41:女型の巨人
「マコト教官!」

次の日・・・リヴァイを見送り、壁外調査後の後処理の手伝いを終えてから旧調査兵団本部へ行こう・・・と廊下を歩いているとアルミン、ジャン、ミカサがこちらへやってきた。アルミンの頭には包帯が巻かれているのを見ると慌てて

「アルミン!その頭・・・怪我をしたの?!」
「ちょっと転んで・・・ミカサから聞きました。女型の巨人に食べられたって」
「うん・・・捕まった所までしか覚えてはいないんだけどね。」

情けない、と笑うと

「でも、何で・・・女型の巨人は、教官を食べたり、殺したりしなかったんだろうって、疑問に思って。」
「それは・・・操っている人が意思があるから・・・じゃない?」
「でも、マコト教官以外の人は殺された・・・実は僕も、転んだ時に女型の巨人にフードをめくられたんです。」

こうやって、とフードを摘む。

何なのだ・・・マコトは疑問に思ったが

「エレンを探していたのかと最初は思いましたけど、マコト教官を食べなかったと話を聞いて確信に変わりました。・・・女型の巨人は104期の中にいる」
「えっ・・・」
「マコト教官、エルヴィン団長に掛け合って貰えませんか?」

お願いします、とアルミンが頭を下げた。
マコトは震える手で頭を抑え、大きく息を吐くと

「・・・行こうか、団長の所へ」




***




調査兵団は今回の件で一時活動凍結中、後日エルヴィンや幹部勢がエレンと王都へ呼ばれる事になっている。
そうなれば壁内にいる巨人への追求が困難になってしまい、人類滅亡の色が濃厚になる。

その間に、何がひっくり返すものがー


執務室に居たエルヴィンは思考を巡らせていた。
すると

コンコン

「エルヴィン団長、マコトです。」
「入りなさい」

ガチャ、とドアを開けると、やややつれ気味のマコトが敬礼をした。

「お忙しい中、大変失礼します」
「どうした?君からここに来るなんて、余程の事だろう」

下着盗難事件以来だろうか、あの時は泣きながらハンジとエルヴィンの執務室に来たのを思い出して吹き出すと

「あははっ団長、真面目な話ですよ。他にも連れてきた子がいるんです。」
「連れてきた子?」

閉じられたドアを開くと、緊張した顔のアルミンとミカサが敬礼をした。
マコトは今度は真面目な顔でエルヴィンを見上げると、

「エルヴィン団長。女型の巨人の正体について、お話があります。」

エルヴィンは、目を見開いた。








エルヴィンは話を聞くとこの件は、リヴァイとエレンの耳にも入れるようにしようとすぐに旧調査兵団本部へと馬を走らせた。

リヴァイはラフな格好をしており、エレンと2人きりで食堂にいた。数日前までは居たリヴァイ班も今では居なく、静まり返っている。

あれからエレンとは会わなかったため、エレンはマコトを見ると椅子から立ち上がって思わずマコトに抱きついた。

「マコト教官っ!!」
「え、エレン!気分はどう?」
「大丈夫です。それより、教官・・・っ良かった、生きてて!」

首が締められそうになるほどの強い抱擁で思わずミカサを見るが、怒ってはないようだ。優しそうな目でエレンを見つめている。

しかし、リヴァイは舌打ちをすると

「おいエレン、マコトを絞め殺す気か。」
「す、すみません!」

顔を真っ赤にしたエレンにマコトは良いんだよ、と頭を撫でた。



本題に移る、と全員は椅子に座るとエルヴィンは

「女型の巨人はアニ・レオンハートだ」

単刀直入にそう言うと、エレンは目を見開いた。


アニ・レオンハート
104期訓練兵団の卒業生。
上位4位にくい込むほどの逸材で彼女だけが憲兵団に入った。


アルミンが女型の巨人遭遇時、フードを摘まれて顔を確認された事。それはつまり、エレンの顔を知っている人物。そして同期にしか分からない「死に急ぎ野郎」に反応した事。

ソニーとビーン殺害事件の時、立体機動装置の検査・・・アニはマルコの立体機動装置をフェイクとして使っていた事。高度な技術を使うので、自分の使い慣れた立体機動装置を使いたかったのだろう。

これは、アルミンがいつもマルコと整備していたからすこしの傷やへこみも覚えていた事で分かったことだ。

そして、マコトが女型の巨人に食べられた時にそのまま殺さなかったこと。
その件についてはリヴァイも疑問に思っていた項目だったらしい。

リヴァイはそれを聞くと

「女型の巨人はマコトを殺せなかった@摎Rがあった・・・」
「はい・・・マコト教官と深く関わっている人物。それはエルヴィン団長やリヴァイ兵長、ハンジ分隊長を除くと僕達104期生。エレンも、なにか思いたある節はない?」
「エレンは女型の巨人と格闘戦をした・・・アニ独特の技術を見たんじゃないの?」

ミカサの言葉にエレンは俯く。図星のようだ。

ふとマコトは、壁外調査前の調整日を思い出した。


教官・・・少し、相手をしてくれませんか?


「あ・・・」
「どうした?」

全員がマコトを見ると

「壁外調査の前の日・・・アニが私の所に来ました」
「あの時の紅茶は・・・」

アニに紅茶を出したのだ。マコトはリヴァイを見て頷くと

「アニは私のいれた紅茶が飲みたくなったらしく、あと・・・格闘技の相手をしました。最初は憲兵団が退屈で体が訛ったからだと思いましたが、眠れないと悩みを打ち明けたり・・・少し様子がおかしかったんです。」
「まさか、マコト教官に別れを言いに来た・・・?」

アルミンは顎に手を当てる。

「私に?」
「アニとまともにやりあえる同期はミカサくらいかマコト教官しか居ませんでした。それにアニは教官とよく喋ってましたよね?」
「・・・え?」
「アニは、あまり自分から話しかけてこなかったですし。話しかけるなという空気を出していつも1人でした」

・・・アニは唯一マコトに心を開いていたのだろう。
マコトは泣きそうになり顔を覆うと

「教官、まだこれは仮定の段階なので確信はありません。」
「そうだ。違えばそれで彼女の疑いが晴れる。」


そう言ってエルヴィンは机に地図を広げたその地図はストヘス区。アニは憲兵団のストヘス区支部所属だ。

護送されるエレンの影武者をジャンに頼んだ。
2人は物凄く嫌そうな顔だったが、作戦なら仕方ない・・・と渋々頷く。

そこでアルミン達がアニをストヘス区の地下へとおびき寄せる。ここなら、巨人化しても抑え込むことが出来るが・・・もし失敗し地上でアニが巨人化をした場合はエレンの出番だ。

第3次まで作戦を練り、念の為ハンジには地上でも捕獲出来るように捕獲器を用意させ待機。

「この作戦に、全てを賭けるぞ」

エルヴィンの言葉に全員は頷いた。
決行日は明後日。エレンと幹部が王都へ招集される日だ。


他の104期調査兵はストヘス区から離れた施設に隔離、私服で立体機動の装備も訓練も禁止で5年以上の兵士で監視する事となった。


「エレン、ミカサ、アルミンはアニを地下へ誘導する。」
「あの、団長」

マコトが手をあげると

「私も、アルミン達に付いてもよろしいですか?」
「駄目だ」

それを却下したのはリヴァイだった。

リヴァイは独特な持ち方でカップを持ち上げると一口飲み、マコトを睨みつけた。

「・・・お前が行って何になる?今度こそ女型の巨人に殺されるかもしれないんだぞ。」
「私は、アニと話したいです」
「話せるならヤツはこんな事しねぇだろうが。」

その言葉にマコトは俯くとリヴァイはため息をついて

「・・・ハッキリ言わねぇと駄目か? お前はロクに戦えない足でまといだ。」
「リヴァイ」

窘めるようにエルヴィンは止め、ミカサは女型の巨人の時は何だったのだ・・・とリヴァイを睨みつける。

「最近やっとまともに立体機動を動かせるようになったやつが前線に出ても即殺だ。お前が巨人化してあの女型の巨人とやりあえるなら話は別だがな」

出来ねぇだろうが、とリヴァイはマコトを見つめマコトはそうですよね・・・と眉を下げる。


しかしアルミンは恐る恐る手を上げると


「いえ、リヴァイ兵長。マコト教官も連れていった方がいいかもしれません」
「あ?」

せっかくマコトを止めれたのに、とリヴァイはアルミンを睨みつけるとアルミンはビクッと怯えながら

「アニはマコト教官に心を開いています。警戒心は緩くなるかと・・・」

・・・また自分を優先してしまった、とリヴァイは自分に向かって舌打ちをするが、ここまできたらわがままを言ってしまおう・・・と、ある決断をした。


「・・・エルヴィン、今ここで辞令を出してもいいか?」
「どういう事だ、リヴァイ」

リヴァイはマコトを見ると


「マコト・マカべ。お前を特別作戦班の副官に任命する」


突然の事にマコトはえっ!と目を見開く。
ハンジのような分隊には必ずモブリットのような副官が付くがリヴァイはそれを必要としなかった。

しかしここでマコトを副官にしようとするのだ。

「で、でも今私の事・・・足でまといだって」
「お前は俺が調教する。」

調教・・・その言葉に全員はまた驚いていると

「話はここからだ、お前がエレン達と行動するのは許可しよう。だが女型の巨人が巨人化してもしなくても、俺の所へ一旦帰還しろ。それが条件だ。 ・・・今回は極めて危険な任務だ。死なない工夫をしろ。」

マコトは内容を反復すると胸に手を当てて

「了解です!」

リヴァイが調査兵団に入って、こんなワガママを言うのも珍しい・・・と新しい一面を見たエルヴィンはやれやれと苦笑いすると


「・・・マコト、彼らを頼む」
「はい。ありがとうございます」


マコトはもう一度、アニと話したかった。


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