「マコト、そんなんじゃ巨人に追いつかれるよ!」
「はい!」
兵舎から少し離れた訓練場にある森。
ナナバとマンツーマンの指導が入って5日目になる。
制限時間内にこの訓練場にある巨人の模型のうなじを切るというトレーニングなのだが、難しくなかなか上手くいかない。
もっと早く、と思ってもガスを吹かしすぎては消耗してしまう。
息切れをしながらナナバの前に着地すると、さすがのマコトでも地面に膝を着いてしまった。
「動きは悪く無いよ。そうだなぁ・・・マコト、ガスを一瞬だけ吹かして慣性を利用した方がガスの消費を抑えられるよ」
「はぁ、な、なるほど・・・」
「ほら、水飲みな」
「あ、ありがとうございましゅ・・・」
思わず噛んでしまいナナバは笑うと
「おーい!」
そんな声が聞こえて顔を上げると、ハンジが奇行種のように両手を上げてこちらへ走ってきていた。
「やあハンジ」
「2人ともお疲れ様!マコトの立体機動はどうだい?」
「動きはいい感じだよ。さっきよりタイムが縮んでる」
「縮みましたか?!良かった・・・」
3人でベンチに座ると、マコトは安心してぐったりしたのでハンジとナナバは笑った。
そう言えば・・・とナナバはマコトを見ると肩を密着させてニヤリと笑う。
「ねえ、リヴァイとは付き合ってるの?」
「えっ?!」
水筒から口を離して挙動不審になるとハンジも片方からマコトに肩を密着させてマコトを挟むと、
「そのまさかだよ、ナナバ」
「やっぱりか」
「ナナバさん、知ってたんですか?」
熱くなる頬を手の甲で冷やすとナナバは笑って
「だって、会議中のリヴァイって大体無口だけどあの日に限ってはよく喋ってたからね」
「意外と分かりやすい男だよね。まああの中で気づいてる人間が居たらだけど。男達って鈍いから」
「あのリヴァイがねぇ・・・。アイツはモテるからなぁ」
そ言って水を飲むナナバにマコトは暗い顔をすると
「やっぱり、リヴァイさん・・・モテるんですね」
「まあね・・・顔は良いし人類最強だし。」
「そうなると女性の方から呼び出されてリヴァイ兵長とどういう関係よ!?≠チて修羅場になるんじゃ・・・今の所大丈夫ですけど」
マコトが顔面蒼白で震えると、ハンジとナナバは大爆笑した。
「いやいやマコト、確かにそう思ってる兵士はいるよ、でも・・・」
「マコトと殴り合いしたらどっちが勝つかなんて分かってるだろ?」
「・・・ああ、勝てる自信はあります」
「それにリヴァイはマコトの事しか興味無いからね。安心しなよ」
「マコトの話してる時とかずーっとマコトの事心配してチラチラ見てたからね!」
マコトは恥ずかしさで俯き、ナナバは熱いな〜とマコトの頬をぐりぐり突っつくとよし!と立ち上がって
「ハンジ、マコト!今日は飲みに行くよ!」
「いいねー!いこいこ!」
「わーい!行きたいです!」
そう言うとマコト達は訓練を切り上げて着替えて飲み屋へと向かった。
*
夜・・・リヴァイは単独で兵舎へと帰ってきていた。
着替えの取り替えやら、エルヴィンに報告書を出すため・・・ついでにマコトの顔も見ていこうと思っていたのだが
「あ、リヴァイしゃんおかえなしゃーい!」
「マコト、言えてないよ」
「リヴァイ・・・すまない。マコト、お酒弱かったんだね」
2人に連れられてマコトは帰ってきた。
ハンジとナナバも十分に酔っているがマコトの方が終始ニコニコしている。
そんなマコトを見てリヴァイは
「・・・俺も弱いのは知らなかった」
「え?そうなの?」
「彼女の新しい一面発見だねぇ」
「あ?ハンジ、喋ったのか」
「会議の時に女の勘が働いたんだよ」
「あの時のリヴァイ熱かったねぇ!」
そう言うと2人は顔を合わせてわははは!と大笑い始める。・・・2人も大概酔っているそうだ。
「はー・・・私とハンジは二次会やるから、ほら。よろしくね。」
「襲っちゃダメだぞ〜リヴァイー」
キャー破廉恥!と言いながらハンジとナナバは肩を組んで部屋へと帰ってしまった。
押し付けられたマコトからはお酒の匂いがして眉をしかめたが
「リヴァイさん、もう寝よ〜」
「分かったから・・・ほら歩け」
首に巻きついてくるマコトを抱えると部屋に押し込んだのだった。
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