48:救世主

エルミハ区に到着し、ここからは巨人が侵入しているエリアになる。

荷馬車で体力を回復させたエレンは顔色も幾分か良くなっていた。

マコトはリヴァイとニック司祭の監視に当たる。
避難している人の表情は疲弊しきっており、親とはぐれた子供もいるようだ。
その光景にニック司祭は呆気に取られていた。

リフトに向かったハンジ達。するとリヴァイはマコトの腕を掴むと

「マコト、お前もハンジと行け」
「えっ?」
「戦えるやつは1人でも多い方がいいからな。お前も行った方がいいだろう。 コイツは俺に任せろ。・・・最悪コイツの鼻を折る」

鼻を折る・・・リヴァイはあの時どこから見ていたのだろう、恥ずかしくなり頬を抑えるとリヴァイは口元だけ笑うと

「さすが俺の女だ。あれくらいの事ができなきゃ、俺の隣は歩けん」
「は・・・はいっ!」
「早く装備しろ、置いていかれるぞ」
「了解です!」

マコトは予め持ってきていた立体機動を装備するとハンジの所へ向かった。




「ハンジさん、リヴァイ兵長の指示で一緒に行かせて頂きます!」
「リヴァイが? うん、助かるよ。よろしくね!」
「はい!」

すると後ろからニック司祭がリヴァイに連れられてやってきた。
この現状を見て、顔面蒼白になっている。

「気持ちの変化はありましたか?」

ハンジの問に、ニック司祭は俯いて黙り込んだ。イラッとしたハンジは声を荒らげると

「時間が無い!分かるだろ!話すか黙るかハッキリしろよお願いですから!」
「・・・私は話せない。他の教徒でもそれは同じで変わることは無いだろう。」

その言葉にマコトとハンジははぁ・・・と眉を下げると

「それはどうも!わざわざ教えてくれて助かったよ!」
「それは、自分で決めるにはあまりにも大きな事だからだ・・・我々ウォール教は、大いなる意思によって従っているだけの存在だ。」
「誰の意思?神様ってヤツ?」
「我々は話せない。たがその大いなる意思により、監視するよう命じられた人物の名なら・・・教えることが出来る」
「・・・監視?」
「その人物は、今年の調査兵団に入団したと聞いた。」

104期生に・・・その発言に全員が目を見開くとニック司祭の言葉の続きを待つ。

「その子の名は・・・」





「失礼します!104期調査兵、サシャ・ブラウスです!!」

突然扉を開いて来たサシャに被せるように言った監視の人物・・・それを聞いてエレン、ミカサ、アルミン、マコトは驚いた。

ハンジだけは首を傾げると

「えっ、誰?」
「とにかく、彼女を連れてこい。彼女なら我々の知りえない真相さえ知ることが出来るだろう。・・・私ができる譲歩はここまでだ。あとはお前たちに委ねる。」

するとマコトはちょっと・・・と呟き顔を青くすると

「あの子、じゃあ今頃は最前線にいますよ・・・」
「っ行きましょう!」

するとエレンはサシャとぶつかり、すっかり存在感がなかったサシャは慌ててハンジに書類を届けに来た。

ハンジはお礼の代わりに蒸かした芋をサシャの手に載せるとサシャは全力で頬張って食べたのだった。





「で、その子は誰なの?」
「あの1番小さい子ですよ」
「金髪の長い髪で・・・えっと、あとは・・・かわいい」
「そうです、天使です」

アルミンの発言にマコトは同意して付け加えるとミカサは

「ユミルといつも一緒にいる子です」
「・・・えっ、ユミル?」

その名前にハンジは動揺した。
そしてニック司祭はまた重い口を開いて手を組むと

「あとは・・・救世主が・・・」
「救世主?何それ」

ハンジはニック司祭の呟きを聞き逃さなかった。
救世主とは・・・全員が見つめると

「はるか昔、この壁の人間を危機から救った人物の事だ。 私も詳しくは知らされていない。」
「そんな人間・・・居るのか?」
「壁に危機があれば馳せ参じると残し・・・その救世主は消えた。 その救世主には、身体のどこかに紋章の焼印が入っている」

焼印・・・?
ハンジ、リヴァイ、マコトは顔を見合わせる。
もしかして・・・とハンジは胸ポケットから手帳を取り出すと

「ねぇ、もしかして・・・それってこれの事・・・?」

ハンジはマコトのうなじにある円の紋章の写しを、震える手で見せるとニック司祭は目をカッと開いて

「ど、どこでそれを、何故知っている?!」
「お、落ち着いて!今は時間が無いから」
「おいてめぇ、暴れるな」

リヴァイが脚でニック司祭を軽く蹴ると、ニック司祭はブツブツと祈るだけでその姿にマコトも動揺を隠せなかった。


陣形を確認し作戦会議を終えたあと、慌ててエレンは外に出ようとした。が、それをリヴァイが一旦止めた。

「いいか、お前ら。ここからは別行動だ。あとは任せだぞ。・・・分かってるな?アルミン。お前は今後、ハンジと知恵を絞れ」
「はっ、はい!」
「ミカサ。 お前が何故エレンに執着してるかは知らんが、お前の能力の全てはエレンを守ることに使え」
「はい、もちろんです!」
「それからな、エレン。お前は自分を抑制しろ。怒りに溺れて本質を見失うな。今度こそ、しくじるなよ」
「はい!」

そして最後にリヴァイはマコトを見ると

「マコト、お前もその能力を使って俺の代わりに巨人をぶっ潰してこい。そして必ず帰還しろ。・・・いいか。これは、上官命令だ。」
「はい!必ず帰ってきます!」

エレン達やハンジの班、全員が出ていくのを見送ったあと、マコトが最後になり足を踏み出した途端リヴァイがドアを閉めた。

えっ?とマコトが驚いて見上げると突然リヴァイはマコトの両頬を手でパン!と挟むとやや乱暴気味に唇を合わせた。

唇を離し、突然の事に動けずにいたがリヴァイはマコトを見つめて

「・・・気をつけろよ。」
「うん、行ってきます」

そう言ってマコトは頷くとドアを開けた。





突然リヴァイがドアを閉めたので前を歩いていたハンジは驚いたようですぐに駆け寄ってきた。

「いきなりドアが閉まったからビックリしたよ! リヴァイが引き止めたのかと・・・」
「あはは!私もビックリしたけど、大丈夫でした」

突然キスされたんて言えない、とマコトは笑ってごまかすがハンジは把握するとははぁんと笑い

「リヴァイって意外と寂しがり屋?」
「・・・ですかね?結構甘えてきますよ」
「うわ、寒気がしてきた。」
「ふふ、あまり言うと私も削がれちゃいます。よっし、行きましょうか!」

マコトはハンジの腕を引くと馬に乗った。
ニックのあの時の反応が気がかりだったがまずは、その監視されている人物・・・クリスタ・レンズの救出へ向かった。

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