中期の部屋・・・麻琴は改めてネームプレートを見る。
4年梅原湊月(うめはらみつき)
3年荻野薫(おぎのかおる)
2年永井なお
1年真壁麻琴
「・・・・・・はぁ」
数少ない女子、4人部屋で今回は1年生が1人。めちゃくちゃ気を使うではないか・・・と麻琴はどんよりしたがやってやろうではないか、とドアを開けて急いで先輩たちのネームプレートを準備したり部屋の掃除をし始めた。
中期が始まると前期定期試験も行われる。
普段の学生舎生活、体力錬成、訓練や校友会疲れもありつい授業で居眠りをしてしまいがちになる1学年にとっては遠泳並の難関である。
自習室で勉強するのも悪くは無いがたまには気晴らしに・・・と麻琴は図書館に来ていた。
中央には螺旋階段があり、左手の本棚には言語、文学、国防・軍事、寄贈図書などがならべられている。
1年生は教養教育、専門基礎、外国語、防衛学が主になる。防衛学基礎T、防衛学基礎U、外国語・・・麻琴はパラパラと教科書をめくり授業のノートを復習する。
うーん、と麻琴は蛍光ペンを持って唸っていると
「分からない場所があるのか?」
「へ?」
いつの間にやら、顔を上げると目の前の席に岡田が座っていた。
いつから座っていた?
何であえてこの先輩は向かいに座ったのだ?
違う、欠礼してしまった、と麻琴は慌てて敬礼をすると相変わらずの真顔で敬礼を返すと
「勉強に夢中になっていたんだろう。欠礼は目を伏せよう」
「あ、ありがとうございます・・・」
岡田喜振、1大隊の中期学生長付き・・・入校時も首席で入るという優秀な学生だ。校友会は応援團だ。(※原作では4大隊です)
「で、何が分からないんだ?」
「えっと外国語で・・・」
「そうか、選択は何にしてる?」
「フランス語です」
「フランス語か、少し齧ってたから俺がわかる範囲でなら教えられる」
教えられる・・・麻琴は慌てて首を振ると
「い、いえ!岡田さんも勉強ありますよね・・・お邪魔する訳には・・・」
「試験範囲はあらかたもう押えてある。」
「え、すご・・・」
「それに俺は応援團だからな。頑張る奴を応援するのが俺の役目だ」
強面の顔が僅かに笑みを浮かべる。
麻琴は遠慮がちだったが、ここなんですけど・・・と分からない部分を質問し始めた。
「・・・岡田さん、本当に齧っていた程度でしょうか」
「ああ。齧った程度だ」
麻琴が苦手としていた部分も、岡田はスラスラと分かりやすく教えてくれる。
発音の仕方も細かく指導してくれて麻琴の不安要素がどんどん解消されていった。
「他に分からない科目があれば教えよう」
「ええっ!?・・・じゃ、じゃあ防衛学なんですけど」
「得意分野だな、見せてみろ」
岡田先生による勉強会はまだまだ続きそうである。