61:第1中央憲兵団

次の日・・・
マコト達は晩御飯の用意をしているとエレンがキッチンへとやってきた。

「エレン、まだ寝てなきゃダメでしょ」
「平気だよ。丸1日寝てたからな。手伝うよ」

エレンはそう言ってナイフを持つと

「・・・それより、俺のせいでウォール・マリア奪還作戦が遠のいたな。」
「エレンのせいじゃないから」
「そうだよ。まだ実験は始まったばかりだからさ!」

ミカサがフォローし、マコトもエレンにそう言い聞かせる。
コニーは俯くと

「俺はとにかく・・・獣の巨人と戦えりゃそれで・・・」


獣の巨人、先日の騒動で目撃された17メートルほどある猿のような体毛を纏った巨人の事だ。
今回の件では恐らくあの巨人の仕業だろうと仮定されている。

コニーはあの巨人のおかげで故郷を潰されたようなものだ。グッとナイフに力を入れるとマコトはコニーの手に自分の手を置くと

「コニー、落ち着いて。このままじゃ自分の手の皮剥きそうだよ」
「あ、すみません!・・・そろそろ見張り交代だな。頭冷やしてきます。ミカサ、行こうぜ」
「うん」


残されたマコト、ヒストリア、エレン。
鍋をかき混ぜながらヒストリアは悔しそうに

「いいね、エレンも皆も・・・辛いだろうけど、やりたい事がハッキリしていて」
「ん?」
「私は、ユミルが居なくなって何がしたいのか分からなくなった」
「ユミルを助けるんじゃないのか?」
「うん、でも・・・あの時は許せないし、助けたいとも思ったけど・・・今は違う気がしているの。ユミルは自分の生き方を自分で選んだ。もう私が何かをする権利もないし、必要も無い」

それをエレンとマコトは聞いているとフッ、とエレンは笑った。

「・・・なんか、やっとまともに話したな」
「え?」
「ここへ来た時、自分のことは話したけど・・・それ以外はニコリともしないし、話にも乗ってこないしな」
「・・・めんどくさくて」

ヒストリアらしかぬ言葉を聞いてマコトは少し驚いた。


「ごめん・・・もうみんなに優しくて、いい子のクリスタはいないの」
「いや、なんか・・・その方がいいんじゃね?前は無理して顔作ってるって感じで。不自然で正直、気持ち悪かったよ。 ・・・でも、今のお前は別に普通だよ。ただの馬鹿正直な普通のヤツだ。」

マコトはその会話を聞きながらうんうん、と頷くと

「むしろ、よく3年間仮面を被ってたよ。 これからは普通に生きていけばいい。」
「・・・ありがとうごさいます」
「ま、ユミルの事はまた考えればいい。俺だって・・・アイツには色々・・・」

そう言いかけて、エレン何かを思い出したようだがハンジたちがやってきたので作業は中断になった。









「あ?何だと・・・?」
「死んだんだよ、ニック司祭が。・・・殺されたんだ」

今朝、トロスト区の兵舎で。
最近頻発している強盗殺人事件の仕業だろう・・・と憲兵は言い張りニック司祭の部屋には入れて貰えなかったそうだ。
しかし、チラッと見えた遺体には爪が剥がされた跡がありそれを聞くとマコトはまさか、と青白くすると

「そ、それは拷問ってやつですか・・・?」
「ああ・・・それにその憲兵団は、中央第1憲兵団だったんだ」
「中央第1憲兵団・・・」

中央・・・まさに壁の中心であるウォール・シーナ内。
王都の憲兵団だ。

兵団内部の縮図を見せてもらった時マコトはチラッと見かけただけで特になんとも思わなかったしお目にかからないだろうと思ったがここに来てその中央憲兵が出てきた。

王に近い憲兵・・・わざわざ何故、こんな最南端のトロスト区まで。

マコトの世界でも、国に害のある人間は影ながら削除される。そういう国もあるほどだ。

「私は、ニックの職業を椅子職人として偽り保護した。中央憲兵は私に“ウォール教の神具は高く売れる”と話してね・・・あとその中央憲兵の手には殴った後の痣があった」
「中央憲兵がニック司祭を殺害したってことですか」

そうマコトが言うと、ハンジも頷く。


「中央憲兵、ジェル・サネス・・・ニックは中央憲兵に拷問を受け、殺されたんだ。ウォール教は調査兵団に協力したニックをほっとかないだろうと思っていた。だから正体を隠して兵舎に居てもらったんだけど・・・まさか、兵士を使って殺しに来るなんて。私が甘かった・・・私の責任だ。」

沈黙の中、リヴァイは紅茶を飲む。

「・・・憲兵は、ニック司祭を拷問してどこまで我々に喋ったか聞こうとしたんですか?」
「だろうな。しかも、中央憲兵を動かせるとなると・・・裏にいるのは相当の“何か”だ。・・・で、ニックの爪は何枚剥がされていた?」
「え・・・?」

関係あるのだろうか・・・ハンジは首を傾げる。

「見たんだろ、何枚だ?」
「一瞬しか見えなかったけど、見えた限りの爪は全部。」
「喋るヤツは1枚で喋るが、喋らねぇやつは何枚剥がしたって同じだ。・・・ニック司祭。あいつは馬鹿だったと思うが自分の信じるものは最後まで曲げることは無かったらしい。」

その言葉にハンジは悔しそうにソファの手すりを握りしめた。

リヴァイは目の前に居るヒストリアを見つめると

「つまり、俺たちがレイス家を嗅ぎつけた事は明確にはなってない。ただその中央の何者かに目をつけられてのは確かだろうな・・・」

すると、ドアが開いて玄関を見ると二ファがやってきた。

「リヴァイ兵長、エルヴィン団長からの伝言です。ニック司祭の事を伝えに行ったのですが・・・団長が直ぐにそれを」

リヴァイはそれを読むと目を細めて

「全員撤収だ、ここは捨てる。全ての痕跡を消せ」

そう言うと全員が立ち上がり荷物をまとめ建物から撤収した。








その数十分後には憲兵団が建物にやって来て包囲し始めるのが見えた。その光景を見て危なかった、と全員は安堵すると

「どうして、エルヴィン団長はこの事を・・・?」
「中央から命令が出たらしい。調査兵団の壁外調査を全面凍結。エレンとヒストリアを引き渡せってな。」

二ファが手紙を受け取った直後、エルヴィンの所にも憲兵団が来たらしく今は捕まっている状態。 それを聞くとハンジが声をはぁ?!と荒らげると

「まるで犯罪者扱いじゃないか!」
「もう裏でどうこうってレベルじゃねぇな・・・なりふり構わずってとこだ。」
「そこまでして守りたい壁の秘密って・・・、それにエレンとヒストリアを手に入れたい理由は何だろう?殺すんじゃなくて、手に入れたい理由だ」
「とにかく敵は、この2人を狙ってることがハッキリした。こんな所でうろついているのはマズい。トロスト区へエレン達を移動させる。」

トロスト区に行くのは余計まずいのでは、マコトは首を傾げ、ハンジも眉を寄せると

「何故、あえてニック司祭が殺されたトロスト区に?」
「中央へ向かう方がヤバいだろう。まだゴタついてるトロスト区の方が紛れやすい。町なかの方が、いざって時にこいつを使えるしな。」

そう言って外套に隠された立体機動装置を見せるとアルミンも確かに・・・と頷いた。

「それに、一方的に狙われるのは不利だ。こっちも、敵の顔くらいは確認する。」
「えっ?!」
「ハンジ、お前の班から何人か借りるぞ」
「もちろん。・・・よし、私はエルヴィンの方につく。モブリットは私と。他の者はリヴァイに従ってくれ」
「了解!」

そう言って各自解散になったがエレンはハンジを呼び止めると、折りたたまれた紙を渡した。

「これ・・・ユミルとベルトルトが話していた事で思い出したことがあって。話す時間がなかったんで、ここに」
「分かった。後で読ませてもらうよ。じゃあ皆、後で!」

そう言うとハンジとモブリットは馬に乗って去った。
残されたメンバー・・・リヴァイは全員を見ると

「まずはここから離れる。 森の深くまで一旦後退だ」

全員は頷くと森の中へと身を潜めた。

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