進撃の巨人 139話後。
盛大にネタバレや捏造をしていますのでご注意ください。

主人公はエレン達と幼なじみです。










天と地の戦い
あの惨劇が幕を閉じてから早くも3年の月日が経っていた。


「パラディ島は、報復を恐れ新たに軍を作ったそうです」

リヴァイが住む小さな家に顔を出しに来たアルミン、ジャン、コニー。

こうして定期的に顔を見せては近況報告を話に来る。リヴァイは先の戦いの負傷により前線を退いたため、正直内部情報などもう話す必要など無いのだろうが・・・リヴァイは特に断ること無く、車椅子に座りながらその手紙の内容に耳を傾けいつものように縁を覆うようにティーカップを持つと静かに紅茶を口に含めた。

「それと、マコトからも来たんですよ」
「・・・マコトか」

同じ調査兵団だったマコト。
彼女はエレン、アルミン、ミカサの幼なじみで小さな頃からシガンシナ区を駆け回り845年の悲劇を味わい、4人で支え合って生きてきた女性だ。

いつしかリヴァイにも「壁の外に出て、エレン達と冒険に出る」・・・そんな夢を目をキラキラさせて語っていたのだが現実は残酷だ。今やエレンはこの世に居らずミカサはエレンの亡骸と共にパラディ島へ、アルミンは英雄として祭り上げられている。



あの戦いの後、マコトは旅に出ると言いふらりとマーレを出ていった。届いた手紙を開いて同封された写真を見れば、アルミンは苦笑いする。

「はは・・・相変らすだね」

定期的に送られてくる手紙と写真が彼女の唯一の生存確認だ。 手紙の中には色々な景色の写真が数枚入れられておりセルフで撮ったマコトの姿も写されていた。

写ったマコトの手にはいつも、写真技術が普及した頃に撮った調査兵団のメンバーの集合写真を持っており楽しそうに笑っている。

「ったく、こっちは忙しいってのに呑気なやつだぜ」
「マコトのやつ、相変わらず自由な奴だな」

ジャンとコニーは悪態をつくがその顔は楽しそうだ。
机に広げられた写真を手に取りリヴァイも片目を細める。

「元気そうで、結構な事じゃねぇか」
「きっとマコトは僕とエレンの夢を代わりに叶えてくれているんだと思う」
「夢?」

首を傾げるコニーにアルミンは懐かしそうに笑うと

「いつか、壁の外に出たら冒険しよう。ってエレンと話していたのを横でマコトは聞いてて《私も連れてって!》てお願いされたんだ」

そんな約束をしたエレン・・・一度は彼に突き放されたアルミンとマコトとミカサ。 しかしそれは自分を討ち取らせ、人類滅亡を救った英雄として仕立て上げるためだった。

エレンの計画通り、アルミン達は英雄になった訳だが真実を知っている英雄達の顔は複雑だ。


しんみりしてしまった空気・・・リヴァイはコトリと音を立ててカップをテーブルに置くと

「んで、テメェらはここでのんびりとしてていいのか? 明日はパラディ島に行くんだろう?」
「はい。」
「ここを出る前に兵長に顔出しておこうって思って」

兵長・・・もう調査兵団も無くなりリヴァイも兵士長ではない。リヴァイは僅かに眉を寄せると

「おいジャン、俺はもう兵長じゃねぇ。ただのリヴァイだ」
「あっすみません、つい・・・」
「いやぁでも、オレたちは兵長で馴染んじゃってますから」

困ったようにコニーは頭を掻くと、3人は顔を見合わせて笑う。

「まあ・・・好きにしろ」
「はい、兵長」
「じゃあ俺達はそろそろ」
「ああ。気をつけろよ。必ず戻ってこい」

その言葉に3人の顔は引き締まり、はい!と大きな返事をする。アルミン達は明日から和平の連合国大使としてパラディ島へ向かう。途中でパラディ島から攻撃にも遭う可能性があるかもしれない・・・だがしかし、この手紙を寄越したヒストリアを信じて島へ向かうしかないのだ。

アルミンはテーブルの上に組まれた手をギュッと握ると

「僕達の物語を・・・全て話してきます」
「ああ。頼んだぞ」

見送ろう、とリヴァイは立ち上がり松葉杖をつきながら玄関へと向かう。

3人の背中を見送りながら、リヴァイはドアの縁に身体を預け腕を組んだ。


・・・あれから3年の月日が経ち、人々は前を向き世界は少しずつ歩き始めている。



それに比べ、自分は負傷し満足に歩くのもままならない。エルヴィンとの約束を果たし、このままこの小さな家で1人静かに過ごしてそのまま寝たきりで目を覚まさない・・・そんな最期だろう。これが孤独死というのだろうか。

「・・・まあ、それも悪くねぇか」

心臓を捧げた仲間達のために、この世界がどうなって行くのか自分の命が尽きるまで見守る。それでいい。そう言い聞かせながらリヴァイは松葉杖を突きながら玄関の扉を静かに閉じた。



***



次の日、アルミン達を見送るために港へやって来ていたリヴァイ。新聞記者たちや家族に見送られながら和平大使を乗せた船は出港して行った。

「じゃあリヴァイさん、帰りましょうか」
「ああ」

ファルコとガビ、オニャンコポン。
この3人もリヴァイのサポートをしてくれている者達で、あまり自由に動けないリヴァイのためにと家に来てくれる日もある。

ファルコに車椅子を押されながら新聞を開けばそこにはパラディ島へ向かうアルミン達のニュースが一面を飾りその他には政治の話など、地鳴らしによる復興状況などが記されている。

「リヴァイさん、何か欲しいものとかあります?」
「特に何も無いな」
「あっ!リヴァイさん。そういえば、家の紅茶もうすぐ切れそうでしたよ?」

そうカビが言うとそうだったか・・・とリヴァイは顔を上げた。

「・・・悪いな、買いに行ってもいいか?」
「もちろん!」

ファルコは嬉しそうに笑うと行きつけの店へと向かって行った。







「悪いな、助かった」
「いえ!また困ったら何でも言ってくださいね!」
「リヴァイさん、紅茶飲みます?」
「ああ。頂こう」

ファルコはリヴァイの車椅子を押し、ガビは先に家の中へ入りキッチンへと向かう。



・・・すると、遠くからブォン!とエンジンの音が鳴り響きその音は段々とこちらへと近づいてきている。ファルコとリヴァイは振り向くと、1台のサイドカーを付けたモトラド(二輪車)がこちらに近づいて来ていた。

「郵便屋ですかね?」
「いや、アイツらは自転車だろう?」
「ですよね」

モトラドに乗った人物はゴーグルと耳あて付きの帽子を被っており顔は分からないがリヴァイを見つめると笑顔でアクセルを捻った。

「えっ、なんかスピード上がってますけど」
「・・・俺は知らねぇぞ」

砂埃を上げながらモトラドはリヴァイとファルコの目の前に止まり、その人物はゴーグルをグイッと持ち上げる。

その顔に見覚えがありリヴァイは目を見開くと


「お前、マコト・・・か?」

マコトはニッと歯を見せて笑うと

「お久しぶりです!リヴァイ兵長!」





***




他国での旅行中、マコトはマーレにいるアルミン達が大使としてパラディ島へ向かうと言う記事を読み徹夜で走らせて帰ってきたらしい。

しかし着いた頃には船は出港した後・・・マコトは残念そうに肩を落とすとリヴァイは

「宿を取ってないなら一部屋貸してやろう。」
「ありがとうございます!」

空いている一室を借りることになり、マコトは頭を下げる。

そしてチラッと脚を見ると

「兵長、具合はいかかです?」
「まあぼちぼちだな。 車椅子はケツが痛てぇし松葉杖は手が痛くなる。」
「あはは。分かります、モトラドも長時間座ってるとお尻痛くなるんで」
「あの乗り物か・・・ありゃ一体なんだ?」

自転車でも車でもない乗り物・・・マコトはああ、と外にあるモトラドを見ると

「あれはモトラドと言って二輪の車みたいなものです。旅に出るって言った時オニャンコポンが餞別にくれたんですよ。本来はマーレの偵察兵器だったみたいですけど・・・戦争は今の所ありませんからね。」
「なるほどな」
「兵長・・・っと、リヴァイさんは最近はどうです?」

慣れない名前呼び、リヴァイは最近・・・とあった出来事を思い出してみるがこれといって代わり映えのしない毎日だ。

「まあ・・・平和ってやつだな。こんなザマだ、満足に掃除できねぇのがストレスって感じだ」
「ふふっ暇があれば掃除してましたもんね」

壁の中にいた頃・・・全員がリヴァイに掃除がなっていないと叱られていた。懐かしい思い出にマコトは目を細める。


「それで、お前はまたどっかフラフラ消えるのか」
「はい。」
「そうか・・・アルミン達が心配していた」
「私も、皆が心配でしたよ。もちろん、リヴァイさんの事も」

雷槍の被害に逢い奇跡的に生きていたリヴァイは満身創痍の状態での戦いだった。

心配していた・・・その言葉にリヴァイはなぜかこそばゆくなり眉を寄せると

「リヴァイさんは、私の事心配してくれてましたか?」

突然の問に顔を上げると、マコトは頬杖を着いてニコニコと笑っている。昔からだ、上司の前でも遠慮せずこうやってフランクに声を掛けてくる部下だった。初めて出会った15歳の幼い顔から21歳になり大人の女性となったマコト。

何故か意識してしまいリヴァイは目線を逸らすと

「当たり前だ。・・・大事な仲間だからな」
「ふふ。ありがとうございます」

マコトはニッコリと笑うとジャケットから写真を取り出した。その写真は送られてくる時にいつも手に持っている調査兵団の集合写真。

「私、あの時エレンと約束したんです。 エレンの代わりに色々な世界を見て回るって。」

ミカサがエレンを討ち取った時に思い出した記憶・・・その言葉を言った時エレンは嬉しそうな顔をして「頼んだ」と呟いたのだ。

「アルミンの言った通りだな。だから世界中フラフラしてんのか」
「はい!言うならば、壁外調査ですよ!」

壁外調査、懐かしいワードだ。
リヴァイはフッと笑みを浮かべて紅茶を飲むと

「壁外調査・・・か、懐かしいな」
「でしょ?体力が続く限りは、色々と回ろうと思います。」
「そうか・・・まあ、あまり無理はするなよ。俺が言うのもなんだが、健康第一だ。歳食ってから反動が来るぞ」
「はい。気をつけます!」

そう言うとマコトはじーっとリヴァイを見つめて来るので何だ?と首を傾げると

「あのーもしよろしければですが、リヴァイさんも来ませんか?」
「・・・・・・あぁ?」

コイツは何を言っているんだ、「ちょっとお茶しない?」というノリで旅に誘われてしまい、思わずリヴァイは眉を寄せると

「お前は馬鹿か。 俺はこんなナリだ、外に出れるわけがねぇ」
「リヴァイさん、人生は1度きりです。動けるうちに動いておいた方がいいんですよ!」
「オイオイオイ、お前嫌味か? 俺は・・・」

もう満足に歩けない。走れない。
ずっと死ぬまで、ここで静かに余生を過ごすのだ。

するとマコトはバンッ!机を叩いて立ち上がると

「私が貴方の手となり足になります! リヴァイさん、世界は不思議に満ち溢れていて美しいものばかりです! 見なきゃ一生後悔します! 調査兵団の皆さんが夢に描いていた壁の外の世界・・・それを見れるのはもう、私達だけなんです」

その言葉にリヴァイは目を見開いた。
まだ壁の中に居て、外に巨人が蔓延っていた頃・・・仲間たちが語っていた外の世界。エルヴィンが確かめたいと言っていた外の世界。

使命を果たしたリヴァイは正直、燃え尽きてしまっておりただ淡々と日々を過ごす。この家の中と言う殻に閉じこもり、やがて死を迎える。それでいいのだと思っていた。

マコトはそのまま車椅子に乗ったリヴァイの両肘を掴むとグイッと立ち上がらせた。

突然顔が近くなり思わずリヴァイは少し身体を仰け反らすと、子供のように輝いたマコトの目に自分の姿が映った。


「リヴァイさん、行きましょう!外の世界に!」


その目は、いつしか話した夢の話と同様希望に満ち溢れている。


「皆の代わりに色々なものを見に行って、食べましょう!」
「そんなこと言ったって、お前みたいにあんなものは乗れねぇ」


後ろ向きな発言にマコトはふふん、と笑うと


「モトラドの横に着いているのは、本来人が乗れるように作られたものです。リヴァイさんはそちらに乗ってください」

リヴァイの視線は外にあるサイドカーへと向けられる。

「昔言っていましたよね?悔いのない選択をしろって。 ものは試しで私と旅に出て、無理ならここに帰します。 ・・・リヴァイさん、どうします?」
「俺は・・・」





***





次の日


ブォン!と鳴らされたアクセル。

マコトはゴーグルを掛けると、サイドカーに乗ったリヴァイも同様にゴーグルを掛ける。その後ろには無理やり詰め込まれた荷物と無造作に松葉杖が突き刺してある状態だ。

アクセルを捻り、ゆっくりと進む車体・・・前方からお手伝いに来たファルコとガビ、オニャンコポンが驚いた顔でこちらを見るとリヴァイは大きな声で

「悪いなお前たち、世話になった!」
「えええ!リヴァイさん!?どこ行くんです!」
「壁外調査だ!」

そう言い残すと、マコトは声を出して笑いアクセルを捻り一気にスピードを出せば、あっという間に2人はマーレ国を後にした。








馬とは違う風の当たり具合にリヴァイはゴーグル越しに目を細め空を見上げた。


エルヴィンと出会い、生まれて初めての壁外調査を思い出す。どこまでも続く道と空・・・見たことも無い植物。

空を見続けているリヴァイをマコトはチラリと見て前を向いて笑うと

「どうですかリヴァイさん、久しぶりのシャバの空気!」
「人を罪人みてぇに言うなよ。・・・まあ、悪くねぇ」
「でしょ!」
「で、どこ行くんだ?」
「まずは、天空の鏡って言うのを見に行きます」

天空の鏡、なんだそれはとリヴァイは首を傾げると

「ここからだーいぶ先なんですけど、山脈に囲まれた塩湖があるんです。湖の高さは50cmほどと浅く、雨が降っても流れる事がなく大地に薄い膜を張ることで空を湖面に映し出す事から「天空の鏡」と呼ばれているみたいです!」
「・・・想像できねぇな」
「はい! なので自分の目で見て感じるんです!」

チラリととマコトを見上げればとても楽しそうだ。

いつもこのように旅をしているのか、リヴァイは小さく頷くと流れる景色を眺めた。







標高約3700mの位置にある塩湖、山道をバイクで駆け上がり道が開けるとマコトはおおっ!と声を上げた。

サイドカーのせいでマコトより座高が低いリヴァイはまだその景色は見えず、気になってしまい思わず身体を浮かせると息を呑んだ。


目の前に広がるのは湖だが鏡合わせのように空が反射している。その景色は遠くまで続いており、湖の手前でモトラドを停止させた。

「・・・こりゃ、すげぇな」
「はい・・・凄いです」

語彙力を失い、2人はただ黙ってその景色を眺める。マコトはモトラドに備え付けられたサイドバッグから小型のカメラを取り出すと露出を合わせてシャッターを切った。

カシャン、というミラーが上がる音が静かな湖に響き、マコトはよし!と帽子を外すと

「リヴァイさん、入ってみますか!」
「ああ」

もっと近くで見てみたい、リヴァイは立ち上がるとマコトが手を差し出す。その手を取りサイドカーから降りると松葉杖を取り出して長靴に履き替えると浅い湖の中に足を踏み入れた。

「うわ、ほんとに浅い」

パシャパシャと歩く度に水面が揺れ波紋が拡がっていく。

リヴァイの歩調に合わせ、お互い目の前に広がる鏡合わせの景色を眺めていたがふとマコトはリヴァイを見た。

表情からは伺えないがリヴァイの目には光が戻っており、うきうきした顔をしている。

「リヴァイさん、どうです?」
「・・・片目でしか見れねぇのが残念だ」

首を動かしながら景色を眺めるリヴァイにマコトは思わずカメラを取り出すとシャッターを切った。

突然のことにリヴァイは驚くと

「オイ、何やってんだ」
「なんか撮りたくなっちゃって」
「・・・俺なんか写したって意味ねぇだろ。」
「まーたそうやってネガティブになっちゃって」

マコトは茶化すようにそう言うと

「お前が旅を続ける理由は分かった」
「ふふ、でしょう? 世界は美しいものばかりではなく、汚いものもある。汚いものがあるから、美しいものがもっと美しく見えるんです。 そう言う汚い世界でも強く生きているから美しいんです。」
「まったく、負傷したオッサンをめちゃくちゃに連れ回して。・・・マコト」

リヴァイとマコトは目を合わせると

「ありがとうな」

あの王政での出来事ぶりの、リヴァイの笑顔。
マコトは目を見開いて釣られて笑うと

「その顔が、見たかったんです。リヴァイさん・・・今めちゃくちゃいい顔してます」
「よせ、撮るなよ」
「えー」

リヴァイも照れくさいのか片手でマコトの視界を遮ると小声で

「お前となら、写ってやってもいい・・・」

そう呟くとマコトは顔を赤くしてこくこく頷くと持っていた3脚にカメラを取り付け、リヴァイの隣に立った。

ジーッとと言うタイマーの音の中、マコトは前を向きながら

「で、リヴァイさん。私と旅・・・続けます?」

その質問に、リヴァイはレンズを見ながら僅かに微笑むと

「ハッ、仕方ねぇ・・・付いてってやるよ」

その返事を聞くと、マコトはやった!と笑いそれと同時にシャッターが降ろされた。





***




「郵便で〜す」
「ご苦労様です」


郵便の配達員から手渡された手紙をアルミンはお礼を言い、受け取った手紙の宛先を見ると目を見開き慌てて建物の中に入った。

バンッ!とドアを開くとそこにはジャン、コニー、アニ、ライナー、ピークが何事だとこちらを見る。

「どうしたんだよアルミン」
「はぁ、はぁ・・・みんな!マコトから!」
「マコト!?やっとか!」
「アイツ・・・!兵長を誘拐しやがって!!」

ジャン達は立ち上がりアルミンは手紙を開くとテーブルに広げる。

そこには毎回のように色々な景色の写真の他に、鏡合わせの湖を背景に笑顔で写るマコトとリヴァイの姿。

突然ふらっと現れたマコトは、突然ふらっとリヴァイを旅に連れ出した。

パラディ島から無事に帰ってきた頃にはリヴァイは居らず、家にはポツンと寂しそうに使っていた車椅子だけが残されていた。

自由過ぎにも程があるだろうと慌てて写真を見たが

「・・・なんか、兵長楽しそうじゃね?」

ポツリと呟いたコニーに全員が頷く。
今までないくらいリヴァイの顔がとても穏やかなのだ。

ピークはリヴァイが書いた手紙を開くとふふと笑う。

「うん。楽しんでるみたいだよ」
「はぁ・・・なら良いけどよ」
「なんか、ヒィズルにあるオンセンっていう所に行くみたい。 怪我を治す秘湯があるとか」
「なんだそりゃ」
「へぇ・・・行ってみたいなぁ」
「今度皆で行くか?」
「いいね」

そう言って写真を見ていると、アルミンはある違和感を覚えた。

一緒に写るマコトとリヴァイ・・・その2人の距離が段々と近づいているのだ。

「んん?ちょっと待って、まさか」
「?どうしたんだよアルミン」

1番最後の写真・・・そこにはひまわり畑を背にリヴァイの頬にキスをしているマコト。その写真にピークとアニ以外の全員がえええ!絶叫し、ピークは机に頬を載せてふにゃりと笑うと

「まあそうなるよね」
「そうなるもんなの・・・?」

よく分からない、とアニは写真を見て呆れたようにため息を着く。

「いやいや、意外すぎて・・・」

恋仲になった2人の笑顔を見てアルミンはふっと笑うと

「リヴァイ兵長って動けなくなったのもあるけど・・・あれから引きこもりがちだったよね。そう思うと、僕はマコトに感謝したいな」

マコトが現れなければ、リヴァイはまだあの家に居ただろう。 全員は写真を見下ろし、ピークは手紙を読みながら微笑む。




アルミン達へ

久しぶりだな。無事にマーレには帰ってきたか? 結果は恐らく新聞で分かるだろうから良いが・・・とにかく、ご苦労だった。

お前たちを見送ろうとして間に合わなかったマコトが俺の家に押し掛けて、ひょんな事からちょっとした壁外調査に出る事になった。

マコトはアルミンが言った通り、お前たちの代わりに外の世界に飛び出したみたいだ。

外の世界は色んなものが溢れていて・・・正直悪くない。お前たちも、落ち着いたら旅をしてみるといい。

写真を見て分かると思うが、マコトとはそういう仲になった。こんなオッサンが良いなんてお前の馴染みは変な趣味してやがる。

俺たちはこれから色々な場所に行くが、留まりたいと思った場所があればそこに留まろうと思う。見つからなきゃマーレに戻るつもりだ。

いきなり飛び出して悪かったな、そして世話になった。

人生は1度きりだ。お前たちも精一杯、全力で生きろ。

また手紙を出す。達者で。

リヴァイ・アッカーマン









「手紙、届いたかなぁ」

マコトはサイドカーに揺られながら空を見上げて呟いた。

「順調ならもうそろそろ届いている頃だろう。」

そう返事をしたリヴァイはモトラドに跨りアクセルを捻る。

どこまでも続く1本の道・・・マコトはふぁーと欠伸をすると

「マコト、休憩するか」
「うんっ、賛成!」

道を外し、小さな丘まで登る。モトラドを停めたリヴァイは、地面に両足を付けるとサイドカーに近づき

「よっ」
「きゃあ!」

リヴァイはマコトの膝裏に腕を回すとひょいっと持ち上げゆっくりと丘の上へと登り始めた。

あれからヒィズル国に向かい、どんな怪我にも効くと言われる秘湯・・・そこに訪れたリヴァイとマコトは湯船に浸かった結果、

「どう?脚の調子は」
「完全じゃねぇが松葉杖無しでも歩行可能だ」

痛みはもう無い・・・リヴァイの顔はホッとした顔になりマコトを横抱きにしながら歩くと木陰に下ろした。

「んーっ、風が気持ちいいね」
「ああ」

季節は暑い夏から秋に移り変わり、涼しい風が汗を乾かしていく。

「少し寝る」
「うん。いいよ」

そう言うとリヴァイは身体を動かすとマコトの膝を枕にするとゆっくりと目を閉じた。


眠りが浅く、睡眠時間は短い上に椅子に座って眠っている頃もあった。 引きこもりがちになっていた自分を外の世界に連れ出してくれたマコト。

そして今は穏やかに眠る事が出来るため身体の調子はすこぶる良くなってきている。自分の頭を優しく撫でる手つきと穏やかな風に段々と眠たくなってきた。

しかしリヴァイは重い瞼を開き、手を伸ばしてマコトの頬を撫でると

「マコト」
「はい」

マコト越しに空を見上げれば、1羽の鳥が2人の周りをくるくると飛び回っている。

リヴァイはそれを眺め、視線を戻すと

「ありがとう」

そう言うとマコトは嬉しそうに微笑んだ。







おしまい




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