は、はあ・・・」
「それに好きな人が居れば、モチベーションが高まるってものだ」

好きな人・・・確かに、と麻琴は坂木の顔を思い浮かべたが何故岩崎は麻琴にデートを申し込んだのだろう。

「・・・実は、入校時に坂木とタイマンを張った1年の女学が居ると聞いてどんな子だろうと気にはなっていたんだ。 実際会ってみれば可愛らしい子で、オレは驚いた。」
「か、かわ・・・恐れ多いです」
「真壁は可愛いぞ?自信をもて。」

そんなに連呼されてしまっては麻琴は恥ずかしくなりうわああと言いながら作業服で顔を隠すと岩崎は大笑いした。

「何事も全力を出している君が段々気になってしまっていてね。 オレはずっと君と話してみたいと思っていたんだ。」
「は、はあ・・・」
「デートなんて大袈裟に言ってすまないね、まずは君の事も知りたいしオレのことも知って欲しい。駄目かな?」

こてん、とあざとく首を傾げる岩崎。

「それとも、真壁には好きな人が居るのかい?」
「あ、えと・・・そんな事は・・・」
「本当かい?」

麻琴は作業服の裾をギュッと握り顔を赤くさせると

「・・・どこか、お茶に、行くだけでしたら・・・」
「ホントか!?〜〜〜っ!よっし!」

岩崎はガッツポーズをして麻琴の両肩に手を置くと

「オレは全力で頑張る!見ていてくれ!」
「は、はい!頑張ってください」

うむ、と岩崎は折り紙を大事に持つと手を振って実習室を出ていった。



避雷針に約束



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