コント大会・・・それは、1年から3年生が1発芸を披露し4年生が審査員をするというイベントだ。各々ペアを組んでネタを考える者も居れば、ピンで頑張る勇者もいる。
大久保はルンルンとした気分で、今年のコント大会での相方を探していた。・・・しかし、誰も見つからない。
去年は坂木とペアを組んだが先程声を掛けただけで「お前とは組まねぇ」と門前払いを食らってしまった・・・
やれやれ、とため息をついていると曲がり角で麻琴と鉢合わせした。
「ちわっ!」
咄嗟に麻琴はピッと敬礼をして大久保も敬礼をする。
「真壁学生は、コント大会どうするんです?」
「あぁー・・・実は私、1年一人部屋で・・・凄く憂鬱なんですよ・・・」
だいたいが部屋っ子同士で相方が決まるのだが、永井はピンでやると張り切り3年の荻野は相方が決まっているため麻琴は1人・・・大久保は目を光らせるとガシッと肩を掴むと
「では真壁学生・・・私が相方になりましょう・・・!」
「・・・・・・へ?」
***
コント大会当日・・・各自暖めてきた渾身のネタを披露し、どっと笑い声が講堂に響き渡る。
「次は、真壁学生と・・・・・・大久保学生、よろしくお願いします」
大久保と真壁・・・ざわっとした講堂。
それはそうだ、2人は当日まで誰と相方を組んだか内緒にしていたのだ。大久保曰く、内緒にしていた方がウケるから・・・と麻琴は周りの学生に誰と組むと聞かれてもピンで乗り切ると宣言していた。
「・・・めちゃくちゃ嫌な予感しかしねぇな」
去年それを味わった坂木が腕を組んで冷や汗を流す。
もちろん大ウケで大盛況に終わったのだが・・・内容が内容なのだ。
「それでは、お願いします!」
まず出てきたのは大久保だ。
「私は大久保俊道、今日は防衛大学校入校式・・・宣誓書も書きましたし、私は今日から防大生の一員です!先輩たちも優しいし、これから楽しくやっていけそうです!」
新入生が誰しも思っていた気持ちを代弁し、全員がお客様期間の対応と入校後の対応のギャップを思い出し「あぁ・・・」と同情する。
「ううっ先輩たち、いきなり怖くなって・・・私はもうダメかもしれない・・・」
場面は切り替わり、雑巾で床を拭き始める大久保・・・そこにやったきたのは学生服を着た麻琴。
「おい!大久保学生!」
「は、はい!こんにちは!」
大久保は怯えながら麻琴に敬礼をし、麻琴は床を見ると
「拭き残しがあるぞ!ちゃんと直角に拭けと、対番から教わらなかったか!」
「はい!」
「それに何だその襟章は!ピカール不備!」
「ピカール不備!」
「大久保、脱げ!」
脱げ・・・?それを理解した瞬間ワーッ!と歓声が沸いた。裸芸は、大久保の十八番。待ってましたと言わんばかりの大盛況だ。
裸にサスペンダー、乳首は星で被せてありちゃんと規制も守っている。 麻琴は怯みそうになったが、腰に隠し持っていたバラ鞭を取り出すと
「大久保、なんだその格好は!」
「これが私の勝負服です!」
「とんだ変態だな!」
「ありがとうございます!」
どっと笑いが溢れる中、突然麻琴がボタンに手をかけ始めた。その顔は真っ赤で、全員が「オイオイ」と顔を青ざめた。
「大久保!お前の本気しかと受け止めた!私も本気を・・・だ、だそうじゃないか!」
「真壁さんの本気!よろしくお願いします!」
そう言い切ると麻琴は学生服を一気に過ぎ去ると、学生帽を被ったSM嬢・・・短パンに網タイツという格好になった。
「大久保ォ!これが防大流の挨拶だァ!!」
「はぁい!」
麻琴は大久保のサスペンダーを思いっきり引っ張り手を離すとバチィン!と音がなり大久保が悲鳴を上げのたうち回ると、一気に笑いが起きる。
「清掃状況開始!」
「状況開始!」
四つん這いになる大久保に座るとバラ鞭を叩き、麻琴を乗せたまま腕立てをさせる。
下級生が上級生に鞭を打つ・・・それだけで面白い状況だが、坂木は正直焦りまくり我慢の限界だと立ち上がると上の学生服を脱ぎながらステージに乗り込んだ。
もちろん坂木は裸サスペンダーではなく、ちゃんと服を着ている。その学生服を麻琴の腰に回しさらけ出された脚を隠すと、麻琴の手から鞭を奪い取り
「このっ・・・変態が!」
バチィン!
「いっ・・・!あ、ありがとうございまぁす!」
坂木の渾身の一撃でまた会場が沸き、倒れた大久保と腰に学生服を巻かれ突然の坂木に震える麻琴の頭を掴むと
「ありがとうございましたー」
頭を下げ強制終了させる。
全て演出かと言うような終わり方をし、拍手が送られる中坂木は麻琴をステージ外に押し返し大久保を引きずってはけたのだった。
「こんのっ・・・馬鹿か!」
坂木は腰に手を付き、見下ろすさきには正座をしている裸サスペンダーの大久保とSM嬢の麻琴。
「「・・・すみませんでした」」
「ったく・・・今年は大人しいと思ったら真壁使ってたのか」
ピンで本当に大丈夫だろうかと心配した結果がこれだ。最悪自分とペアを組めばいいと思っていたのだが後輩の成長のためだと声をかけずにいたのだ。
「あ、あはは、でも坂木、大ウケでしたし・・・」
「・・・まあ、オレ達3年は参加が最後だからな。気は済んだか?」
「もちろん! 真壁、ご協力感謝します」
そう言って麻琴に頭を下げると麻琴は慌てて
「い、いえいえ!こちらこそありがとうございました! あの、痛くなかったです?」
「もちろん大丈夫ですよ。慣れてるので」
「(慣れてる・・・?)」
「とにかく、真壁。とっとと着替えろ!・・・・・・目のやり場に困る」
坂木は目を逸らすと麻琴は慌てて持ってきたズボンと学生服を着たのだった。
「えー今年の優勝は大久保学生と真壁学生ペアです!」
パチパチパチと拍手が沸きあがり、顔を赤くさせた麻琴とにこやかな大久保が景品を受け取る。
後に麻琴は「SM嬢学生」「女王様」という通り名が他大隊にまで浸透してしまったとか。