68:活動停止命令

「大変です!」

また二ファが汗だくになって小屋に転がり込んできた。

「どうした」
「二ファさん、お水!」
「あ、ありがとう・・・はぁ・・・」

一気に水を飲み干すとリヴァイを見て

「リーブス商会の会長が・・・殺害されました」

その言葉に全員が驚いて立ち上がる。
リヴァイは眉を寄せるだけで組んでいた腕をギュッと握るだけだった。

「リーブス会長と、その部下含めた3名が山で殺害されているのを発見し・・・全員鋭利な刃物で首を掻っ切られていたそうです。」
「首を・・・?」
「殺したのはエレンを奪還するために動いた調査兵団なのではないかと疑いをかけられ、エルヴィン団長は憲兵に連行されました。 我々調査兵団は活動凍結中を、活動停止に切り替えられ団員全員に出頭要請が出ました。」

今の調査兵団の管理下は憲兵団に委ねられてしまった。







2日後、ストヘス区・・・
リヴァイは先日、巨人によって半壊状態にされたストヘス区が合流地点だと踏んで一行はストヘス区にやって来ていた。
案の定、宿屋に来るはずもない葬儀屋の霊柩馬車が停められているのを見たケイジがリヴァイに報告をすると、張り込むためにマコトにアルミン達を預け立体機動で追いかけに行った。

街の様子を見てこよう、とマコトは髪の毛を下ろし、伊達眼鏡をかけて変装してジャンと街の様子を見ていた。

すると憲兵の数人が紙の束を持ち民衆に何かを配っていた。

「調査兵団が民間人を殺した!一部の団員は出頭命令に背き未だ逃亡中!それらしき人物を見かけたら至急憲兵に情報提供を願う!」


マコトとジャンは顔を見合わせると通りすがりに憲兵からそのビラを貰う。

どうやらリヴァイがそのリーブス会長の殺害をした容疑で、現在指名手配されているようだ。

「な、なにこれ・・・これ、リヴァイさんっ・・・?!ふざけんじゃないわよもっと男前に描きなさいよ・・・!見てこれ、悪意があるよね?ね?」
「マコトさん、落ち着いてください。静かに、静かに。バレますから。」
「ごめん、取り乱した・・・」

今にもビラを破りそうな勢いのマコトをジャンは窘める。すると民衆の会話から

「俺が言った通りだろ?奴らはここで巨人同士を戦わせてめちゃくちゃにした連中だ!エレンって怪物を使って、人類を滅ぼすつもりなんだ!」
「やーねぇ・・・危なっかしくて外も出歩けなじゃない」
「しかしリヴァイ兵士長くらいしか顔が割れてねぇからな・・・その辺にいても気づかねぇよ」

街の外れの厩舎に行くとミカサ、アルミン、サシャ、コニーが馬を見ていた。

アルミンにそのビラを見せると

「・・・これで調査兵団は解散状態だな・・・」
「あぁ・・・もうダメな気がするぜ・・・何もかもてっきり巨人に食われる最期を覚悟してたんだが、まさか人から恨まれて晒し首とはな」
「そんな、まだそうとは決まってないよ。団長がこのまま大人しく濡れ衣を着せられて兵団を畳むはずないよ!そゃら会長が殺されて一時はエレンとヒストリアを見失って・・・もうダメかと思ったけど・・・レイス卿さえ押さえればこの壁が作られた経緯や技術を残した記述がどこかにある!エレンの巨人を「硬化」させる方法も、きっとどこかにある!」

しかし、ジャンはあまり乗り気ではないらしく

「俺は・・・やっぱ御免だぞ、人殺しなんて・・・もしあの兵長に殺せって命令されても出来るとは思えねぇ」
「・・・俺もだ。従わねぇやつは暴力で従わせればいいと思ってんだ、リヴァイ兵長は。ヒストリアにやったみてぇに!」
「それも商会にはあんなにへりくだったのにですよ!抜け殻みたいになったヒストリアにはあんな脅し方して・・・きっと女王になった後も手駒として扱いやすいようにしたいんですよ!」
「・・・とにかく、俺は・・・こんな暴力組織に入ったつもりはねぇ・・・あん時俺は、人類を救うためにこの身を捧げたんだ・・・!」


そう言い切ると、3人はハッとマコトを見た。
上司であり、恋人であるリヴァイ・・・好き勝手言われていい気分ではないだろう。

案の定、マコトの顔は今まで見たことも無いほど真顔になっており、ジャンは怯んだが

「マコトさん、俺は本音を言ったつもりです。悪いっすけど・・・」
「じゃあ、3人とも・・・憲兵に出頭しておいで。私は、1人になってもリヴァイさんについていく。」

は?と驚くとマコトは

「ここで濡れ衣を着せられて、もし調査兵団が解散になったら、ジャンの言う人類に身を捧げる≠チていうのはパァになるけど・・・いいの?」
「くっ・・・」
「マルコに、あんた・・・誓ったんじゃないの?・・・私はね、こっちの時代に来て右も左も分からなくて、それでも助けてくれた優しい人達が死んでいくのを見て頭がおかしくなりそうだった。 そんな私のそばに居てくれたのはリヴァイさんだったし、私は・・・あんた達を失いたくない。大事な人達を守るためなら人だって殺せる。私には、その技術がある。」

マコトは目を閉じて普段の顔つきになると3人を見て失笑すると

「・・・無理に着いてこいだなんて言わない。今なら間に合うよ。」

黙ってしまった3人にアルミンはミカサは?と聞くと

「あのチビの異常性には最初から気づいてたけど、この現状を乗り越えるためには・・・リヴァイ兵士長に従うのが最善だと思ってる。・・・できれば皆も・・・・・・腹を決めて欲しい。」

そう言うとサシャはあの・・・と手をあげると

「マコトさん、こっちの時代とは・・・?」
「・・・あ。サシャとコニーには話してなかったか。アルミン、説明よろしく。私は・・・頭冷やしてくるよ」
「え?! は、はい!」

この空気だと、自分は席を外した方がいいだろう。そう思ったマコトは水筒を持ってその場を後にした。

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