75:オルブド区

オルブド区の門が開かれ、一旦話は休止する事になりオルブド区兵団本部に到着するとハンジは医療施設へと連れていかれ、マコト達は作戦会議はすぐに行うと兵士からの伝令を貰ったため、すぐに講堂へと向かった。



駐屯兵団と調査兵団の幹部勢、そして特別作戦班のメンバーが集まるとヒストリアも立体機動装置を装備して部屋に入ってきた。

全員は止めたが、女王になる代わりに自分の運命に決着をつけたいという意思をリヴァイに伝えると、いいだろうと頷いた。

リヴァイとマコトの後ろに並ぶとミカサがこっそりと小声で

「・・・女王になったら、あのチビを殴ってやればいい。」
「え・・・?」

ヒストリアはその提案に驚いたが笑顔で頷いた。
・・・そのやり取りはリヴァイとマコトには聞こえず、そのまま会議が行われた。

「ロッド・レイス巨人の現在の位置がわかりました。オルブド区の南西を進行中。やはり、夜明け頃にオルブド区に到達する見込みです」

兵士からの伝令を聞くと、オルブド区駐屯兵のカルステン隊長は頷くと

「エルヴィン団長、君の腹案を聞かせてもらおうか。どうやって住人を避難させるつもりだ?」
「避難はさせません」

その言葉に全員は「は?」と言う顔になり、カルステンは呆気に取られる。

「住人にはこのまま、オルブド区に留まってもらいます。」
「・・・正気か?」

幹部勢がざわつくなかカルステンがそう呟いた。


ハッと正気に戻ったカルステンはエルヴィンの胸ぐらを掴むと

「何を考えているエルヴィン!?住人を避難させず、街にとどめるだと!? 夜明け時にはもうあの巨人はここに到着するのだぞ!」

すると手当をされ三角巾で腕を吊ったハンジが手をあげると

「あの巨人は奇行種です。」
「それがなんだと言うんだ?!」
「目標の巨人は、より大勢の人間が密集する方へと吸い寄せられる・・・いわゆる奇行種。それも、小さな村ぐらいじゃ目もくれずにこの城壁都市に反応するほどの極端な子です。なので今から急に住民をウォール・シーナ内へ避難させれば、目標はそれに吸い寄せられ壁を破壊し突き進むでしょう。」

そして壁がまた破壊されれば、マコトのようにまたエヴァンスが子孫の生まれ変わりを使ってここに飛ばす可能性がある。

その連鎖はマコトで断ち切らなければ・・・マコトは拳を握った。

しかもこの壁の先は壁の中心でもある王都ミットラス・・・最も人が密集している場所だ。
そうなれば、人類が破滅的な被害になる。


「ここに戻る途中、エレン・イェーガーの中にある巨人を操る力を試しましたが、ロッド・レイス巨人には通じませんでした。」







数時間前の荷馬車内・・・

エレンは荷馬車から立ち上がるとロッド・レイス巨人に向かって拳を突くと

「止まれ!巨人!」

と、あの巨人を操れた時の様に再現してみた。

「おい止まれ!てめぇに言ってんだ!聞こえねぇのか馬鹿野郎! ロッド・レイス、お前だ!この・・・チビオヤジ!・・・・・・はっ!」


チビオヤジ


後ろから、リヴァイの視線を感じた。



エレンの力が出せないとなると、あの巨人はオルブド区外壁で仕留めるしかない。

そのため、住民には囮になってもらう。

「仮に目標を仕留め損なっても、住民に1人として死傷者を出さないよう尽します」

オルブド区とその周辺の住民には緊急避難訓練と称して状況によってオルブド区外へ移動させやすい体勢を整えておく。



・・・という、エルヴィンの提案を、カルステンは脂汗を出し呻きながら悩んだが

「・・・やるしかないようだな」
「目標はかつてないほど巨大な体ですが、それゆえにのろまで的がでかい。壁場固定砲は大変有効なはずですがもし、それでも倒せない場合は・・・調査兵団の最大の兵力を駆使するしかありません。」



駐屯兵団はその作戦を呑むと、仮にそのロッド・レイス巨人を固定砲で仕留めれなかった場合の作戦を立てた。

巨人の弱点はうなじ・・・しかし、あの大きさと熱量では到達したと同時に燃え尽きてしまう。


何かいい方法は…全員が下を向くと、マコトは

「…あ」

と声を漏らした。











自衛隊の訓練生時代・・・

訓練で小銃を両手に持ち草原を走り回り、掛け声と同時に伏せて、銃撃から身を守る訓練だ。

穴があればその中入るのも防御のうち。

まだひよっこだったマコトは掛け声が掛かると地面に伏せた。前からスライディングする形になり、強く打ち付け、身体が悲鳴をあげる。

・・・しかし、伏せていた背中を、教官に思い切り踏みつけられた。

「おいマカべ!もっと地面に這いつくばれ!死にたいのか!」
「ぐ・・・はい!」
「頭も、地面に擦りつけろ!」

そう言ってヘルメットを掴まれると地面に顔を叩きつけられ、グリグリと押し当てられた。

口の中に砂がはいり、吐き出したくなる。

「進めー!」
「うおおお!」

マコトは頭を解放され立ち上がるとそのまま全員で叫びながら走り出す。

…その顔は押し付けられたことにより傷だらけになっており額には血が滲んでいた。







「そうだ・・・!」
「マコト、何か案が?」

リヴァイがマコトを見下ろすと全員がマコトを見ていた。

マコトは冷や汗が出て、いや・・・と目線を地図に落とす。
するとエルヴィンは穏やかな顔で

「いいぞマコト、どうした?」


そう聞くと、マコトはエルヴィンを見ると

「あの巨人は・・・地面を擦るように移動しています。なので、怪我をしているのでは?と・・・」
「怪我・・・?」

そうか!とハンジとアルミンは声を出すと顔を見合わせる。きっと考えてるのは同じ事だ。

「巨人の顔が削れてるから、口から攻撃をすれば・・・」
「口に向かって砲撃をするのか?」

リヴァイはそう聞くとハンジは

「いやそれだけじゃきっと効かない・・・大量の火薬があれば・・・木を燃やすほどの熱を持っているなら火薬が触れれば爆発する。そうすればうなじごと吹き飛ばせるんだ!」
「カルステン隊長・・・火薬の準備は出来そうですか?」
「あ、ああ・・・」


エルヴィンは頷くと


「では、その作戦で行こう。全員、すぐに壁上へ向かうぞ!」

了解!

その声と同時に全員は持ち場へ向かった。





自分の意見が通ってしまい、マコトは本当に大丈夫なのだろうかと不安になっているとエルヴィンがマコトの肩をぽん、と叩いた。

「マコト、いい提案をありがとう」
「い、いえ・・・上手くいくといいんですが」
「よくそんな発想をしたな」
「ホントだよマコト、ありがとう!」

リヴァイも感心し、ハンジも喜ぶとマコトは頬をく。

「自衛官の訓練生だった頃に、教官に地面に顔を擦り付けられて怪我をしたのを思い出して・・・もしかしてと思ったんです。」
「・・・あ゛?」

エルヴィンのハンジはそのどんな訓練してたんだよと言う視線を受け取りリヴァイはマコトの肌に怪我をさせたその教官に向かって怒りを飛ばす。

「その教官、同じ目にあわせてやりてぇ・・・」

ドスの効いた声でそう呟くのだった。









会議後・・・
講堂を出て、マコトはリヴァイの斜め後ろを歩いていると

「マコト」
「はい?・・・はいぃ!?」

リヴァイは空いている会議室を開けると素早く入り込みマコトの腕を掴むと中に引っ張り込んだ。
中はロウソクがなく夜明け前のため薄暗い。

そのままマコトは引き寄せられるとリヴァイに抱きしめられた。

久しぶりのリヴァイの匂い。
久しぶりのマコトの爽やかなグリーンティーの匂い。

「・・・少しだけこのままでいいか」

リヴァイはマコトの肩口に額を埋め、マコトもリヴァイの背中に腕を回すと強く抱きしめ返した。

しかし、しばらくするとリヴァイは

「・・・このままだとお前を襲っちまいそうだ。そろそろ行くぞ」
「へ?は、はい!」

身体を離すとリヴァイはドアノブを掴んで少し開けて誰も居ないを確認すると2人は素早く出て廊下を歩く。

しかしリヴァイは「あ」と何かを思い出して突然立ち止まるとマコトはそのままリヴァイにぶつかった。

「いてっ! 兵長?」
「・・・おいマコト、落し物だ」

リヴァイは胸ポケットから出したのは、カーネリアンのネックレスだった。


あの時、目印に落としたのだがやはりリヴァイは気づいてくれた。

「それ・・・!」
「俺が必ず拾うと思って落としただろ。ほら、付けてやる」

留め具を外すとリヴァイは前から腕を回してネックレスを付ける。
抱きしめられるような体勢になりマコトは顔が近くなったリヴァイとは反対方向を見ると

「何照れてんだ」
「て、照れてないです!」
「ほお」

留め具を留めると、リヴァイはマコトの顔を両手で挟みこちらを向かせるとそのまま唇を合わせた。

「んん?!」

廊下で誰かにでも見られたら・・・マコトは焦ってリヴァイの腰を叩くと意外にもあっさりと唇が離れる。

「体力回復するのを忘れてただけだ。・・・帰ったら覚えてろよ?」

耳元でそう呟くと指で胸元のネックレスの石を弾き、ニヤリと笑うとそのまま背中を向けた。

マコトは顔を真っ赤にして硬直していたが、ネックレスをタートルネックの中に押し込むと駆け足てリヴァイを追った。

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