50:後悔

一方、トロスト区では女型の巨人を捕まえた事でようやく憲兵団をここまで引きずり下ろすことが出来た。

しかし特に何も無い、ただの待機状態に憲兵団も気を抜いていると駐屯兵団の先遣隊と、調査兵団のサシャが報告に来た。

2人は相当急いで来たのか、激しく疲弊しており水を受け取るとゴクゴクと飲み始めると状況を説明した。

壁に異常はなかった、しかしトロスト区へ戻ろうとしたハンジが率いる調査兵団の104期の中に3人巨人が混ざっている事が分かりそのうちの2人が超大型巨人と鎧の巨人として姿を現し交戦。


それを聞いていたリヴァイは思わず眉をピクリと動かした。真っ先に思い浮かぶ、マコトの姿・・・

また、嫌な予感がすると思ったがそれは的中した。
全員・・・大型巨人の熱と風圧で負傷したとの報告が上がり、リヴァイは組んでいた腕を握りしめた。

「超大型巨人と鎧の巨人は、エレンと・・・同じく調査兵団のマコトさんを連れて逃亡しました・・・」



マコト?
リヴァイは顔を上げて先遣隊の胸ぐら掴んだ

「おい、お前。今なんて・・・?マコトって言ったか?俺の・・・副官だぞ。」
「は、はい。元訓練兵団教官の、マコト・マカべさんです」
「なんで、アイツが連れてかれたんだ?」
「そ、それはっ・・・ぐっ」

ギリ、と首を絞める勢いで襟首を掴みリヴァイは先遣隊を睨みつけるとその場にいたジャンが慌ててリヴァイを止めた。

「104期の奴らは、立体機動を付けていません。おそらく、教官の立体機動を奪ったんでしょう」
「その後は、マコトはどうなる・・・?何で、よりによってマコトなんだ?」
「その後・・・は・・・っ」

ジャンに思わずそう聞くと、ジャンは言葉に詰まる。


立体機動を奪えば用済みになり、マコトは壁外のどこかへ捨てられるのだろう。

ストヘス区での作戦会議時、足でまといだなんて言ったのは嘘だ。マコトは十分に立体機動を自分のものにすることが出来たし何よりサラの力があるので余程のことがない限り大丈夫だと確信はしていた。

嘘をついたのはマコトを危険な目に遭わせたくなかった。それだけだ。だから辞令を出してまで自分の傍に置いたはずなのに、どんどんマコトは自分から離れていく。

そもそも自分がマコトを向かわせなければ、こんな事には・・・

「くっ・・・」
「リヴァイ、自分を責めるな。お前は、マコトの実力を評価して、信頼したからハンジに預けたんだろう? 後悔は、次の判断を鈍くさせるぞ。それはお前も分かってるだろ?」

エルヴィンの言葉にリヴァイは力が抜けて先遣隊から手を離すと

「悪かったな。・・・エルヴィン、俺も行くぞ。立体機動の装備をしてくる。」

もう既に判断は鈍くなっている。

ここまで動揺しているリヴァイも初めて見るとエルヴィンは内心焦るが、行かせる訳にはいかないとリヴァイの二の腕を強く掴む。

「リヴァイ、それは出来ない。お前にはニック司祭の監視がある。」

却下するエルヴィンをリヴァイは睨みつける。
その目は、旧調査兵団本部で話し合った時のように目に光がない。


するとサシャはあの・・・と水を飲みながら手を挙げると

「教官、超大型巨人に捕まった時に叫んでました。お前達と故郷は違う。勘違いするな≠ニ・・・」
「故郷・・・」
「教官、記憶喪失ですよね?もしかして、その故郷に連れて行かれるのでは・・・」
「あいつの故郷は・・・」

遠く離れた未来のはず。
リヴァイは拳を握るとエルヴィンは

「リヴァイ、完全にマコトが死んだわけじゃない。サシャの発言だとまだマコトは生存しているはず。・・・それにお前は負傷している。お前が無理をすれば、あの子は悲しむぞ」

諭すようにそう言い聞かせると、リヴァイはエルヴィンの胸ぐらを掴むと顔を引き寄せて

「エルヴィン、あいつを・・・頼むぞ」

リヴァイの掴む手の上にエルヴィンは手を重ねて力強く握った。









壁の上から移動し、エルヴィン達はハンジ達に合流した。
目を覚ましたハンジは悔しそうに歯を食いしばるとうつ伏せになったまま、

「マコトが、連れてかれたんだ。はは・・・リヴァイが居たら私ぶん殴られていたか壁から落とされてるよ。」
「話は聞いた。こちらもリヴァイが暴れて大変だったが、説得させて待機している」
「ああ、早く会わせてあげたい・・・モブリット、地図を」


立ち上がれないハンジに、モブリットは地面に地図を広げるとハンジを囲んで全員が覗き込む。

「ここに小規模だが巨大樹の森がある・・・そこを目指すべきだ」

鎧の巨人の足跡は消せないので恐らく彼らはここに向かったに違いない。

「それは何故だ?」
「これは賭けだけど・・・巨人化の力があっても壁外じゃほかの巨人の脅威に晒されるようだし、あれだけ戦ったあとだからエレン程じゃなくてもえらく消耗してるんじゃないか?アニも寝込んでいたらしいよ。」


彼らの目的を、ウォール・マリアの向こう側だと仮定する。
その長大な距離を渡り、そこへ進む体力が残ってないものと仮定するとどこか巨人の手の届かない所で休みたいはずだ。

巨人が動かなくなる夜まで。


「エルヴィン、夜までだ!夜までにこの森にたどり着けば、まだ間に合うかもしれない! マコトもきっと、そこに居るはずだ・・・」

悔しそうに拳を握ると、エルヴィンはその手に自分の手を重ねると

「ハンジ、あとは我々が行く。治療を受けろ」
「頼むよ・・・」

そう言うと、ハンジは力尽きたのか目を閉じて眠ってしまった。モブリットはハンジを抱えるとよろしくお願いします、と頭を下げる。


リフトの馬は全部下ろしきれた。
日没まで時間が無い・・・馬に乗ったエルヴィンはブレードを掲げると

「今からエレンとマコトの救出へ向かう! 進めェ!」
「おおお!」

馬の腹を蹴ると、馬を全速力で走らせた。

[ 52/106 ]
*前目次次#
しおりを挟む
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -