79:戴冠式と一世一代
ー王都ミッドラス

壁の中の中心地とされる場所で、戴冠式が行われる。

高くそびえ立つ壇上の上にはエルヴィンやピクシス、そして総統のダリスがヒストリアに冠を載せる。

調査兵団のブロックからマコトとリヴァイ達もそのやりとりを見上げており、ヒストリアは前に立つと心臓を捧げる敬礼をし、整列していた3兵団全員が敬礼を返す。

「ヒストリア女王!」
「ヒストリア女王!万歳!」


そんな声が上がり、民衆から歓声が沸き上がった。



この人類にとって、新たな再スタートとなる今日は壁内中どこもお祭り騒ぎだ。

「リヴァイ兵長、エレン達と合流しますか?」
「ああ、そうだな。アイツらにはちょっと用がある。」
「分かりました。彼らはヒストリアに会いに行ったのでそろそろ戻ってくるかと」

リヴァイは頷くと、マコトを見て

「・・・マコト。話がある」
「ん?どうしたの?」

そう返してもリヴァイはなかなか話を始めず目線を逸らしているとエレン達がこちらに向かって歩いてきたのが見えた。

「・・・リヴァイさん?」
「マコト、俺・・・」

その瞬間

「うわああああ!」

そう叫びながらヒストリアがこちらに向かってダッシュしてきてリヴァイの腕に思いっきりパンチをした。
しかしひ弱なヒストリアのパンチなどリヴァイには効果は今ひとつのようだ。

突然の事にマコトも驚いているとヒストリアは「やっちまった」という顔をしながらも大笑いすると

「は、ははは!私は女王様だ!やり返してみろ!」

ヒストリアを女王にさせると言った夜の反撃だろう。するとリヴァイは俯いて


「ふふ」


そう笑った。
その瞬間全員は「え?」と驚き顔をひきつらせると

「お前ら・・・ありがとうな」

顔を上げると、いつもの不機嫌な顔ではなく穏やかに笑ったリヴァイの姿だった。








用事はさっきのお礼だったらしく、リヴァイは廊下を歩きながら

「マコト、散歩でもするか。なかなか来れねぇ場所だ」
「はい!」

確かにこんな中心部は次いつ来れるだろうかというくらいで、中心地からトロスト区は遥か彼方の距離で物理的にも遠い。

歩いた先には庭があり、季節の植物が沢山植えられている。

「おお・・・凄いね」
「ああ、悪くないな」

そう言うとリヴァイはマコトの手を取り指を絡ませると歩き始める。
マコトは嬉しくなり少し前を歩くリヴァイのサラサラとした髪の毛を眺めながら微笑むと庭の花を見る。

王宮の庭にある小さな湖・・・真ん中にはガゼボがあり休憩が出来るそうだ。
リヴァイは視線だけ動かして誰も居ないことを確認するとマコトの手を引いてガゼボへ向かった。

「絵の中に居るみたいだね」

屋根は蔦で絡まっており穏やかな木漏れ日が降り注ぐ。
景色を眺めながらマコトは笑うとリヴァイもガゼボの縁に腰をかけてそうだなと頷く。



風で葉の擦れる音と湖の水の音だけで、しばらくお互い黙っているとリヴァイは口を開いた。


「・・・マコト、話がある」
「はい、さっき聞きそびれちゃったもんね」


マコトはリヴァイに向き合うと、何?と首を傾げる。


リヴァイは、コートのポケットに忍ばせている箱を握ると

「・・・お前とはもう3年近くなるか」
「そうだね」
「で、もうあと少ししたらお前は帰っちまう。元の場所にな」

そう言うと、マコトも悲しそうに頷く。
リヴァイはポケットから箱を抜き出して、グッと握ると


「・・・マコト、残りのお前の時間。全部俺にくれないか?」


そう言うと、リヴァイはマコトの目の前で紅い箱を開けた。


「え・・・」


そこには、ダイヤの指輪が埋め込まれておりマコトは硬直しているとリヴァイは片膝を着いてマコトを見上げる。その顔は珍しくこわばっている。



「俺と、結婚して欲しい」



それは僅かな時間だが、リヴァイはマコトを娶りたかった。

女型の巨人で仲間を失った時も隣に居てくれた。 自分の過去を晒しても嫌な顔せずに抱きしめてくれた。 ケニーの死後、リヴァイの叔父だからと汗と泥まみれになって穴を掘り続けてくれた。

あの日、自分のもとを去ったケニーに見放されたと思っていた。あの注射器を託されてようやく認められた気がする。自らの出生が少しでも分かり、リヴァイにとって今回の一件は人生の転機ともいえるだろう。


その先の人生も、いま目の前にいる女性と共に時間が許す限り一緒に居たい。


とにかくリヴァイは、色んな想いを込めて指輪を贈りたかった。

マコトは指輪を見ながら、目から大粒の涙を零しながら口を覆うと顔を真っ赤にして

「・・・はい。リヴァイさん、ありがとう」

そう返事するとリヴァイはほっとした顔をして立ち上がり指輪を取るとマコトの左手を取ってそれを差し込んだ。


ぴったりなそれは、さわさわと揺れる木漏れ日の反射でキラキラとしている。

シンプルなものが好きかつ、格闘技をするマコトの為にとダイヤモンドが埋め込まれている。


それを眺めてマコトは目をダイヤモンドのようにキラキラさせると

「綺麗・・・」
「ああ、似合ってる」
「いつの間に・・・っていうか、なんでサイズ・・・」
「お前がヨダレ垂らして寝てる間に測った。紐で」

なるほど・・・とマコトはリヴァイを見ると

「リヴァイさんのは?」
「あるが」
「今持ってる?」
「一応・・・」

そう言って片方から青い箱を開けるとマコトはそれを手に取ってリヴァイの左手にはめこんだ。



「残りの時間、言われなくてもリヴァイさんに全部あげるつもりだから」

照れくさそうにそう言うと、リヴァイはハッと笑いそのままマコトの手を引き寄せると

「ありがとう」
「うん、こちらこそ。よろしくね」

そう言って唇を重ねた後の事だ。





「おい押すなよ!」
「ばか、今いい所!」
「ちょっとジャン、声大きいよ!」
「エレン、じっとして」
「どうだ、どうなった?」
「ダメだよみんな、バレちゃうって・・・」
「はあぁ・・・お腹すきました・・・」

遠くから聞こえるその会話を、リヴァイは眉をピクッと引き攣らせてマコトの手を取ると、そのまま一本道を出て通路に出る。

リヴァイは左右の植木に隠れていた特別作戦班とヒストリアを見ると

「ほお、お前ら・・・いい趣味じゃねぇか。人の一世一代のプロポーズ見て楽しかったか?」
「え!やっぱりプロポーズだったんですか!」

サシャがキラキラとした目で見るとヒストリアは笑顔で

「失敗しましたか?!」
「お、おい馬鹿!」

慌ててエレンが止めるがリヴァイはまた笑うと左手を出して不敵に

「もちろん、成功だ」

指輪を見せると、全員はマコトを見る。
あまりの迫力にマコトはたじろいだが左手にはまった指輪を見せると

「やったー!」
「おめでとうございます!」
「リヴァイ兵長胴上げだー!」

そう言うとジャンとコニーがリヴァイの腕を掴み全員でリヴァイに群がる。このチビを胴上げなんて嫌だが・・・エレンがやるのならと、ミカサも仕方ないと言う感じで胴上げに参加する。

「はぁ?!お前ら離せ!」
「駄目ですよ!これ訓練兵団の頃からある儀式なんで!」
「卒団式思い出すなァ!」
「そーれ!」
「キッス!キッス!」
「入籍!入籍!」

宮殿の庭でリヴァイが胴上げされ、マコトはそれを見て大笑いした。


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