36:巨人捕獲作戦:前編
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▼20式 5.56mm小銃
(にいまるしき5.56ミリしょうじゅう)

長さ:約780mm〜約850mm
銃身長:330mm
重量:3.5kg
口径:5.56mm×45弾
装填数:30発
有効射程:500m以上


今まで使っていた89式の改良版として開発された小銃。現在はこの20式が制式化され、調達が開始された。

特徴としては伸縮式銃床になった事や、89式に比べて火力や耐久性がいい。

量産単価は維持費・運用費を含めて28万円。
15万丁調達した場合のライフサイクルコストは439億円と見積もられている。










森にいち早く到着したハンジ班。
そこにはエルヴィンの班やハンジ班のように寸前で伝えられた兵士達で構成されていた。

突然の作戦変更…伝えられた兵士は戸惑っている中、全員は簡潔に説明されて返事をすると古株兵士を中心に指示を受けながら準備に取り掛かる。



もともと観光地として賑わいを見せていた巨大樹の森…80mほどまで伸びる木々は鬱蒼としており、整備されていた石畳の1本道はマリア崩壊後は手つかずの状態のため石畳の隙間からは苔や雑草が生え始めていた。

そしてリヴァイ達は無事だろうか、マコトは来た道を振り向き無意識にネックレスに手を掛ける。…そんな不安そうなマコトを見たエルヴィンは、兵士からトランクを受け取るとマコトのもとへと向かった。

「リヴァイが心配か?」
「…はい。まあ、いつものことなんですけどね」
「はは。大丈夫、リヴァイは約束を守ってくれる男さ。それは君も分かっているだろう?」
「はい。…すみません、任務に集中します」

マコトは胸に手を当てて敬礼をすると

「マコト、頼むぞ」
「はい!」

エルヴィン直々に渡された革のトランク。
それは斜めがけ出来るように革紐も着いており持ち運びに便利な作りとなっている。

パチン、と留め具を外せば20式小銃と弾倉が数個用意されていた。



マコトは数個の弾倉を手に取るとマントの下にあるホルスターに弾倉を補充して、1つは本体に差し込んだ。

さすが技巧一の職人、ぴったりはまり特に異常は無さそうだ。



スコープを取り付けて、マコトはアンカーを出して高く登った。



「(スコープも異常なし・・・)」


このようなアンバランスの状態で狙撃する・・・しかも動いている物に撃つのは至難の業技、だが的は大きい。
エレンを狙っている巨人がどんな形をしているのかは分からないが、以前の壁外調査で目潰しした巨人のサイズだったら任務遂行に支障はない。


防塵のゴーグルを掛けて、破片が顔に飛ばないように鼻までフェイスマスクをすると、少し下にいるエルヴィンを見るとこちらと目が合ったので親指を立てればエルヴィンも親指を立ててきた。





ドンドンドン


遠くから太鼓のような、地響きが聞こえてきた。
その音が聞こえるとエルヴィンの指示で全員が配置につき始める。

張り詰めた緊張感…それは上にいるマコトにもひしひしと伝わってきた。この捕獲作戦を失敗すれば、調査兵団の存在やエルヴィン、リヴァイ、ハンジ達幹部勢もどんな処分が下されるか分かったものではない。

遠くから聞こえてくる地響きの音とシンクロするようにマコトの心臓も速く跳ね始めた。


暫くすると、キーンという音響弾の音が聞こえてきた。リヴァイからの合図だ。その瞬間空気が変わり一斉に紐を持つ手に力を入れる。


「くるよ!」


ハンジの声に、マコトは小銃を構える。この巨大樹の森の枝はマコトの身長で寝そべっても丁度いいくらいの太さだ。

スコープを覗くと、数百メートル先にリヴァイを率いる特別作戦班、エレンがこちらに向かって走ってきた。


「マコト、見えるか?!」


地上からエルヴィンの声が聞こえてきた。

「特別作戦班、確認しました!巨人も後方に…」

後方には・・・

「速い・・・!女性型の巨人がこちらに向かってきています!もの凄い速さです!」

女性の体格をした巨人が物凄い勢いでこちらに迫っていた。


追いついた兵士が全力で女型の巨人の足止めはするが、ハエを叩き落とす要領で兵士がどんどん木に叩きつけられたり握りつぶされていくのをスコープ越しで見て目を逸らしそうになった。

しかしここで自分が一瞬でも足止めをしなければリヴァイ達は間違いなく追いつかれ、捕獲器も外して作戦が失敗に終わる。


その迫力に押されそうになったがマコトは射程距離までギリギリまで粘る。

「目標加速します!!」
「走れ!このまま逃げ切る!」

リヴァイの叫ぶような声が聞こえる。その瞬間、スコープ越しに巨人と目が合い、金髪の青い目がマコトを捉えると驚いたように瞳孔を開いた。



今だ、マコトは頬付けに頬を押し当て、息を止めると引き金を引くとパンッ!と乾いた音が響き、リヴァイ班が上を見る。


女型の巨人は片目を潰され一瞬だが動きが止まり、立て続けにマコトはもう片目を狙って引き金を引いた。女型の巨人は弾の反動で怯み、顔をのけ反らせると一瞬走りが停滞した。


その瞬間を、エルヴィンは見逃さなかった。


「撃てェ!!」


エルヴィンの掛け声と共にマシンガンの様に大きな音を立てながら捕獲のアンカーが四方八方に飛び出した。地面や巨大樹を揺らすほどの衝撃が襲い、マコトは飛来物から身を守るため幹にしがみついた。

音は止んで、煙が晴れる中現れたのは身体中にアンカーを刺され拘束された女型の巨人の姿だった。


「はぁ、はぁ・・・やった」


作戦は成功だ。

小銃を抱きしめて、マコトはズルズルと幹にもたれ掛かり座り込んだ。






下でハンジが狂喜乱舞している中、マコトはエルヴィンの所へと立体機動で飛んでいく。
するとリヴァイも既に合流していたので2人に敬礼をした。

「マコト、よくやってくれた」
「的が大きくて助かりました。」
「ああ。おかげでこいつの動きを一瞬だけ止めることが出来た。捕獲できたが…問題はここからだ。あの巨人の中から犯人を引きずり出さなければ、作戦は成功したとは言えないな」
「中でションベン漏らしてねぇといいけどな・・・」


リヴァイはそうつぶやくと、女型の巨人を睨みつけた。


うなじを守るように拘束された女型の巨人。
この巨人を捕獲するために、沢山の人間が犠牲となった。

スコープ越しに見えた仲間の死を思い出し、マコトは唇を噛む。


「そろそろやるか」
「待てリヴァイ、念のためだ。予備も全部使え!」

リヴァイはブレードを抜きうなじを切ろうとするがエルヴィンが念の為にと第2、第3、予備も全て打ち込んだ。

脳が揺れるほどの物凄い音が響き、思わずマコトは耳を塞ぐ。ここまでされたら動けないだろう。小銃を身体に掛けると指示が来るまで待機した。



.
.
.



リヴァイとミケがブレードをうなじに向かって振り下ろした、が手を硬質化させているようで刃が全て折れてしまう。
マコトの小銃でもそれは壊れずエルヴィンは仕方がない、と発破の用意を指示した。



すると、女型の巨人に動きがあった。

口を開けた瞬間、悲鳴を上げたのだ。
複数回行われた悲鳴の後、全員はあっけに取られて耳から手を離した。



「この鳴き声は・・・」


104期の教官になった当初、歓迎の交流会でサシャとの会話を思い出した。サシャは狩猟を主にしているダウパー村出身の少女だ。そして、マコトとの挨拶で芋を分けてくれた少女・・・


パンを食べながら狩猟について語られたのを思い出した。


「いいですか教官、狩りをする時は、最後ほど危険なんです!追い詰められた動物は最後捨て身で悲鳴を上げるんですよ!うおおーって!」




捨て身の悲鳴、マコトはサシャの言葉が突然パッと頭に飛び込んできた。




まさか


まずい、マコトは顔を上げてエルヴィンとリヴァイに


「団長、兵長!危険です!離れてください!!」

なんだ?と言う2人は首を傾げたがミケがやってきた。

「多数の巨人を確認!」
「・・・どの方角からだ」
「全方位だ・・・!」

それを聞くとリヴァイはマコトを見ると

「マコト、お前は俺の班と合流だ。俺は直ぐに行くと部下に伝えろ!あいつらはこの先にいる!」
「は、はい!」

マコトは小銃を仕舞うとアンカーを出して森の先へと急いだ。



***



「ペトラ!」
「マコト!」

森の先で合流をするとエレンもほっとした表情になった。

「リヴァイ兵長は後で合流するそうです。」
「了解」
「奥で一体何があったんだ?」

エルドの質問にマコトは分からないと首を振る。

「女型の巨人が叫んだら・・・一気に巨人が寄ってきて、それからは私も見てないんです」


パンッ

発砲音が聞こえ、全員が顔を上げた。木々の隙間から見える青の信煙弾…帰還の信号だ。

その後すぐに別の場所で緑の信煙弾が打ち上がったのでグンタはそれを見ると


「リヴァイ兵長かもしれない。合流しよう」


全員はガスの補給を終えると、失禁した話で盛り上っている。途中参加のマコトは首を傾げると隣にを飛んでいたエレンを見て

「失禁?エレン、漏らしたの?」
「ち、違いますよ!ペトラさんが初陣の時空中で・・・」
「おいこらエレン!勝手に話盛るな!」

真っ赤になって怒るペトラに全員は笑い、そんな光景をマコトも笑いながら見守っていると奥の方からやってきた人間が居た。

全員はリヴァイかと思ったが、飛び方の癖が違う。

グンタは相手を睨みつけると、

「リヴァイ兵長・・・?違う、誰だ!?」

その瞬間、誰か≠ェこちらに急接近するとブレードが振り下ろされてグンタは切りつけられた。


一瞬の出来事に全員が血しぶきを上げるグンタを見つめることしかできない。
ぶらん、と息絶えアンカーが刺さったまま逆さまになる光景を見ると全員が我に返った

「グンタ!!」
「グンタさん!大丈夫ですか?!」
「くそっ、エレン!逃げるぞ!」

エレンがグンタに駆け寄るが、オルオが急いでエレンの襟を掴むとエルヴィンの居る本部へと合流するため立体機動を操作する。



「お前は誰だ!」



ペトラがそう叫んだ瞬間、ドンッ!と雷のような強い光が現れた。




ーこの光は、見た事がある。


眩しさにマコトは無理矢理目を開いた瞬間、煙の中から女型の巨人が迫ってきていた。その顔を見た瞬間、マコトはゾッと鳥肌が立ち言葉を失う。


「め、女型の巨人っ・・・?!さっき捕まえたはずじゃ」
「どうなってるんだ!」
「とにかく、逃げ切る!」
「エレンを守れ!」

リヴァイ班はエレンを先頭にひたすら森を進む。
ペトラは飛びながらマコトの腕を掴むと

「ほらマコト!あなたも前に行くのよ!」
「ぺ、ペトラッ」
「くっ・・・追いつかれるぞ!」

全員は顔を見合わせると、エルド、オルオ、ペトラはマコトを見つめた。

「マコト、エレンを連れて本部へ駆け抜けろ!」
「ここは俺達がくいとめる!」
「後ろは見ないで!」

そう言うと、マコトとエレンも首を振る。

「そんな、俺も、俺も戦います!」
「私も・・・時間稼ぎくらいにはなるはずです!」
「それは駄目だ!」
「エレン、マコト、私たちが信じられない?」

ペトラの悲しそうな目がマコトとエレンを見つめる。

「(そうだ・・・この人たちはリヴァイさんが指名した精鋭・・・)」

この世界に来た時、初めて立体機動を見た時の彼らの動きは今でも覚えている。
阿吽の呼吸で行われる巨人の討伐・・・初心者のマコトでもレベルが高いと思った。

厳しいリヴァイの訓練に食いつき、今までも死線をくぐり抜けてきたではないか。
彼らなら、この巨人を倒せれるかもしれない。

マコトは頷くと

「・・・了解しました。皆さんは、リヴァイさんの自慢の部下ですもんね。」
「そうだ!俺達はリヴァイ兵長指名の精鋭班だ!」
「あんな巨人に負けるかよ!」

ペトラはマコトの手をギュッと握って、

「マコト、帰ったらまた買い物しよう!」

ペトラの笑顔に、マコトも頷いて笑った。
こんな危険な状態なのに全員は笑顔で、エレンも涙を耐えるように目を閉じると


「皆さん・・・ご武運を!」


3人はエレンとマコトを見送ると、特別作戦班はブレードを抜いた。



まずはペトラとオルオで両目を斬り付ける。
これで1分間は視界が暗いままのはずだ・・・それを知ってか女型の巨人は木を背後にまわし両手を上げてうなじを守った。

グンタは脇を狙うぞ、とジェスチャーをすると2人は頷き3人で四方八方から女型の巨人の脇の筋肉を狙い、ついにだらりと腕を落とした。

エレンとマコトは思わず振り向いてしまい3人の連携を見て呆気に取られ、マコトもその技術に圧巻される。

これなら、女型の巨人を倒せる・・・

首の筋肉さえ削いでしまえば、うなじがき出しになる。
勝てる、そう確信したエルドがブレードを首に狙いを定めた瞬間、女型の巨人はエルドを口で噛みちぎると、ペッと吐き出した。


それは一瞬の出来事で全員が呆気に取られた。


エルドの上半身が転がり落ちるのを見ると、

「エルド!!」
「馬鹿な、まだ目は・・・」

女型の巨人は、片目だけを優先して修復していた。
片目の女型の巨人と目を合わせたペトラはそんな馬鹿な、と想定外の出来事に混乱してしまい立体機動の操作が出来なくなってしまった。

この状況はまずい、オルオは放心状態のペトラを睨むと


「ペトラッ!体制を立て直せ!」
「・・・馬鹿な、片目だけ修復するなんて・・・だって、あと30秒もっ・・・」
「ペトラ!おい!ペトラ!・・・っ早くしろペトラアァ!」


オルオの悲痛な叫びは届かずペトラはそのまま女型の巨人に踏み潰され、


「ペ、トラ・・・うそ・・・」


マコトは目の前が真っ暗になった。

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