63:替え玉作戦

次の日・・・
馬車を持ってきたケイジ達と合流し、ウィッグなどの変装道具を集めてきたマコトはアルミンを着替えさせた。 エレンとヒストリアを乗せた馬車はそのまま別の場所で待機させられる。

「お待たせしました」

スカートをはいたアルミンが、かなり恥ずかしそうに出てきて全員が笑いを堪える。
そしてサシャがアルミンに長い金髪のウィッグを装備させると

「アルミン、可愛いよ!」

マコトは拳を握り、全員が頷く。
これはヒストリアだ。・・・身長は差があるがアルミンの身長は女子にもいる。

「よし、トロスト区へ行くぞ。ケイジ、2人を頼んだ。二ファとアーベルは上から馬車の監視だ。合図があるまで馬車でトロスト区周辺をうろついててくれ」
「「「了解!」」」

馬車はエレンとヒストリアを乗せて、リヴァイ達はトロスト区へ向かった。







トロスト区、リヴァイを先頭に街を歩く。

「あまり団子になって歩くなよ。逆に目立つ。エレンもヒストリアも、普通に歩け」

マコトはリヴァイの斜め後ろを歩き街を眺めるが、普段より装飾が派手な気がする。

「なんで王家の旗がこんなにあるんだ?」
「あっ、今日って王政設立記念日じゃ・・・年に1回の、特別配給がある日ですよ」
「ああ


すると、壇上に憲兵が居て傍らには大きな箱がある。

「今から特別配給を行う!トロスト区の窮状をお聞きになったフリッツ王が、王家の備蓄を解放してくださった!」
「十分用意はある!慌てずに並べ!」

フリッツ王万歳!と声が上がる中サシャはひえーと呟くと

「さすが王様、気前がいいですね」
「ある所にはあるって事だ。食い物に釣られると、人間は弱い。」

行くぞ、とリヴァイはそう言うと欲しそうにしているサシャをミカサが引っ張って先へ進んだ。


しばらく歩いていると、 住民がリヴァイを見て驚くと

「オイ・・・あんた」
「リヴァイじゃねぇか!」
「あ?」

突然声を掛けられてリヴァイは眉を寄せると、その声にわらわらと人が寄ってくる。


マコトは眉を寄せてリヴァイに近づくと

「お知り合いですか?」
「いや、知らん・・・」

住民の声を聞いて他の住民達もリヴァイを見るとこちらに近づいてきた。

「本当だ!」
「俺も見た事あるぞ!」
「人類最強の兵士リヴァイだ!」

するとあっという間に囲まれてしまい、リヴァイはさりげなくマコトを背中に隠した。

「オイオイ小せぇな・・・」
「馬に乗ってる所しか見た事無かったが・・・こりゃあ」
「・・・邪魔だが」
「まぁ聞いてください兵士長!惨めな俺たちの話を」
「お前ら兵士が大袈裟に騒いだ避難作戦のせいで職に溢れちまったんだよ」

何故か住民の愚痴を聞く羽目になってしまい、マコト達は早く進ませて欲しいとイライラし始める。

「・・・なのに税は高ぇままで俺達にどうしろって言うんでしょうか?」
「どうしてこうなった?なぜ巨人に何回も攻め込まれてるんです?俺にはわかる。・・・あんたら調査兵団の働きが足りねぇからだよ。」

マコトも良く自衛官に対しての愚痴を聞いた事がある。・・・と言っても、ネットでの書き込みだがよく税金泥棒や、人殺しの訓練などと中傷されてきた。

・・・何より、今まで死んで行った仲間を侮辱されたことに対してマコトは憤りを感じたが、それを察知したリヴァイは目で「抑えろ」と言われ唇を噛む。

「なぁ、こんな街中をぶらぶら歩いてお買い物か?」
「女連れて・・・いいご身分だな」

そう言うと、男はマコトに顔を近づけて品定めをしてきたので拳を握ってそれに耐える。

「あんたらに少しでも良心がってもんがあるのなら・・・金を置いていけよ・・・調査兵団が余分に取りすぎちまった分をよ」

リヴァイは視線を動かすと遠くでやせ細った女性が赤ん坊を抱えている姿が見え、目を細めた。

リヴァイは顔を上げると全員を見て

「気をつけろ!」

へ?と全員はリヴァイを見つめると住民は

「は?何を気をつけるだって?人類最強の兵士がよォ!」

その瞬間リヴァイは胸ぐらを捕まれ、リヴァイは目の前の住民を蹴り飛ばすと

「馬車が突っ込んで来る!」

マコトはリヴァイを後ろから掴んでいた男の腕を掴みリヴァイから引き剥がすと地面に投げ、リヴァイはマコトの腕を掴むと引き寄せて同時にしゃがみ込んだ。

猛スピードでこちらに駆けてくる荷馬車に全員は体勢を低くして避けたが、エレンとヒストリアが捕まってしまった。

「あ、アルミ・・・じゃなくて、クリスタとエレンがまた攫われてしまった!」

わざとらしくそう叫ぶサシャにミカサとマコト、リヴァイは顔を見合わせると立体機動に移った。



残された住民は突然現れた走り去る馬車を見送る。
・・・自分達は無傷だった。リヴァイ達は殴る振りをしたがあれは自分たちを守るためだったのか・・・と理解して

「オ、オイ・・・あんたら」

振り向くと、もう既にリヴァイ達は姿を消していた。





追いかけた先は倉庫のような場所で、ミカサとマコトは上の窓から誘拐されたエレンとクリスタ・・・こと変装したアルミンとジャン達の様子を伺う。

「こ、これはやばい・・・」
「アルミン・・・」

アルミンは誘拐された男に後ろから抱きつかれ、胸を揉まれたり脚を撫でられたり、物凄い近い至近距離で匂いを嗅がれたりなどして・・・大変危険な状態だ。

このままではアルミンの大切な何かを失ってしまうので、マコトとミカサは急いでリヴァイの所へ戻った。

「中の様子は?」
「急がないと変装がバレそうです!もうあんな事やこんな事になってて・・・!」
「はい。アルミンがかわいそうです」

ミカサはリヴァイを見ると

「脚の調子は・・・大丈夫ですか?」
「割と動くようだ。悪くない。マコト」
「はい」
「こういう戦闘はお前が一番慣れているはずだ。指揮はお前が執れ。俺はお前に従う。」

リヴァイの言葉にマコトは目を見開くと

「・・・分かりました!」

そう言うと腰に着けたいたポーチから、手袋を取り出すと104期の訓練兵が誕生日にくれたナックルダスターを取り出し手にはめた。

金属製のこの武器は、素手で打撃をした際痛みを伴うので手袋が必須だ。

「では、こいつの出番ですね!さ、2人を助けに行きますよ!このままじゃアルミンの貞操が危ないですからね!」
「ああ」
「・・・了解!」

マコトはリヴァイに簡単にハンドサインを教えると裏口から周り、マコトは音を立てないようにそっとドアノブを開く。

隠れ方の基本はゆっくりと、壁などの遮蔽物に背中を着けて露出は最小限に。 まずは敵を探すところからだが、その敵はアルミンに夢中らしい。

「(敵は1人・・・)」

マコトは4人を見てハンドサインをする。訓練兵時代に訓練したのがここで生かされるとは・・・教えておいてよかったとマコトは心の中でほっとする。

敵のサインは両手を使って鬼の真似をすると指を1本立てる。

鬼=1人

敵は1人・・・そう伝えると4人は頷いてマコトは親指、人差し指、中指を立てて3カウントをする。

3、2、1

行け、と5本指を立て振り下ろすと、全員音を消して斜め方向に進行しながら中に入る。


倉庫の中は男の荒い息だけが響き、眉を寄せる。

「へへ・・・意外と筋肉あるんだねぇ」
「っひいっ・・・」

男とアルミンの会話が聞こえる。
それだけでマコトは虫唾が走ったが遮蔽物に隠れて様子を伺う。

すると、ジャンと目が合って静かに、と人差し指を立て周囲の状況を確認する。
この距離ならミカサが近く、何より彼女は素早く動ける。ミカサを見つめ、カウントをかけるとGOサインを出すとすぐさまミカサは駆け寄り男に蹴りを食らわせ ると男はあっさり気絶してしまった。

男の気絶を確認すると、すぐさまサシャとコニーが取り押さえてロープで腕と口、脚を縛り付ける。

「2人とも、大丈夫?!」
「た、助かった・・・」

涙目のアルミンの頭を頑張ったとガシガシと撫でて、リヴァイはジャンを見下ろすと

「敵の数は?」
「俺らを攫ったのは3人・・・1人はコイツで、後のふたりはリーダーを呼んでくると」

マコトとリヴァイは顔を見合わせる。

「待ち伏せか」
「・・・ですね。アルミン、ジャン。ロープは緩めておくから全員で仕留めにかかるよ、いいね?サシャとコニーは上で待機、コニーは人数を私に教えて、サシャは何かあったら矢を飛ばしていいから!」
「了解!」
「了解です!」

男を荷物の隙間に引きずり込み、マコト達は息を潜めて機会を伺った。




しばらくすると扉開き、複数の男が入ってきた。
上に待機させていたコニーはそれを見て鬼ポーズからの5の数字を出す。敵は5人・・・それを見たマコトは頷いて、反対側に居るミカサ、リヴァイ、サシャに伝言する。

「本当にクリスタとエレンで間違えないだろうな?」
「はい。特徴は一致しています。」
「変装してないか調べたか?」
「・・・それはまだです」
「・・・馬鹿野郎またしくじる気か?」

そんな会話をしながらこちらに歩いてきて、ミカサとマコトは出方を伺う。

「オイオイ、こういうもんなはぁ・・・一旦は身ぐるみ剥がした所から始めるもんだろうが・・・」

そう言って後の男がミカサとは正反対の方を見た瞬間、ミカサと膝で男の顔を蹴り飛ばした。
同時にマコトも飛び出して長身の男を狙い、勢いをそのままナックルダスターで腹を殴り姿勢を低くしたところでかかと落としをする。
リヴァイももう1人の男の首と襟を掴むと地面に叩きつけた。

突然の事に残りの男2人は動揺して銃を取り出すがロープを緩めておいたアルミンとジャンが飛び出す。

引き金を引く前に・・・マコトは小柄な男に駆け寄るとそのまま飛びついて首に脚を引っ掛けるとウラカン・ラナ・インベルティダ※1という技を掛ける。(※1 プロレス技の一種。日本名にすると高角度後方回転エビ固め)

「ありがとう!一度やってみたかった!」
「おいマコト、敵で技の実験すんじゃねぇよ・・・」

お礼を言いながらマコトはそのまま男を地面に叩きつけ、リヴァイは苦笑いをする。

同時にミカサはリーダー格の男を取り押さえた。

「コニー、他にいる?!」
「いえ、この5人だけです!」

上から監視していたコニーは外を見るが異常なしとサインをする、がリーダーの男は懐から銃を取り出しミカサを狙う・・・がサシャが矢を放ったため矢が銃を貫通しそれは叶わなかった。

「動くと次はどこに当たるか分かりませんよ!!」

そう言うと全員で男たちを拘束し、尋問に移った。

「お前たちがここの商会のボスか?」
「違う、違うんだ。俺は馬車の運送にコキ使われてるただの老ぼれだ・・・だから、ひでぇことはやめてくれよ旦那・・・俺は何にも知らねぇ・・・あ」

男はミカサを見ると何かを思い出した様だったが、ミカサは「ん?」と首を傾げると

「ああ・・・あの時の、トロスト区で扉を塞いでた・・・こいつです。以前、街で部下から会長≠ニ呼ばれていました」
「チッ」
「そうらしいな・・・会長、あんたの巣じゃ落ち着かねぇ。場所を変えよう。」
「しょうがねぇな」
「部下にはもう少しここで横になってて貰うことにする。・・・ん?」

リヴァイは、部下を見ると様子がおかしいのに気づきアルミンに

「オイ、あいつの猿ぐつわを締め直せ」
「はい!」

アルミンは先程セクハラ行為をしていた男の紐を解くと

「聞いたよ・・・」
「は?」
「君・・・本当は・・・男の子なんだってな・・・はぁ、はぁ、君のせいで・・・俺は・・・俺は普通だったのに、へへ・・・君のせいで今、大変なんだから・・・何とかしてくれよ・・・」

どうやら、男はそっちの方向に目覚めてしまったらしくアルミンを見て興奮しているようだ。
マコトは急いでアルミンから引き剥がすとジャンはアルミンの肩に手を置き

「アルミン、俺がやるから」
「いえ、ジャン・・・ここは私が」
「は?」
「このっ・・・変態オヤジ!アルミンに触るな!」

そう言ってマコトは思い切り男の股間を蹴ると

「あああぁん! ありがとうございますうゥ!」
「ひぃ・・・っ」
「マコトさん、余計火に油注いじゃってますよ!」
「こ、これは想定外だわ・・・Mかよコイツ・・・!やっぱジャン、頼むわ!」
「え!これを?!」
「おい、何やってる。早くしろ!」

リヴァイがイラついてるらしくジャンは早く早く!と促すとマコトは謝り、アルミンを引っ張ってその場を後にした。

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