64:3つの条件

やってきたのは、壁の上・・・トロスト区主前門だった。数ヶ月前、エレンが巨人の力を使って穴を塞いだ場所だ。

ここなら、邪魔をされずにゆっくりと話せれる。
リヴァイとリーブス商会の会長は何かを話しているらしく、マコト達は念の為周囲の警戒を怠らない。

トロスト区の街を見ながら会長は目を細めると

「おっかねぇが、ここは稼げるいい街だった」
「俺達はこう呼んでいる。人類が初めて巨人に勝利した場所。そして、人類の無力さを証明する場所。」

今その穴は再び開けられないようにと強固に骨組みが設置されており、常に警戒態勢をとっている。

「巨人に空けられた穴を巨人の力で塞いだ。まぁもちろん、巨人の力だけで塞いだわけじゃない。数多くの兵士が命を投げ出した。その他にも、幾重にも重なる奇跡の連続であんたの街は今ここに辛うじてある。・・・その奇跡がエレンだ。あんたが連れ去ろうとしたもんはそれだ」

会長は煙草に火をつけて吸うと肺に入れ煙を吐き出すとフッと笑い

「どうやら俺は、ここに説教されに来たらしい。勘弁してくれねぇか旦那?老いぼれの身体には少し応える。」
「・・・そうだな、やめておこう。老人が怒られてんのは見てて辛い。中央憲兵との交渉内容とあんたらの目的が知りたい」
「交渉?そんなものは無い。命令され従った。俺らの目的は『全てを失わないために命令に従う』だ。しかし、夜襲も拉致も失敗した。」

このままではリーブス商会は全ての財産、何からの罪状で王政に没収され従業員とその家族は路頭に迷う。
そして会長と部下は口封じのため、何からの事故に見せかけて殺害される。

「・・・ひとついい事を教えてやるよ、旦那。ヤツらは頭が悪い。 ははは!普段巨人相手に殺し合いしてるような調査兵団に俺らチンピラが何とかできるわけねぇってんだ馬鹿だねヤツらは!そもそも俺達はあの姉ちゃん2人にやられちまったんだぜ、話になんねぇだろっての!」

そう言って笑いながらマコトとミカサを見ると

「どうだい旦那?役に立っただろ?」
「あぁ・・・ヤツらの頭は足りないらしい。そんな馬鹿共に大人しく殺されていいのか?会長。」
「馬鹿だが人類の最高権力者共だ。 お前らだって服すら着れねぇバカに食い殺されてんだろが」
「・・・なるほど、確かにそうだ。だが俺らは巨人を殺すことが出来る。巨人と同じだ。どうせ死ぬなら試してみればいい。」
「だめだ」
「なぜ?」
「失敗して死ぬ部下が増えるだけだ」

リヴァイはそれを聞くと、目を細めると

「気にするな、どの道同じだ」
「何だと?」
「トロスト区、アンタの街は破綻寸前・・・一時は巨人に占領されて半ば壊滅状態だがそれにしちゃまだ人が居る。それは、壁の扉を埋め固める作業兵と巨人襲撃に備える兵士が居るからだ。そこにリーブス商会が人と仕事を結びつけてるのも大きい。」

このままではリーブス商会が壊滅し、街はトドメを刺されて完全に機能しなくなる。
その場合、路頭に迷うのは従業員だけではなくなり兵士を除く街の住民全てが対象となる。

これから厳しい冬がやってくる。その冬を何人が越せるのか・・・まだ中央憲兵に殺される方がマシかもしれない。

「あぁそうなるだろうな。お前らがエレンとクリスタを寄越さねぇせいで、人がごまんと死ぬ。それで?俺の部下とこの街の住民を餓死させねぇためなら、人類の奇跡をくれるってのか?!」
「その通りだ。 エレンとクリスタをお前らにやる」
「は?」

そのリヴァイの発言に全員が驚いた。

マコトも驚いたが、リヴァイの事だ・・・取引をするつもりだろうと思い、怒り狂うミカサを止める。

「条件を3つ受け入れろ。 1つ、リーブス商会は今後調査兵団の傘下に入り中央憲兵や王政・法に背くこととする。」
「な?!戦争を始めようって言ってんのか?!」
「2つ、リーブス商会は調査兵団を心の底から信用する事」
「ハッ、信用だと?そりゃ俺ら商人の世界じゃ冗談を言う時にしか使わねぇ言葉だぞ?」
「俺は、今あんたと・・・ディモ・リーブスと話をしている。あんたの生き方を聞いてるんだ。あんたはどんな奴だ?あんたの部下と街の住民を死なせて敗北するか、人類最高の権力相手に戦うか。どうせ正解なんか分かりゃしねぇ・・・あんたの好きな方を選べ。」

そう言うと、ディモは笑うと

「は・・・素人が。条件を全て聞かずに契約するバカが居る?」
「おっと、失礼した。3つ目だ、今後リーブス商会が入手した珍しい食材・嗜好品等は優先的に調査兵団に回せ。特に紅茶とかな」

そう言いると、マコトはプッと吹き出して笑った。

「ふふ、すみません兵長。3つ目は最高の条件ですね」
「悪くないだろ?」
「素晴らしい!素晴らしい条件じゃないですか!会長!」
「おいサシャ!」

暴れるサシャをコニーが窘めるとディモはフッと笑い


「あんた、商人よりも欲が深いらしい。気に入ったよ」
「あんたは頭がいい」
「「交渉成立だ」」

そう言うと、リヴァイとディモは握手を交わした。

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