44:リベンジ
作戦決行日当日ー

あれからシーツを総入れ替えしたリヴァイとマコトはお互い寄り添うように眠り、マコトが寝ている間にリヴァイは起き上がった。

まだ夢の中にいるマコトの頬を撫でると、マコトの部屋へと入った。


部屋は綺麗に片付けられており、マコトの執務室は少し爽やかな・・・グリーンティーと言う香りが漂う。
この匂いは嫌いではなく、むしろ好きなリヴァイはすん、と吸うと少し心が落ち着いた。

引き出しからマコトの立体機動のベルトや着ていく服を全て選んでいく。


・・・これは、マコトがリヴァイにやっている事で、今の自分は戦線に出られないため何かしてやりたいと思った。

着ているものは同じなので選ぶなど無いのだがリヴァイはマコトの服を手に取ると自室へ持っていった。



「マコト」

リヴァイは眠っているマコトの髪の毛を手に取って弄ぶ。

「おい、起きろ」

マコトの長い髪の毛をムチのように顔に当てると

「んぅてて・・・痛いよぉ」

目が開かないのか、顔を歪ませて手で顔を覆うがリヴァイはそれを見て笑う。

疲れすぎていると寝起きが悪いのはいつもの事だが、リヴァイはある事を思い出してマコトの部屋の引き出しから隠してあるスマホを取り出した。

使い方はマコトに教わったことがある。電源というものを入れて顔認証らしいが手打ちでも行けるため手打ちでパスワードという暗号を入れる。

パスワードの番号は変えたらしくリヴァイでも分かりやすいように

「12月25日・・・」

リヴァイの誕生日だ。
すると、画面が開いて音符のマークを開くとマコトの耳元でとある音を鳴らした。

それはラッパの音で、自衛官はこの音で反射的に起きてしまうらしい。 自衛官ではない友人に1度イタズラでやられたことがあるらしく飛び起きたという話を聞いた。

再生ボタンを押してこの音を鳴らした瞬間、マコトは目をカッと開くと素早くかばっと起き上がりリヴァイは「おお・・・」と感心した。


「・・・本当に起きたな」
「り、リヴァイさん・・・?」

マコトは部屋を見渡して驚いているようだ。

「え?」
「お前が起きないから、イタズラしてみた」

そう言ってリヴァイはスマホを見せると

「あーもおぉびっくりしたー!」
「悪かった。あまりにも起きないんでな」
「あ、ありがとう・・・」

そんなに熟睡してたのか、とマコトは恥ずかしくなるとリヴァイに

「また元の時代帰ってきちゃったかと思った」

そう言って笑うと、リヴァイは思わずマコトの頭を撫でて

「すまん、イタズラが過ぎたな」
「怒ってないよ、むしろスマホをいじれるようになったリヴァイさんを褒めたいです」

そう言うと、マコトもリヴァイの頭を撫でた。




「ほらマコト。着替えだ」

リヴァイはテーブルの上にマコトの装備物を並べておいた。 最初は驚いたが、マコトは嬉しそうに笑うと

「よろしくお願いします」

シャツを着て、髪の毛をキツく三つ編みにするとそのままお団子にする。
リヴァイはマコトの耐Gベルトを手伝い、最後はジャケットを着せた。
マコトは身体を動かして異常がないのを確認するとリヴァイを見つめて

「大丈夫、ありがとう」
「ああ。 ・・・マコト、命令は守れよ」

どのような事があってもリヴァイの元に帰還すること。マコトは了解です!と敬礼をしリヴァイも頷くと、マコトにキスをした。







ストヘス区・・・
荷運び人として変装をするマコト達。
わざと着た雨具の下には立体機動装置が隠されている。
先にアルミンがアニと合流し交渉しに行っている間、マコト、エレン、ミカサは待機となった。


アルミンは無事に成功したらしく、アニを連れてきた。その心中は全員複雑だが顔には出さず

「よぉアニ、久しぶりだな」
「・・・久しぶり。」

エレンを見た後アニはマコトを見つめると、マコトは普段通りと笑うと

「アニ、来てくれてありがとう。」
「いえ・・・ほら。行くんでしょ?」

そう言うと、アニを先頭に目的のポイントへ向かった。



5人は歩きながらエレンは辺りを見渡す。

「さすが憲兵団様だ。日頃の仕事具合がうかがえる」
「キョロキョロしない」

小声でミカサが叱りエレンは無視する

「あとは影武者のジャンがどれだけ持つか・・・あれはそう長くは持たねぇよ。あいつと俺、全然似てねぇから」
「大丈夫だって。2人は目付きが凶悪で、似たような悪人ヅラだから」
「俺はあんな馬面じゃねぇよ」
「ぶふっ・・・」

アルミンの容赦ない言い方に思わずマコトは吹き出すとエレンは顔を赤くして「教官!」と拗ねてしまった。


そして到着した目的のポイント。
それは、昔計画されていた地下都市の廃墟が残った場所。外扉の近くまで続いている。

そう説明しながらマコト達は階段を降りるが、アニは降りてこなかった。


「アニ、どうしたの?」

マコトが優しく首を傾げる。
エレンはアニを見てハッと笑うと

「まさか、狭くて暗いところが怖いとか言うなよ?」
「そうさ・・・怖いんだ。あんたみたいな、勇敢な死に急ぎ野郎にはきっと、か弱い乙女の気持ちなんて分からないだろうさ」
「・・・大男を空中で一回転させるような乙女はか弱くねぇよ。バカ言ってねぇで急ぐぞ」

階段を降りていくエレン達、マコトはアニを見て笑うと

「アニ、ちゃんと松明も持ってるし大丈夫だよ。 ほら、手を繋げば怖くない。」

そう言ってマコトは安心させるようにアニに手を差し出した。


「いいや、私はそっちに行かない。・・・そっちは怖い。地上を行かないなら、私は協力しない。」
「何言ってんだテメーは!?さっさとこっちに来いよ!ふざけてんじゃねぇ!」
「エレン、叫ばないで」

ミカサはエレンを窘めるがアニは

「大丈夫でしょ、ミカサ。さっきから、この辺にはなぜか・・・全く人がいないから。」

ここまでか、とミカサが脚をジリ・・・と動かすがマコトが目線で止める。

「ったく、傷つくよ。一体いつからあんたは、私をそんな目で見るようになったの?・・・アルミン?」
「アニ、何で・・・マルコの立体機動装置を持っていたの?わずかな傷やへこみだって、一緒に整備した思い出だから。・・・僕には分かった。」
「そう・・・あれは・・・・・・拾ったの」
「じゃあ、生け捕りにした2体の巨人は、アニが殺したの?」
「さぁね。でも1か月前にそう思っていたんなら・・・何でその時に行動しなかったの?」
「今だって、信じられないよ。きっと何か見間違えだって思いたくて・・・そのせいで!でも・・・アニだって・・・あの時、僕やマコト教官を殺さなかったから。今、こんな事になっているんじゃないか」

そのアルミンの言葉に、アニは遠い目をして

「ああ・・・心底そう思うよ。まさか、あんたにここまで追い詰められるなんてね。あの時、何でだろうね・・・」
「おいアニ!お前が間の悪い馬鹿でクソつまんない冗談で適当に話を合わせてる可能性がまだあるから!とにかく、こっちにこい!この地下に入るだけで、証明出来ることがあるんだ!こっちに来て証明しろ!」
「アニ・・・」

アニは、マコトを見下ろした。
空気を通さない雨具のせいなのか、この緊張感のせいかマコトの背中には汗が流れるのを感じる。


彼女が、本当に女型の巨人だなんて信じたくない。

震える声でマコトはアニにまた手を伸ばすと

「ほら、おいで?一緒に行こう・・・私がついてるから」

その手を見てアニは悲しそうに目を伏せる。

「・・・そっちには行けない。私は、戦士になり損ねた。」
「だから、つまんねぇって言ってるだろうが!」
「話してよアニ!僕達はまだ、話し合う事がーー」

その瞬間、ミカサが階段をダンッ!と踏んでミカサが雨具を脱いで抜刀した。

「もういい、これ以上聞いてられない。不毛。 ・・・もう一度ズタズタに削いでやる。 女型の巨人・・・!」

その瞬間、アニはこちらを見ると

「ふふっ、アハハッ!」

顔を真っ赤になるほど笑い始めたのだ。
突然の事に、マコト達は唖然とする・・・あんな顔をするアニは、今まで見たこと無かった。

「アルミン・・・私があんたの、いい人で良かったね。ひとまずあんたは賭けに勝った。でも、私が賭けたのは、ここからだから!」
「アニ!!」

そう言ってアニは、指を口に近づけた瞬間、マコトは駆け上がってアニに抱きついた。

「っ!離して!」
「アニ、お願い!私達と一緒に・・・わっ!」

ドンッ、とアニはマコトの胸を押して階段へと突き落とした。
スローモーションの中、アニはマコトを見て何かを呟いたが、それと同時にアルミンが合図を撃ったため聞き取れなかった。

その瞬間、私服に変装した調査兵団がアニを取り囲み口を布で噛ませて拘束する。

階段に身体を打ち付ける、と痛みの準備として目を閉じると、ミカサとエレンがマコトを受け止めアニを睨みつけた。

拘束されたアニは、小指にはめた指輪から針のようなものを取り出すのをミカサは見逃さずとっさにマコトを小脇に抱え、エレンとアルミンの服を両方つかみ器用に片手で引っ張ると



「逃げて!くそっ、間に合わなかった・・・!」


そのまま3人を連れて地下へ潜った瞬間、


ドンッ!という爆発と光が現れ振り向くと

「アニ・・・」

マコトは目が離せないまま、涙が落ちる。




・・・アルミンの読み通り、女型の巨人はアニだった。



こうなってしまった以上、2次作戦・・・女型の巨人との戦闘だ。


「危ないっ!」

先に地下にいた第3班と合流しようとしたが、女型の巨人は地面を踏み抜いてきた。

「げほっ、げほっ!」

マコトは咄嗟に3人の盾になった時、破片がマコトの額に当たった。額に暖かい物が流れたのでグイッと拭うと血が出ていた。

3班は踏み潰され、退路を絶たれてしまった・・・
女型の巨人はエレンを殺す気で奪いに来る。どうする、マコトはこの地下の地図を頭の中で開くと

「こっちに、一旦奥に避難!」

4人は一旦奥に引っ込み作戦を立て直す。
穴から素早く立体機動で飛び出しても捕まって殺される・・・かといって、ここにいても踏み潰されるのが目に見えている。

エレンはトロスト区で砲弾を防いだ時と同じようにアニを防いでみようと3人を近く寄せて、手に噛み付いた。


しかし、エレンは巨人になれず手には大量の血が流れている。その痛々しさに目を背け、ミカサはエレンの傍にしゃがみこむと

「エレンは・・・まだアニと戦うこと、躊躇してるんじゃないの?」

明確な目的がなければ巨人化にはなれない。今の目的は女型の巨人との戦闘・・・エレンには迷いがあるのだ。

「まさか、この期に及んで、アニが女型の巨人なのは気のせいかもしれない・・・なんて思ってるの?あなたはさっき、目の前で何を見たの?マコト教官を階段から突き落とし、仲間を殺したのは、あの女でしょ?まだ違うというの?」

ミカサがエレンに諭すように言うがエレンは腕に噛み付く、が巨人化にはなれない。


マコトは、空いた3つの穴を見てアルミンに

「アルミン、穴は三つ・・・ミカサ、アルミン、私で同時に出よう。その隙にアニが居ない穴からエレンは脱出する。・・・どうかな?」
「・・・それしかないですよね」

アルミンも同じことを考えていたようで、2人同時にブレードを抜く。

「そうしたら3人の誰かがが死んじまうだろうが!」
「ここに居ても4人とも死ぬだけだよ」

アルミンがそう言うと

「教官はこのまま、リヴァイ兵長の所へ!」
「分った・・・団長も一緒のはずだから応援を呼んでくる!」
「お願いします!」

ミカサとアルミンは頷くと3人同時にフードを深くかぶり、立ち上がると穴の外に向かって立体機動のアンカーを放った。





暗い外から地上に出ると眩しさに目を細めた。
空高く飛び身体に浮遊感が生まれ、身体を捻らせて女型の巨人を探すと、ミカサが女型の巨人に身体を掴まれた瞬間だった。

「ミカサ!」

マコトは手が無意識に動いてブレードを構えるとガスを噴かせる。女型の巨人がこちらに向かって伸ばす手をかいくぐり、ミカサもブレードで指を切り落として脱出した。

ミカサは距離を取り、マコトは女型の巨人の脚にアンカーを打ち込みワイヤーを巻き取り腱を狙ってブレードを凪いだ。

「くそっ、浅いか!」

女型の巨人は一瞬よろけたがすぐに修復されてしまうだろう。一旦マコトとミカサは退避して建物の屋根に着地する。

「教官、ここは私に!」
「頼む!」

エルヴィンとリヴァイの元へ・・・とアンカーを出そうとしたが一緒に飛び出したアルミンを探す。
どうやら踏み抜いた床の下にエレンが居たらしくアルミンが瓦礫を退けているのが見えたので慌てて降りて駆け寄る。

瓦礫やエレンを押し潰しており、危険な状態だ。

「エレン・・・!」
「意識はあるみたいだね・・・でも・・・」

意識が朦朧としているのか、エレンは焦点があっていない。この瓦礫の量はアルミンと自分だけでは到底退かせそうにもない・・・

「アルミン、応援が来るまでに出来るだけ瓦礫を退けておいて。」
「はい!お願いします!」

アルミンの頭を軽く撫でるとマコトは建物にアンカーを打ち込んでエルヴィンとリヴァイの元へと急いだ。








「居た!」

マコトは馬車の走行ルートを辿ると、憲兵団に囲まれているエルヴィンとリヴァイを上から確認する。

「お待たせしました!」

そう叫ぶとそのままエルヴィンの前に着地してすぐに2人に敬礼をした。

「マコト、無事だったか」
「はい! ご報告です。1次作戦に失敗。ただいま2次作戦に移行しましたが・・・3次の出番もありそうです。」
「そうか・・・」

巨人化の爆発は1回のみ・・・エルヴィンは把握すると、馬車からエレンと同じ髪型のカツラを被ったジャンが出てきた。

「待て!動くなイェーガー!」
「変装ごっこはもう終わりだ! 二度とその名前で呼ぶなよバカヤロー!」

ジャンはエルヴィンたちの所へ走ってくると

「団長、俺も行きます!」
「装備は第4班から受け取れ」
「了解! 教官、エレンの奴は・・・」

マコトは首を振るとジャンは舌打ちをする。

「おい、威勢がいいのはいいが、死なねぇ工夫は忘れんなよ」
「はい!」
「ジャン、エレンが瓦礫の下敷きになってるの。アルミンの応援に行ってあげて」
「はぁ?!ったくアイツ・・・! 了解!」

ジャンは持っていた調査兵団のマントを羽織ると4班の所へ向かった。
マコトは心配そうにジャンの背中を見送っているとエルヴィンにも立体機動装置が運ばれ、マコトは装備を手伝った。

「動けるものは全員続け、女型捕獲班に合流する!」
「エルヴィン、待て!」

憲兵団師団長のナイルがエルヴィンに銃口を向けると他の兵士も全員銃口を向けた。

「貴様のやっている事は王政に対する明らかな反逆行為だ!」
「ナイル。テメーの脳みそはそのうすらヒゲみてぇにスカスカか?何が起きてるかも分からないらしいな」
「黙れリヴァイ!・・・装備を外せ、エルヴィン!」

緊張が走る空気の中、リヴァイは無視してジャケットのポケットからハンカチを取り出すと出血しているマコトの額に当てて優しく血を拭き取る。

「おい、怪我してんじゃねえよ」
「すみません・・・でも大丈夫です。かすり傷ですから」
「顔に傷が残ったらどうすんだ、この馬鹿が」

怒ってはいるが本気ではない。マコトは苦笑してされるがままになっているとリヴァイはマコトの顔を引き寄せて額の血を落とし、頭や頬に付いた砂埃を払ってやると

「マコト、お前はハンジの所へ行って3次作戦の準備をさせろ。大喜びするぞ。」
「ふふ、了解です」
「っおい!」

ナイルの制止の声をマコトは睨みつけて黙らせるとそのままアンカーを出してハンジのいるポイントまで向かった。




***




「ハンジさん!」
「マコト!無事でよかったよ」

待機中のハンジはマコトに抱きつくと、マコトもハンジの背中に腕を回して耳元に口を近づけると

「ハンジさん、3次作戦の準備をお願いします。」
「えっ、ほ、ほんと・・・?い、いいの・・・?んふっ、へへっ・・・へへへへへ!」
「分隊長!しっかりしてください!」

ハンジはおっしゃー!と叫ぶとその場にいた三次作戦の班に指示を出し始めると、アルミンとジャンが囮になり誘導されてきた女型の巨人の足音が聞こえた。

ハンジは捕獲器のハンドルを持ちながら、

「ふふっ、んふふっ・・・来る・・・来る・・・!」
「分隊長・・・目が、泳ぎすぎです・・・」
「巨大樹の森でもこんな感じだったんですか・・・?」

若干引きながらマコトはモブリットに聞くと、モブリットは静かに頷いた。


女型の巨人を一時捕獲出来たが、罠の数が足りず足で薙ぎ払うとそのまま走って逃亡した。

こうなったら身体を張って食い止めるしかない・・・小銃があればいいがここでは人目が多すぎる。

マコトもミカサ達に続いて追いかけているとドンッという音とともに雷が落ちたような光がストヘス区に広がる。

その音に女型の巨人も立ち止まり、マコトも急ブレーキを掛けてその音を見る。

「ウオオォオオ!」

巨人化したエレンは真っ直ぐと女型の巨人・・・アニに向かって拳を振るった。

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