69:対人制圧部隊

頭を冷やそう・・・マコトはそう思い厩舎から出た道の開けた場所で座り込んで水を飲んでいた。

・・・するとどこからか銃声が響いた。
気のせいだろうか?水筒から口を離してマコトは耳を澄ませる。

するとサシャがバタバタと走りながらマコトを見つけると

「マコトさんっ!銃声が!」
「うん!聞こえた!」

マコトは3人を見ると

「・・・やるの?」

そういうと3人は揃えてはい!と叫ぶように返事をした。

「いい返事。 アルミン、リヴァイ兵長の指示通り次の作戦に動いて。」
「え、マコトさんは・・・?」
「この調子だと、リヴァイ兵長が危ない。もしもの時は・・・ミカサ、皆を頼んだよ」

ミカサは過去にエレンと強盗を殺した経緯や、エレンのためなら恐らく手段を選ばないだろう。それは、この間のライナーとベルトルトの件で十分把握した。

「マコトさん!・・・気をけて」

心配そうなミカサを見てマコトは笑うと親指を立てて立体機動のアンカーを出した。


マコトはアンカーを出して急いでリヴァイを探した。他にも二ファやアーベル、ケイジも居たはずだ。 憲兵にバレないように、中腰で屋根を伝って走っていると、屋根で倒れている人間を見つけた。

顔を確認するとマコトは口を抑えた。
それは頭を撃たれ息絶え、変わり果てた二ファの姿だったからだ。

「二ファさん?!そんな・・・!」

そして見渡すと近くにも撃たれた跡があり、布が落ちていた。
広げてみるとリヴァイが羽織っていたマントと似ており複数の穴が開けられている。

「散弾銃・・・?!リヴァイさん・・・は」

よく見ると割れた屋根は下を伝ってそのまま・・・
ざわざわとする地上を見ると誰かが倒れているらしい。よく見ると1人倒れていたのはアーベルらしく頭を撃ち抜かれた跡があった。

「この高さと、地上で銃・・・?」

しかも散弾銃だ、当たればひとたまりもないだろう。嫌な予感がしたマコトは銃痕の残る建物を伝ってリヴァイを追いかけた。








マコトは高い所から飛び、弾跡を追いかけて慌てて止まった。
どうやら、酒場らしく建物を全員が包囲しており…これじゃ肉眼では確認しづらい、と鞄に入れておいた双眼鏡を構えて相手の装備を確認する。

兵士の格好は両手に銃を持っており、背中に装置が着いている。

「(立体機動・・・?私達のとは違うけど)」

双眼鏡を仕舞い建物を影に隠れて様子を伺うと、ドンッ!という音と同時に男が店の中から吹き飛ばされて出てきた。

そして窓が割れて兵士が銃を撃つと囮で使った椅子だったらしく次にリヴァイが出てきた。

「リヴァイさん・・・!」

無事ではない状況だがリヴァイは生きている。マコトはホッとするのも束の間、音を消して近づくと背中のボディバッグからベルトから9mm拳銃を用意する。

50m以内に近づければ、有効射程距離だ。
リヴァイはそのまま兵士を盾にして銃撃を防ぐとそのままブレードを抜いて2人の兵士を切り裂いた。


数日前・・・夜に聞かれたリヴァイの言葉、先程ジャン達に言った言葉が脳裏をよぎる。



大事な人達を守るためなら人だって殺せる。



仲間を、リヴァイを守るためマコトは拳銃を震えながら構える。
たとえこの手を汚しても大丈夫だ、そう言い聞かせる。

「(やるしかない)」

背中を向けている男にサイトを合わせると同時に、男はリヴァイを狙って武器を構える。

「させるか!」

マコトはそのまま引き金を引いた。






タンッ!


突然の銃声に全員が振り向いた。
兵士が頭を撃ち抜かれて、そのまま屋根から地面へと叩きつけられる。

「何だ?!」
「一体、何が・・・」

もう1人の兵士の足元からアンカーが打ち込まれると同時に現れたのはマコトで、ワイヤーを巻き取り高く飛び上がるとそのまま至近距離で額に銃口を向け引き金を引く。

「くっ、まだ居たのか!」

マコトは着地して直ぐに銃を口に咥えると男の装備しているベルトに手を掛けて引っ張りあげると銃撃を盾にして、女性兵に投げつける。


もう1人の男も、マコトはブレード抜くとそのまま投げつけるモーションに入る。振り下ろした拍子にブレードのロックを解除すると、ブレードが回りながら飛び男の胸を貫通した。


絶命した男と目が合い、一瞬マコトは怯んだ。

「マコト!」

リヴァイの声にマコトは我に返る。

「リヴァイさん!」

アンカーを出してリヴァイの所へ行く途中、最初に吹き飛ばされた男を見ると、帽子から半分でた顔と目が合った。

こちらを見て驚いているようだが何故反撃しないのか・・・マコトは疑問に思ったがそのまま屋根に着地してふらつくマコトをリヴァイは抱きとめてそのまま肩を抱いて走りながら

「ガキ共は?」
「次のポイントへ行かせました!」
「合流するぞ、走れるか?」
「はい!」

リヴァイはマコトの手を取って屋根から飛び降りた。







「隊長。やっと死んだんですか?」

部下のカーフェンがケニーを見下ろしながら聞くと

「馬鹿野郎、死人がどうやって返事するってんだよ。いててて・・・やられたぜ。そういや酒場なんかは、護身目的に銃の所持が認められてたな。どチビなりに成長してたらしい。しかも、見たかさっきの女?アイツと抱き合ってたじゃねぇか。・・・チッ、女なんて作りやがって・・・」
「よかったですね」
「あぁ? いいわけねぇだろ・・・ったく、これじゃぁ俺の夢が遠のいちまうだろうが。」

カーフェンはそれを無視してリヴァイ達を追いかけた。





「無茶しやがって」
「は、はは・・・リヴァイさんが頑張ってるんだもん、私も、やらなきゃって」

立体機動で移動しながらマコトのブレードを持つ手はカタカタと震えている。
それは恐怖か、人を殺めてしまった後のせいか・・・リヴァイは眉を寄せると後ろから立体機動の音が聞こえたので振り向いた。

「っていうか、あれが中央憲兵ですか?!」
「ああ。 ・・・マコト、とにかくお前は逃げる事だけ考えろ。俺が殺る。」

リヴァイが小さくサインして左に曲がれと伝えるとマコトはそのまま左へ曲がる。
それに続いてリヴァイも曲がるとそのまま憲兵にアンカーを飛ばして差し込むと引き寄せてブレードで切り裂いた。

「兵士長、マコトさん!」

アルミンが乗った荷馬車と合流できた。ミカサ達はその後ろを守るように走馬を走らせている。

そのままリヴァイとマコトは荷台に着地すると

「もう霊柩馬車は追うな、俺達の行動は筒抜けだ。一旦エレンとヒストリアを諦める。奴は二人をエサに残存する調査兵を全員その場で殺すのが目的だ。きっとこの先も敵が待ち伏せている。あとの3人は殺られた。 」

その言葉に全員の顔は強ばる。が、ミカサは歯を食いしばる。

「アルミン、左側から最短で平地を目指せ。サシャとコニーは馬を牽引しろ」
「「「はい!」」」
「ジャン、は荷台から銃で応戦しろ。」
「了解!」
「・・・了解!」
「ミカサとマコトは俺と立体機動で逃走の支援だ」
「はい!」
「・・・エレンとヒストリアはどうするつもりですか?」
「他の手を探すしかねぇだろ。それも俺達がこの場を生き延びることが出来たらの話だ。敵を殺せる時は殺せ。わかったか?」

その言葉にミカサとマコトのみが了解!と返事をした。

「来ました!右前方より複数!」

次々とくる中央憲兵のをリヴァイは避けてはブレードで切る。
マコトも切り替えよう、と深呼吸をしてアンカーを飛ばしブレードを抜くと憲兵を斬りつけた。
斬った感触が伝わり、吐き気がするがいまは休んでいる暇はない。すぐに体制を直し、アルミン達を見守る。

「くそっ、また人が死んだ!なんでこんな事に・・・」

すると女性憲兵が荷馬車に回り込んでしまいアルミンに銃口を向けた瞬間ミカサが蹴りを食らわせる。

「動くな!」

そのままジャンは銃口を向け威嚇するが少しの間で銃が飛ばされてしまった。

女性憲兵が立ち上がり銃口をジャンの額に照準を向ける。

「ジャン!」
「間に合わない!」

マコトとミカサが向かうが、それより先に銃声が鳴った。

「あ・・・れ?」

撃たれたのはジャンではなく、女性憲兵。
そのまま倒れ、馬車から転がり落ちていく。

手綱を握っていたアルミンが撃ったらしく、焦点の合わない顔でアルミンは震え、ジャンも放心状態だ。


「アルミン!」

マコトは荷台に滑り込むように着地すると、荷台の縁を掴みながらアルミンの隣に座り手綱を取り上げ、平地を目指した。






ストヘス区外れの崩れかけた厩舎に逃げ込んだ一行は、一旦体制を立て直そうと身を潜めた。

「うっ・・・おぇっ・・・」

先程の出来事を思い出したのだろう。アルミンは生い茂った草に向かって嘔吐しておりミカサは介抱している。
正直マコトも胃がぐるぐるとしており、気分は良くない。

あの時の中央憲兵により銃で掠めたらしくリヴァイの肩からは血が出ていた。
手当てをしなければ、とマコトはリヴァイの傷口を消毒し縫合している。

「マコト、怪我は?」
「なんとか大丈夫です」
「そうか・・・」

それからはお互い無言で、全員沈黙の中アルミンが嘔吐する声だけが聞こえる。
額にも切り傷や頬にも擦り傷があったのでマコトは手当をしたあとリヴァイの頬に優しく触れると

「リヴァイさんが無事でよかった」
「ああ。俺もお前が無事でよかった」

リヴァイはマコトの顔色が悪いのは分かっていた。

「マコト、少し外の空気でも吸ってこい。」
「はい・・・」

マコトは立ち上がると頭を下げて厩舎を後にした。



小屋の裏・・・影にあった木のコンテナに横たわって小さく丸くなっているとしばらくしてリヴァイがやってきた。

「マコト、ここに居たか。大丈夫か?」
「リヴァイさん・・・」
「顔色が悪い。お前も、我慢せずに吐きたきゃ吐け。余計に辛いぞ」
「うん・・・」

起き上がり渡された水を口に含める。

「お前が来た時は驚いたが、助かった。おかげで俺も無事だ」

隣に座りマコトの肩を抱き寄せると頭を撫でた。

「リヴァイさんが殺されると思ったら、居てもたっても居られなくて・・・」
「俺も逆の立場だったら同じ事をしていた。」
「あの帽子の人がリーダー? 私を見たけど反撃して来なかった・・・何でだろう・・・」
「ケニーか・・・」

リヴァイがそう呟くとマコトはリヴァイを見つめる。

「リヴァイさん、知り合い・・・?」
「・・・昔、切り裂きケニーと言う憲兵の喉を切り裂く連続殺人鬼が居た。それがアイツだ」
「憲兵殺しが、憲兵やってるなんて・・・」
「ああ。それは俺も同感だ。・・・気分が良くなるか分からんが、俺の昔話でもするか」

昔話、リヴァイは王都の地下都市出身という以外マコトは聞いてもないし、あまり深く聞こうとは思わなかった。


「あれは俺がまだ、4歳だったか・・・そんくらいだな。母親は地下都市の娼館で働いていたが、客に病気を貰ってな・・・金もないし食わせるものやもちろん薬だってなかった。 俺もまだクソガキで働けねぇから栄養失調で死ぬ寸前・・・気づいたら母親はミイラみたいに痩せ細って死んでた」

リヴァイの母親・・・マコトは黙って話を聞く。

「その後、あのケニーってやつが家にやってきて俺を育てた。飯や、あの地下都市で生き残る処世術を叩き込んである日突然・・・姿を消した。会うのは・・・27年振りだな。 マコト、俺はな。もうガキの頃から生き残るために人も半殺しにしたし、殺したりもした。 暗殺の依頼もやった。 ・・・俺は、そういう男だ」

そう言い切るとリヴァイは眉を寄せてマコトを見つめる。その目は少し涙の膜が張っており、マコトが映り込みそうなほどだ。

「・・・引いたか?」

その言葉にマコトは何も言わずにリヴァイを抱きしめ、後頭部を撫でる。
思いもしない行動にリヴァイは目を見開くと

「マコト?」
「・・・私とは正反対の世界に生きてたんだね。なんか、ぬくぬく育った自分が情けないや」
「何でだよ」
「私はリヴァイさんの事、大好きだし尊敬してる。それはずっと変わらないよ。・・・人に手を掛けたのも仲間想いの貴方だもの、真っ先に自分からやったんでしょう?」

リヴァイ班の討伐補佐数を見た時に思った。リヴァイは部下をサポートに回し危険な仕事は自ら率先して出ているのだと。

「あ、それにリヴァイさんの年齢が特定できた」
「・・・言ってなかったか?」
「うん、初耳!3個上だったんだねぇ」

呑気に笑うマコトの背中にゆっくりと腕を回すとリヴァイは肩に顔を埋めると

「マコト・・・ありがとな」
「ん? どういたしまして?」
「俺がついてる」
「・・・うん。もう、大丈・・・・・・ぶじゃない」
「は?」

身体を離すとマコトは顔面蒼白でリヴァイを見ると

「やべぇ、吐きそう・・・」
「今かよ?!ほら、吐け!口開けろ、指突っ込むぞ」
「や、やめ・・・それだけは、んぐっ」

拒否権はなくマコトの小さな口にリヴァイの指が入るとグッと奥に入る。涙目になったマコトは離してくれとリヴァイの腕を叩くが

「お前のゲロまで愛してやるから、ほら吐け」
「ふ、ううぅ・・・!」

マコトは近くにあった樽に向かってキラキラと自主規制物を出したのだった。







ある程度出て、マコトは受け取った水を口に入れてうがいをする。

「うう・・・リヴァイさんの前でゲロる日が来るなんて・・・」
「別にいいだろ。気分は?」
「悪くないです」
「そりゃ良かった」

リヴァイは手を洗いハンカチで手を拭くとぽんぽんと膝を叩いた。

「ほら、少し横になれ」
「は、はい・・・」

マコトはリヴァイの膝を借りて枕にする。が、

「筋肉で固い・・・」
「あ?文句言うなよ」
「でも嬉しい。ありがとう、リヴァイさん」
「ん。」

リヴァイは新しく取り替えた外套を外して横になったマコトに掛けて、髪を解いてやると黒い髪がさらさらとリヴァイの手から流れ落ちる。

壊れ物を扱うかのようにリヴァイはマコトの頭を優しく撫でると、マコトは直ぐに寝息を立てた。

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