57:告白

「まあとりあえず、これでも飲んで」

マコトは6人分の紅茶を用意すると、リヴァイと2人で執務机を退かし始める。

何をしているんだ・・・?とエレン達は首を傾げるとマコトは床を数枚叩いて剥がすと、よっこらしょとい言いながら何か布の塊を取り出した。

その布の中にはマコトが自衛官の時に使っていた背嚢、ヘルメット、制服など身の回りのものが入れられていた。

それを床に並べられたそれを見て4人は

「教官、それは・・・?」

リヴァイは何も言わず、マコトを見つめる。


マコトは畳まれた制服を広げた。
迷彩柄の服・・・ここでは見慣れないものだろう。

「これは、私が着ていたもの。それと、これが私の身分証」

背嚢から出された財布から免許証と自衛官の身分証を取り出すとそれをテーブルの上に置いた。
3人は身を乗り出してそれを見ると

「なんだこれ、読めねえぞ」
「20XX・・・って」
「今は850年だよな?」

アルミンは察すると、マコトを信じられないという顔で見つめる。

「教官は、この時代の人じゃ、無いんですか・・・?」
「うん。君らの時代より1000年以上先の場所から来たの」
「え・・・どういう事ですか?何で?」

ジャンの戸惑う質問にマコトは腕を組んでうーんと唸る。

「どこから話したものか・・・まずは私の生まれた所は日本って言う場所で自衛官≠チていう仕事をしていたの。内容はここの兵団と似たように自分の住んでいる国を危険から守る仕事。 私はそこで18歳の頃から25歳になるまで続けてた。でもその25歳になった年・・・訓練中に事故にあって起きたらここに居た。」

3人は黙ってマコトの話を聞き、頭を使って理解しようとする。


マコトはそのまま続けると

「ごめんね、記憶喪失って言うのは嘘だけど、本当にここの言葉が分からなかったの。だからハンジさんやリヴァイさん、エルヴィン団長に助けて貰ってようやくまともに話せるようになって・・・訓練兵団の教官っていう仕事を貰ったの」

アルミンは少し考えると

「じゃあ、教官の時代に巨人は・・・?」
「居ないよ。」

するとエレンは頭を抱えながら

「えっと、じゃあ・・・俺たち人類は巨人を駆逐できたって事でいいのか?」
「うーん・・・巨人が居たっていう話も聞いた事無いけど・・・そういう考えでもいいと思う。私の勉強不足なのかもしれないし。」

アルミンはこの件に関しては理解すると

「巨人に関しては、本当に違いますよね?」

そう聞くと、マコトは確かめた方が早い・・・と執務机から戦闘用のナイフを取り出す。

リヴァイは腕を組んで見守っていたがマコトの行動に反応すると寄せていた眉をもっと深くする。

「おいおいおい、マコト。何するんだ」
「実演した方が早いと思って」
「は?マコト、待・・・」

リヴァイが止めに手を伸ばす前に、マコトはギュッと目を閉じると腕の内側にナイフを滑らせた。

「マコト!」
「いっ〜!たたたたた!」
「チッ、馬鹿かお前は!」

リヴァイは慌ててマコトからナイフを取り上げて床に投げると、4人も突然の事に驚いて立ち上がる。

マコトの白い腕からポタポタと血が流れる。
それは流れるだけでエレンのように蒸発もしないし巨人化もしない。

冷や汗が出たマコトは4人を見つめて笑うと

「・・・こ、これで信じてくれたかな?」
「あ、教官・・・そんな・・・」
「っすみませんでした!」
「申し訳ありませんでした!」
「疑ってすみません!」

4人は90度に頭を下げる。
マコトはいいよいいよと手を振って笑うと

「いやぁ・・・良かった。信じてくれて。」
「良くねぇだろ馬鹿。おい、タオル持ってこい!」
「は、はい!え?タオル?えっと・・・」
「そこの引き出し、下から2番目だ!」

リヴァイが指示するとジャンは言われた通り2番目の引き出しを開けると綺麗に整えられたタオルを取り出してリヴァイに渡すと「あれ?」と首を傾げると

「・・・ていうか、何でリヴァイ兵長は、教官のタオルの場所が分かるんです?」

ジャンの的確な疑問に、応急処置でタオルを結んでいたリヴァイの手が止まる。

マコトも窓に視線を移し遠い目で澄み渡る空を見上げた。
・・・アルミンとジャンは2人の関係を察すると頬を赤くして

「と、とりあえず座ろうか・・・」
「だな・・・」

と、ミカサとエレンにも座るように促す。
2人は首を傾げているためジャンは小声で「お前らマジで言ってんのかよ」と叱っている。


アルミンは状況を整理しているがとりあえず1番の疑問が解消されたのだろう、頭を下げると

「教官、ありがとうございます。 それに、すみませんでした」
「ううん。いいんだよ、それに4人ともよく信じてくれたね」
「教官は嘘が下手くそだからな。」
「そう言うエレンこそ、嘘をつくと耳が赤くなるって言われてたじゃない」
「はぁ?!そりゃ昔のことだろ!」

エレンは耳を赤くしてミカサを叱ると、その場が一気に明るくなりマコトは笑うと

「あぁ、っていうか私もう訓練兵団の教官じゃないの」

そう言うと4人はえっ?!と驚くとジャンはリヴァイを見て

「そ、それは・・・寿退団ってやつすか?」
「ぶはっ、違う違う。 リヴァイ兵長の副官になったよ。だからもう、教官呼びはおしまい」
「俺の班は再編成になるからな。サポートが必要だ。 ・・・変わらずエレンの保護は変わらんしな」

マコトは膝を曲げると座っているエレンと同じように視線を合わせて頭をガシガシと撫でる。
突然の事でエレンは混乱しているとマコトはニッと笑い

「エレン、私の訓練通りに動けたみたいだね。・・・頑張ったな。」

そう褒めると、エレンは目を見開いて少し瞳が潤む。

「でも、結果的に負けたし・・・沢山の人が俺の為に死にました」
「そうだね・・・でも、その人達のためにエレンはもっと強くなればいい。出来るよね?・・・いや、やるしかないんだよ。」

少し硬いエレンの髪を今度は優しく撫でる。

「はい、次は必ず。ウォール・マリアも塞ぐ、ライナーの奴を捕まえて償わせる・・・! 教官・・・いや、マコトさん。ご指導お願いします。」
「うん。これからもよろしく、エレン」

マコトはそう言うと手を差し出して握手をした。

話は終わったので4人は席を立つとリヴァイはジャケットの内ポケットから手紙を出した。

「アルミン」
「は、はい!」
「これをお前に。いいか、読んだら直ぐに実行しろ。分かったか」

その手紙をアルミンは両手で受け取る。
なんだろう、と4人は首を傾げるが了解です!敬礼をした。


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