27:ドッキリ
次の日ー
エルヴィンからの手紙を預かったマコトは地図の場所を頼りに旧調査兵団本部へ来ていた。
その建物はお城のようで、マコトは建物を眺めながら驚いた。

「このデカさは確かに終わりそうにないね・・・」

馬を降りて入口へいくと、エルドとグンタがやって来ておーい!と手を振ってくれたのでマコトも手を振ると2人が全力でこちらに向かって走ってきた。

「マコト、隠れろ!」
「え?!」
「馬は俺が預る!」
「え?!ありがとうございます?」

エルドが馬を連れていき、グンタに本部裏に連れていかれるとペトラとオルオが居た。

「マコト、よく来たね!」
「ふふ、応援要請貰ったので、どこ掃除すればいいんです?」
「リヴァイ兵長には内緒なんだ」
「・・・えぇ?」

マコトは顔を青くすると4人揃うとニヤッと笑い

「ドッキリを仕掛けるんだ」
「私たち、日頃兵長にはお世話になってるからね」
「日頃の感謝として、マコトをプレゼントだ」

そう聞いてマコトは顔を赤くすると

「みみみみなさんそんな・・・掃除は?!」
「そんなのとうの昔に終わってるさ」
「特別作戦班の掃除スピードを舐めちゃいけないよ。」
「ごめんねマコト、呼ぶ口実が無くて・・・」
「あ、ああ・・・なるほど・・・。でも何でそこまでして?」

そう聞くと、子供にはまだ早い!とエレンには聞こえないようにエルドが小声で

「俺達はリヴァイ兵長の春到来を喜んでるんだ!」
「私たちは見守り隊よ!」
「頼むよ、マコト!」
「兵長を喜ばせてやってくれ!」

付き合っている・・・そんな核心は言わなかったがマコトは4人をを見て微笑むと、


「ありがとうございます・・・この作戦、必ず成功させてみせましょう!」




こうして、リヴァイドッキリ作戦が始まった。




拾ってきた木の枝で地面に簡易的な本部の見取り図を書いて、エルドが歪な顔のリヴァイを描くと、

「リヴァイ兵長はこの時間は部屋に居る。マコトは別棟の地下牢で待機。で、俺達が騒ぐからそこに兵長をおびき寄せる」
「ちなみに昨日、怖い話をする時があってな・・・ちょっと兵長に伏線を張っておいた」
「準備万端ですね・・・」

しかし楽しそうだなリヴァイ班、とマコトは思ったが口には出さず作戦決行となった。



その頃、リヴァイはエレン監視に対する報告書を書いたり掃除道具の請求書を作っていた。

ふう、と息を吐いて窓を見る。

何をしていてもマコトが頭から離れず、抜け出して会いに行ってしまいたいとさえ思うが、他の兵団相手にゴリ押しでエレンを手に入れたので任務放棄は出来ない。

我ながら相当惚れ込んでしまっている。と前髪をかきあげ椅子に凭れた。

今すぐにでも会いに行ける口実があればいいのだが・・・天井の石を眺めていると、


「うあああああ!!!」
「きゃああああ!!」
「出たぞぉぉぉぉ!」
「舌噛んだあああァ!」
「ああああああ!!」
「・・・あ?」

部下達とエレンの絶叫が聞こえてリヴァイは舌打ちをすると椅子から立ち上がり部屋を出ると、全員が青ざめた顔をしていた。


「なんだ、全員揃ってクソでもブチ撒けたか?」
「へ、兵長・・・」
「昨日話した怖い話覚えてますか・・・?」
「ち、地下牢に・・・!」

この旧調査兵団本部に志半ばで亡くなった兵士の幽霊が出るという話・・・リヴァイはあまりそう言う類を信じていないため鼻で笑うと

「・・・ほお、出たのか。」
「ち、地下牢に・・・」
「見に行ってやる。居なかったら全員いちから掃除だ。」

リヴァイは涼しい顔でエレンが使っている所とは別の別棟にある地下牢に向かい、全員はリヴァイの後ろで顔を見合わせて怖がるふりをしてあとを追いかける。

ヒヤリとする地下牢の階段を降りて、リヴァイは牢屋に着くと、本当に髪の長い女が背中を向けて立っており流石のリヴァイも足を止めた。

「おい、お前ら本当に・・・」

居るじゃねえか、と言おうとした瞬間

「「「「「ドッキリ大成功ー!!」」」」」
「いえーい!」
「・・・あぁ?」

5人が大声で喜び、幽霊と言われた女が「いえーい!」とこちらを振り向くと

「マコト・・・?」

驚いたのか怒っているのか・・・硬直しているリヴァイを見て全員はまずい、と思い

「兵長すみません!」
「俺達が兵長を喜ばせようと思って・・・!」
「マコトをプレゼントしようと!」
「削がないでください!」
「ひいぃ・・・」

全員汗だくで、エレンはまた躾られる頭を抱えている。さすがのマコトもヤバいと思い要件を伝えようと鞄からエルヴィンからの手紙を出すと

「え、えっと!エルヴィン団長からの遣いで来まし、た・・・怒ってます?」

尻すぼみで要件を伝え、えへへ・・・と愛想笑いすると突然リヴァイは檻の扉を閉め、後ろで感動の再会どころではない2人の空気を見守っていた全員を睨みつけると

「お前ら、今からこの幽霊の首を削ぐから上に逃げてろ」
「は、はい!」
「お願いします!」
「ごゆっくり!」
「え、マコト教官駆逐されるんですか?!」
「うるせぇ新人!」

オルオがエレンの首根っこを掴み、ペトラはマコトを見て心臓を捧げる敬礼をする。

2人だけになった空間でリヴァイは壁にジリジリと追い込むと

「よぉ、久しぶりだな。マコトよ」
「ははは、久しぶりです、リヴァイ兵長」

そのままリヴァイは壁に手を着いて閉じ込めるとマコトの顔を見る。普通なら胸キュンなシーンなのだがそれどころでは無い。

削がれると思ったがリヴァイはそのままマコトを抱き締めると

「・・・さすがに6日離れるときついな。しかし驚いた」
「み、皆を怒らないでね・・・リヴァイさんにサプライズしたかったみたいだから」
「分かった。その代わりお前が埋め合わせしろ」
「え、埋め合わせとは?」

すっとぼけると、ロウソクだけの薄暗い部屋でリヴァイは悪そうに笑うと

「夜は覚悟しておけ」
「ひぃ・・・わ、分かりました。まずはこれで許して?」
「は?」

そう言うとマコトはリヴァイの肩に手を置くと少し背伸びしてリヴァイにキスをした。
暫くして唇を離そうとしたが、リヴァイの手が後頭部に回るとまた引き寄せられ、ぬるりとリヴァイの舌が入ってきた。

「はっ・・・」
「ん、ふっ・・・んん」

力が抜けてきたが、リヴァイがマコトを壁に押し付け脚の間に自身の脚を入れてきたので座り込むことが出来ない。
しばらく堪能したリヴァイは唇を離すと

「まずはこれで許してやる」
「はぁ・・・はぁ・・・」
「お前から仕掛けてきたんだろうが。足りないか?」

リヴァイはまた顎に手をかけるとマコトは首を振ってリヴァイに抱きついた。

「も、もう大丈夫!あ、あとは夜に!」
「はっ、随分と積極的だな。嫌いじゃない。」

頭を撫で、リヴァイはマコトの手を取って地下牢を出た。







案外普通に出てきた2人にリヴァイ班はホッとするがリヴァイは全員を睨んでまた笑うと

「よぉ、お前ら・・・さっきは楽しかったか?」
「ご、ごめんなさい兵長・・・!」

しかしリヴァイは通常の顔に戻ると

「お前ら、今日はもう自由時間だ。勤務終了。」
「え?」
「何でです?」
「まだ昼ですけど」

リヴァイは背中を向けると

「・・・さっきの礼だ。」

そう言ってマコトの背中を押して部屋を出ていく。静まり返った部屋で、5人はほっと胸をなでおろした。


リヴァイの部屋へ行くと、マコトはエルヴィンからの手紙を渡すと封蝋を外して手紙を開いた。

「・・・はぁ?」

突然リヴァイはそんな声を出すと、マコトを見上げた。

何だろう?と首を傾げていると

「マコト、お前エルヴィンから調査兵団に入れって言われたのか?」
「う、うん・・・エレンが巨人化したら闘うのが格闘術しか手段が無いから精度を上げて欲しいって」
「なるほど。だから荷物があったのか・・・じゃあ、早速明日からよろしく頼む」
「はい!」

リヴァイは手紙を折り畳むと引き出しに仕舞い立ち上がると

「ここまで来るのに疲れただろう、少し休め。」

そう言ってリヴァイはベットに座りぽんぽんと隣を叩くとマコトは座り肩に頭を預けた。






***





その日の夜・・・

「やっ、も、リヴァイ兵長っ・・・私もう、ムリですっ」
「何だマコト。夜は覚えてろと言ったはずだ」

嫌がるマコトの腕をリヴァイは掴むと、












無理矢理椅子に座り直させた。









食堂に集められたリヴァイとリヴァイ班、エレン、マコトはテーブルに集まり怪談話をしていた。
ちなみにロウソクが1本しか灯されておらず、部屋は薄暗く全員真顔だ。

グンタが怪談話に詳しいらしく、最初はリヴァイとマコト、急接近大作戦★≠フ布石として用意されたイベントであった。


怖がるマコトをリヴァイの隣に座らせて抱きつかせてやろう、そんなベタな作戦なのだがリヴァイが意外とノリノリでリヴァイ班は戸惑っている・・・しかし、作戦は成功だ。

マコトは怖がって耳を塞ぐがリヴァイが腕を掴んでそれをさせていない。
そんなスキンシップを全員が話を聞きながら「いいぞ兵長、もっとやれ・・・!」と心の中で呟いている。

・・・エレンに関しては純粋に怖がりオルオに縋っている。

「じゃあ、俺からも1つ話そうか」

リヴァイは悪そうに笑うと全員が「え?」と声を揃えた。

それは想定外だ。


リヴァイは普段と変わらない真顔で、紅茶をひと口飲むと

「これは、俺が体験した話だが・・・当時俺はまだひよっこで、まだ数回目の壁外調査に行った頃の話だ。 当時は今ほどは生存率が低く、死んでいく兵士が多かった。
俺は目の前で女の兵士が巨人に食われたのが間に合わなかった・・・倒した後、その女は下半身を食われ上半身だけの状態で地面に落ちた」

それだけでも想像すると怖い・・・全員は真剣にその話に耳を傾ける。

「すると女は俺にもっと早く来てくれれば≠ニ言って息を引き取った。 申し訳なく思って俺は暫くその顔が離れなかったな。 ・・・それから数日後、仕事が夜中まで伸びて俺はロウソクを持って廊下を歩いていた。すると、ズル、ズル・・・と何か引きずる音が後ろから聞こえた。」

まさか・・・と全員は「ひっ」と声を出すと

「その女が、俺の目の前に出て来て上半身だけの状態でほふく前進で追いかけてきた。」



ドンッ!



「あああああああ!!!!」
「きゃあああああ!」
「やめてええええ!」

その瞬間リヴァイが見えないように机の裏を殴り、大きな音を立てると全員が跳ね上がり、オルオは舌を噛んだ。


「・・・が、よく見るとそれはハンジだった。引きこもりすぎて空腹で歩けなくなり、廊下をほふく前進で歩いていただけだった。・・・以上だ」
「な、なんだハンジさんか・・・」

マコトはリヴァイの隣でほっと息を吐くと、隣にいたペトラがこっそりとマコトの耳にフッと息を吐くと

「うあああああ!!!」
「ぐあっ!」

女らしくない悲鳴だったが、リヴァイにタックルしたのでグンタ、エルド、オルオは机の下でナイスだペトラ!と親指を立てたのだった。

[ 29/106 ]
*前目次次#
しおりを挟む
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -