30:君には何が見える



「うううそだあああああああ!!!!」




旧調査兵団本部にハンジの大絶叫が響いた。
その絶叫にリヴァイは目が覚め、上体を起こす。

あれから随分とマコトと無理をし合ったのでハンジの絶叫でもマコトは夢の中だ。

そんなマコトの頭を撫で、上は裸でズボンだけ履くと、ハンジがバタバタと走ってくる音が聞こえたので先にドアを開けてマコトが見えないようにした。

「朝からうるせぇぞクソメガネ」
「あああリヴァイ・・・!あ、マコトも一緒?お邪魔だった?今から何回戦目むむむー!」
「うるせぇ。 ・・・で、何があった。エレンか?」

そう聞くとハンジは突然大号泣し、さすがのマコトも何事だと起きたが自分が裸なので顔を赤くしてシーツにくるまりながらこっそりと死角へ行き着替え始める。

「ソニーとビーンがっ・・・殺された・・・!!」
「・・・なんだと?」

マコトもそれ聞いて「え?」と着替えを止めてしまった。




***



ソニーとビーン・・・彼らは巨人だ。
先日のトロスト区襲撃の際捕獲した貴重な被検体・・・ハンジはとても可愛がり殺さない程度に色々な実験を行った。

暗闇になると何時間後に眠るのか、うなじ以外の弱点があるのか・・・様々な実験が行われていたのだが翌朝何者かにその2体が殺られてしまった。
気づいた頃には犯人は立体機動で逃げた後でもう遠くに行ってしまっていたらしい。


急いで馬を走らせハンジの巨人研究所へ向かうと確かにソニーとビーンは蒸発して骨が剥き出しの状態だった。

それを見たハンジは膝を着いて大号泣をし、マコトはそんなハンジの背中を撫で続ける。
ハンカチでハンジの涙や鼻水を拭いながら犯人は何故こんなことを?と思考をめぐらせた。

巨人を憎んでいた、個人的な恨みなのか・・・

「うっ・・・ソニー・・・ビーン・・・ううっ」
「ハンジさん・・・」

なんと声を掛ければ・・・すると、肩を掴まれて振り向くとそこにはエルヴィンが立っており後ろにはリヴァイが控えていた。

「マコト、君には何が見える?敵はなんだと思う?」

突然の質問・・・マコトは戸惑ってリヴァイを見るとリヴァイも思ったことを言えという顔で小さく頷く。


「巨人を恨んでいたのなら殺すのはおかしいと思います。だって、巨人を根絶やしにするヒントになりうる被検体でしたので個人的な恨みは無いかと」
「・・・続けて」

この先・・・マコトは口元を覆って周りから読唇されないようにするとハンジが絶叫する中エルヴィンに聞こえるように耳に近づけると

「・・・巨人の正体がばれたくない?この中に、エレンのように人間から巨人になる人間が居るとか・・・?でも、それはどこから来たんですか? 外からは来られないはず。…だって、壁の外の人間は、食い尽くされたんですよね?」


冷や汗が流れる。
恐る恐るエルヴィンを見上げると彼は骨になった巨人を見つめている。マコトの話を聞いて目を閉じると

「やはり、君は頭がよくキレる」

ぽんぽんと肩を叩くと背中を向けてエレンの所へ向かった。



・・・気づけば、ハンジはいつの間にかもう泣き止んでおりその表情は伺えなかった。




***




「マコト」

久しぶりの自室でリヴァイは紅茶を飲んでいると座れ、とソファをぽんぽん叩いた。

隣に座るとリヴァイは手を握りそういえば、とマコトを見つめた。


「話す機会が無かったが、トロスト区の時・・・お前、巨人と戦ったのか?」
「え?あ・・・うん。ごめんなさい、無茶して」
「責めてるわけじゃない。安心しろ。・・・前にお前の立体機動を見たが怪我するレベルで下手くそだった」
「ぐっ!」

ぶら下がりの適正訓練は試しにやらせてもらった事があるが、問題はなかった・・・が、マコトは立体機動が苦手らしい。

「なのに何で、お前は巨人を倒せた?」
「えっと・・・私が見た夢覚えてる?」
「ノアが出てくるやつか?」

そう聞かれてマコトは頷く。
トロスト区襲撃の時もそれが現れてノアの手を取った後、驚くほど動けるようになったのだ。

「・・・じゃあ、立体機動は出来るようになったのか?」
「あれからいじってないからなあ・・・でもあれはノアさんのおかげだったし、自信は無いかな」
「ノアが出てくるのも分からん・・・何でだ」

リヴァイは眉を寄せて顎に手を当てる。
確かに、なぜノアはマコトにだけ出てくるのか・・・

「もしかしたら、私の前世・・・ノアさんだったんじゃ・・・」
「前世?」

聞き慣れない言葉にリヴァイは首を傾げた。

「私も全然詳しくないけど、私が生まれる前の世界を生きた自分・・・て言えばいいのかな。小さい子供とかは前世の記憶を覚えてるって言うよ。前はどんな人間だったとか、どうやって死んだとか・・・だんだん生きている内に記憶が塗り替えられちゃうから私くらいの歳になると忘れてる人が大半」
「そうか・・・現実的ではないがそのノアの記憶が出るって事はお前のその考えは間違えてないかもな。」
「今度ハンジさんからの意見も聞いてみる?」
「そうだな。」

しばらくして沈黙すると

「・・・で、リヴァイさんなんでいきなりトロスト区の話を?」

話題が逸れてしまい、リヴァイもすっかり忘れていたらしく「ああ」と何かを思い出したかのように頷くとまたマコトの手を握り

「・・・何となくだ」
「?」

すこし意味深だったがマコトはあまり追求しない事にした。






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