38:駐屯地にて

パッパラッパパッパラッパパッパラッパパッパパー



「っ!」

マコトはラッパの音で身体を反射的に起こした。

「あれ・・・」

目の前は見慣れた・・・駐屯地の部屋だった。


「おはようございまーーーす!!」


同室の後輩がベッドから飛び起きてブラインドを開けると、外はまだ薄っすらと明るい状態。後輩たちは慌てて制服に着替えるとぼーっとしているマコトを見て

「マコトさんっ、遅れますよ!」
「へ?ああ、ごめんごめん」

慌ててマコトもベッドから降りると急いで布団を畳み、制服に着替えた。




ぼーっとする頭の中、点呼をして、掃除をして、ご飯を食べて、訓練をする。

いつもの日常だったが、何か違和感がある・・・


「なんだ、これ・・・」


大切な事を、忘れている気がする。



すると突然、肩をポンポンと叩かれて振り向くと


「和田1尉! おはようございます!」


上官でもある和田が立っており慌てて敬礼をするとおはよう、と和田も敬礼を返した。


「マカべ、確か空挺レンジャー教育受けるんだって?」
「あ…はい!北山さんの推薦を受けて」
「そっかそっか、まあマカべなら大丈夫だろ。教官は俺だからな、手加減しねぇぞ」

和田は意地悪そうに笑うと、じゃあなと手を振って去っていった。


「空挺レンジャー…そういえば推薦もらってたっけ」


しかし、なぜこんなにも記憶が曖昧なのか、マコトは首を傾げた。








「ねーマコトさん、大丈夫です?」

昼休憩の食堂。
同室の後輩である菜々子が心配そうにこちらを見ている。

隣に座る同期、澪も確かにと頬杖をつくと

「得意な格闘技訓練も転ぶし、更に得意な狙撃訓練でも全弾外れて・・・体調悪い?」
「いや、そうじゃないよ・・・なんか頭がぼーっとしてさ・・・」
「え、風邪ですか?」
「かもよ?今日は休んだら?」
「んー・・・そうしようかな」
「北山隊長には話しておくんで、休んでくださいね!」

菜々子はそう言ってピースサインをすると、マコトはありがとう。と頷いた。





さっきからこの違和感はなんなのだろう。
特に何も変わらない駐屯地の廊下なのに、居心地が悪い・・・

思わず胸に手をやると何か硬いものが触れて取り出してみた。


「・・・なにこれ?」

カーネリアンの石が埋め込まれたネックレス。
自分は確か、名前付きのドックタグを肌身離さずつけていたはずだが。

太陽の光でキラキラしていてとても美しくマコトは見惚れていた。

「ん?」

これをくれた人は、誰だ?


その瞬間、後ろから肩をガッと掴まれて振り向くとそこには息を切らした赤い髪、翠の瞳を持つ自分と少し面影のある人間が立っていた。

「み、見つけた!」
「あなた・・・」

その女性は駐屯地では不釣り合いな茶色のジャケットに翼の団章を付けており、身体中にベルトを付けた不思議な格好だ。

「ほら!あなたはこっち!」
「え、ちょっと!?私具合悪いんですけど!」
「こんな所にいるからよ!はやくリヴァイの所に帰りなさい!」


リヴァイ・・・?


「リヴァイ・・・?」

そう、名前を呟いた瞬間一気に記憶が巻戻りのように流れ蘇った。
思わず頭を抑え、マコトは女性を見上げると


「ノアさん・・・?」
「うん。 話すのは、初めましてだね」

ノアはそう言うとにっこりと笑った。









突然人気の無くなった駐屯地・・・不気味に思いながらマコトはノアの背中を追った。

オレンジのような赤みがかった、腰まで伸びたジンジャーカラーの髪がふわふわと揺れ、太陽の光でキラキラと輝いている。


「私はリヴァイの前に兵士長をやっていたノア・エヴァンス」
「はい・・・話は聞いた事が。私と似てるって」
「んー確かに。」

芸能人の〇〇系の顔と例えるといいのか、ノアとマコトは完全ではないが雰囲気が似ていた。

「いきなり、あんな世界に行ってびっくりしたでしょ」
「はい・・・皆さんのおかげで慣れましたけど」
「ふふ、みんないい人だからね。リヴァイはどう?ちゃんと兵長やってる?」

その顔は少し心配そうだ。

「・・・はい。口悪いし、潔癖だけど・・・誰よりも部下思いで部下にも恵まれています」
「そう、良かった。 あなたも、随分とリヴァイに愛されてるね」
「えっ?!」

ノアはマコトの首に掛けられたネックレスを見て微笑むと

「ああ、リヴァイも言ったかかもしれないけど、私達そう言う関係じゃなかったから!誤解しないでよね。」
「はい・・・婚約者が居たとか」

そう言うと、ノアは悲しそうに笑って左の薬指を見た。 当時の婚約者がくれた指輪だろうか。


「マコト。あなたが、元の時代帰れる方法を教えます」


突然の事にマコトは肩を震わせると


「繧ヲ繧ゥ繝シ繝ォ 繝槭Μ繧「繧 蜿悶j謌サ縺励※」


マコトはへ?と首を傾げた。
突然ノアがノイズが掛かったように言葉が通じなくなったからだ。

「はい?」
「・・・それは、遘√′謨台ク紋クサ縺ョ譛ォ陬斐□縺九i」
「え?!なんて言ってるの?」
「遘√?逕溘∪繧悟、峨o繧翫→縺励※雋エ譁ケ縺碁∈縺ー繧後◆」
「ちょっと、ふざけないでよ!」

それでもなお言い続けるノアに気味が悪くなり声を張り上げると、ノアは翠の瞳を閉じて頭を下げた。

「本当にごめん、私の力だと伝えられないみたい・・・。 殴られて罵られても仕方の無い事だと思う。」
「なにそれ・・・ははっ、ほんと、許せないですよ・・・めちゃくちゃ怖いんですから」

震えながら、ノアに不満をぶつけるとノアは何も言わず頭を下げたままだ。

「・・・でも、感謝してます」
「え?」
「おかげであんないい人たちや、愛してる人に出会えたから。ノアさん、ありがとう。」


そう言うと、ノアは驚いたがフッと笑い

「あなた、強いね」
「強くないですよ。・・・ねえ、ノアさん。私をこんな所に飛ばしたお詫びとして、取引をしましょう」
「取り引き?」

マコトは手を差し出すと

「これからも、あなたの力を貸してほしい。大事な人を守りたいの。」

ノアは目を見開くとその手を握ると

「・・・分かった。」
「交渉成立ですね。頼みますよ。」
「巨人に関しては任せて」

ふふっ、とお互い笑い合うと「でも、」とマコトは辺りを見渡した。

「そういえば私、巨人に食べられちゃったんですよ」
「ああ・・・絶体絶命だったね、あなた」

あ・・・と、ノアは何かを勘づくと

「いや、大丈夫そうだけど・・・仕方ない。ちょっと手伝ってやるか。ちょっと身体を借りるよ。」
「へ?」

その瞬間、ノアの身体がや駐屯地が透明になっていく。自分も、だんだん透けていく・・・

「じゃあね、マコト。」
「はい!・・・あ、ノアさん!」

ノアはん?と首を傾げると

「リヴァイさん、口が裂けても言えなかったけど、あなたの事を尊敬してたって!」

ノアは目を見開くと泣きそうな笑顔で



「悪くないね」



そう言うと意識が途切れた。


[ 40/106 ]
*前目次次#
しおりを挟む
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -