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自衛隊あるある
・私服で迷彩は着たくない
・行進の訓練もあるせいか、同期や同僚と話しながら歩くと自然と足並みが揃ってしまう。
・友人や恋人に時間を聞かれると「ふたまるさんまる」(20:30)と自衛隊風に伝えてしまう時がある。
私服から制服に着替え、馬車に揺られて到着した審議所。
ここに来たのは数ヶ月前だ。法廷で裁かれる立場だったが、今回は違う。 フレンもあの地下で監禁されているのだろう・・・マコトは昨晩の恐怖が蘇ってきて俯くと
「ほら、もたもたすんな。行くぞ」
顔を上げるとリヴァイが馬車を先に降りて手を差し出していた。
「ありがとう・・・」
「顔色が良くないな。大丈夫か?」
エルヴィンも心配そうに眉を寄せると、マコトは大丈夫ですと頷く。
「どういう結果であれ、君の判断に任せるよ」
マコトは頷くと、深呼吸をして審議所へ足を踏み入れた。
あの時と同じようにダリスは中央の席に座り今回の件について頭を悩ませている。
何せ初めてのケースであり、こればっかりは状況によって女性の教官採用は無くなってしまうかもしれない・・・そうなればマコトは行き場を無くしてしまう。
ダリスは袖をまくりながら僅かにマコトに笑みを向けると
「マコト、久しぶりだな。 ちょっと見ないうちに随分と顔つきも変わったか?」
「・・・ありがとうございます。」
突然ダリスの雑談が始まり、手を後ろに組んで待機していたマコトは少し驚いた。
ダリスは片隅に寄せられた書類を手繰り寄せてメガネをクイッと上げ、パラパラと報告書を捲りながら事件の経緯が話された。
当時鍵を掛けたはずなのにフレンが侵入出来たのは何故か?という質問に彼の実家が鍵屋だということが判明し、幼少期から遊びで鍵を開けるという事をしていたらしい。
ダリスなるほど、ともう1枚紙をめくると
「マコト。 君の評価を読ませてもらったが・・・教官として申し分ないし、訓練兵からの信頼も厚い。故に今回のような件が起きてしまったんだが・・・。再確認だが、君とフレンは男女の関係では無いのだね?」
「違います」
キッパリ言い張るとダリスももちろん分かっては居るのでだろうね、と頷くとフレンを見た。
フレンはずっと下を向いており言葉を発していない。
「・・・で、フレン。君はマコトに恋愛感情はあったのかい」
しばらくの沈黙の後
「はい」
そう返事が来たのでマコトは肩を揺らした。隣でリヴァイがこちらをチラッと見たが、また前を向く。
フレンは力なのない声で説明をした。
「マコト教官は、どの訓練兵にも分け隔てなく厳しく優しい方です。当時対人格闘技が苦手だった俺は思い切って声をかけました。 違う訓練兵団なのに嫌な顔をせず型を全て直してくれて・・・毎月教官に会うのが楽しみでした。そして気づいたら教官に恋愛感情を抱いてしまい・・・今回の件、決して許される事ではございません」
するとフレンはマコトを見つめると深々と頭を下げると
「大変申し訳ありませんでした」
しばらくの沈黙の後ダリスはふむ、と書類をめくる。
「・・・では、彼の判決を」
「すみません総統。よろしいでしょうか?」
マコトは手を挙げた。
「何だ?」
「彼は、とても優秀な訓練兵です。立体機動術、座学。 残念ながら人類には惜しい人材だと思います」
「ほう。して、どうする?」
「開拓地ではなく、心臓を捧げる事で罪を償って頂きたいです。調査兵団は、万年人手不足。人類のために身体を張って頂きたい。・・・団長、いかがでしょうか?」
あの時のマコトの提案はこれだ。
提案を聞いていなかったリヴァイは「は?」という顔でマコトとエルヴィンを睨み、マコトはまっすぐとフレンを見つめている。
「・・・確かに我々調査兵団は常に人手不足、彼はそれなりの成績があるのでこのまま開拓地へ送るのは勿体ないかと。私も彼には心臓を捧げる事で罪を償うのがよろしいかと」
エルヴィンの回答を聞いたリヴァイは何も喋らずただ目を閉じて腕を組んでいる。そんな姿を見たダリスは
「リヴァイはどう思う?」
「・・・こいつがした事は死んでも償いきれねぇ。俺は速攻開拓地にぶち込みたいが・・・マコトの選択と意志を尊重する。それに、案は悪くねぇ。最悪巨人どもの囮にでもさせよう」
すると突然リヴァイは手すりを飛び越えると、突然思いっきりフレンの顔を殴りつけた。
「おいフレンよ。マコトはな、訓練兵を思って夜遅くまで訓練内容を考えていたり、仕事が終わっても訓練兵の自主練に付き合うくらい自分の事は二の次な超超超お人好し野郎なんだよ。 こいつの良心に漬け込んで近づいて、挙句の果てに身体だけじゃなくて心にも傷をつけたお前が心底気に食わねぇし、今すぐ壁の外に放り出して巨人の餌にしたいくらいだ」
言葉が少ないリヴァイがマシンガンの如く喋り、ダリスや同席していた憲兵、全員がに呆気に取られた。
とどめだと言わんばかりにリヴァイは襟首を掴むと巨人を倒す時の形相で睨みつけ
「次マコトに指1本触れてみろ・・・壁外調査開始早々お前を巨人の口の中に連れてってやるよ」
「ヒッ・・・」
「以上だ」
そう言ってダリスを見上げると、ダリスはメガネをくいっと上げて
「・・・リヴァイ、今日はよく喋るな」
「俺は元々結構喋ります」
「はは。・・・本来このような場合、開拓地行きだがマコトの意向に従おう。 幸い訓練兵団ではまだ噂が広まってない・・・フレン、今後とも訓練に励め」
「は、はい・・・っ、ありがとう、ございます・・・」
卒業時の成績はどうであれ、フレンへの罰則は調査兵団への強制入団という結果に終わった。
***
フレンは涙を流しながら憲兵に連れていかれる中、マコトは目を逸らしていたがエルヴィンとリヴァイが目の前に立ってくれたおかげでフレンを見ずに済んだ。
少し沈黙があったあとダリスはマコトを見て微笑むと、
「マコト教官、今後とも訓練兵を頼むよ。」
「はっ!ありがとうございます!」
敬礼をするとダリスは頷き、法廷は終了した。
終わったあと、マコトはへなへなと床に座り込むとリヴァイも座り込み溜息をつく。
「ったく、お前・・・どこまでお人好しだよ」
「ストレートに「死ね」とは言えなくて・・・遠回しになっちゃいました」
「総統にもそれは伝わってると思うよ。壁外調査は死亡率が高い。実質の死刑宣告だ」
エルヴィンは微笑むとさて、と腰に手を当てると
「せっかくここまで来たんだ、なにか美味いものでも食べようか」
「・・・お前の奢りだろうな?」
「もちろん、俺の奢りだ」
リヴァイはマコトを無理やり引き上げると、思わずリヴァイの手を掴んでしまった。
突然の事にリヴァイも驚いて振り向くと、泣きそうなマコトがはにかみながら
「リヴァイさん、さっきは・・・ありがとう」
フレンを殴った後の言葉だろう。
リヴァイは本当に自分の事を良く見てくれていた。それがたまらなく嬉しい。
「俺は本音を言ったまでだ」
そう言ってリヴァイは掴まれた手を握り返すと、そのまま手を引いて審議所を出ていった。
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兵舎に帰ってきて解散になると、エルヴィンはちょんちょんとマコトの肩を突っつくと小声で
「で、リヴァイとはどうだ?」
「どうとは・・・?」
「・・・おや、俺はてっきりくっついたと思ったんだが」
「くっ?! なな、何言ってんですか!」
マコトは下を俯くと
「リヴァイ兵長は、恋人いらっしゃいますよね? 綺麗な緑の目をした人が・・・」
「は?」
「・・・え?」
エルヴィンは硬直したが、ははは!と笑うと
「それは本人から聞くといいよ。」
「え、わざわざ関係を聞くんです? それはちょっと・・・」
「俺の口からは言えないな。ふふっ」
砕けた口調に、珍しく悪戯っぽく笑うエルヴィンに毒気を抜かれるとはぁ・・・と返事をし、敬礼をするとリヴァイの所へ向かった。
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