12:誤解
壁外調査が迫る3日前ー
粗方準備が整いやる事も無いのだが兵士もピリピリはしている。壁外調査前は、英気を養うために調整日に入る。

・・・が、やはり不安な兵士は馬の世話や立体機動装置の訓練をしているのでまともに休んでいる人間はいないだろう。

しかし中には酒を飲みに行ったり、明日死ぬかもしれないという追い詰められた精神状態なので娼館へ行く者もいる。

リヴァイはどれでもなく、酒は嗜む程度、女も潔癖症もあり行かなかった。
気晴らしに立体機動の訓練をするが、時刻は深夜なので却下、と候補から切り離す。

1ヶ月前、隣の部屋に移動してきたマコトはどうしてるだろうか。

「・・・何でだ?」

思わず口に出てしまった。
何故マコトが出てきたのだろうか。

しかし色々思い返してみると、自分はやけにマコトに執着している気がする。

訓練兵を見つけると、中にマコトも混じって談笑していないかと探してしまう。

帰りが遅いと何をしてるんだとイライラしてしまい窓からマコトが帰ってくるのを待っていたり廊下で待って、聞きなれた足音がしたらそっと部屋に戻るそんな事をしてしまっている。

ノアの遺言で書かれた大事な人。
恋人など特定の人間を作らなかったリヴァイを心配したのだろうか?

リヴァイは蛇女ことマコトを気づけば目で追ってしまっていた。何故か無意識にお守りとして使っていたネックレスを渡してしまった。自分でも驚くべき行動だったと思う。

しかし特別な感情を抱いてしまったとしても、彼女とは生まれた世界が違う。ハンジも言ったように、いつかは別れる時が来るかもしれないのだ。

ファーランとイザベラ、初期の特別作戦班や死んで行った仲間たちの顔が脳裏にチラつく。

「(もう目の前で誰かが居なくなるのはこりごりだ)」

そんな風にに思っていてもマコトを目で追ってしまう。

コンコン

そんな事を考えているとドアがノックされ思考を中止した。

「・・・入れ」
「失礼します!」

入ってきたのは、調査兵団101期生のアイラと言う兵士だった。

自分の直属の部下ではない兵士が来るのは珍しい。・・・例外を除いて。アイラは少し緊張した面持ちで部屋に入ってくるとリヴァイは誰かからの伝令だろうかと頬杖をついて書類に目を落としながら

「何の用だ」
「あ、あの、リヴァイ兵長。一生に一度のお願いを聞いてくれますか?」
「・・・あ?」

リヴァイは顔を上げた。

やっと顔をあげるとアイラは顔を真っ赤にして「ああ、これは」はとリヴァイは何か≠察した。

「・・・無理だ、帰れ」
「ま、まだ何も言ってません!」
「察した。俺はそういう事はしない」
「おっ、お願いします! 今まで私はまぐれで生き残れましたっ・・・きっと、もう今回の壁外調査で潮時だと思うんです」

そう言うとアイラは突然自分のシャツに手をかけ始めてボタンを外し始めた。
薄いピンク色の下着が露になりリヴァイは眉を寄せると

「おい」

思わず声を荒らげてしまいリヴァイは立ち上がって肩に手を置いて追い出そうとするとアイラも負けじとリヴァイの腕を取り胸元へ持って行こうとする。

「っ!聞き分けのねぇガキは嫌いだ」
「兵長、お願いします!この件は内密にするので・・・」
「テメェばっかの感情押し付けやがって、俺の気持ちはどうなる?」
「きゃっ」

そう言って思わず突き飛ばしてしまったがアイラがリヴァイの腕を離さなかったため一緒に倒れてしまった。









マコトは訓練兵に出した行軍の試験の採点をしていた。


『コニーはマジで頭弱いなぁ』


日本語でそんな事を呟く。
一旦休もう、と同じ姿勢なので凝り固まった身体を解そうと大きく伸びをする。

・・・紅茶でも飲むか、とマコトは棚からマグカップを取り出す。

ドアを静かに閉めると、どうやらリヴァイも起きているらしくドアの隙間から明かりが漏れていた。

「(リヴァイさんも、紅茶飲むかな・・・)」

声を掛けようか、と前を通り掛かった瞬間


ドンッ!


リヴァイの部屋の中から大きな音が聞こえて、マコトは驚くと慌ててドアを開けてしまった。


「リヴァイさんっ!なんか凄い音・・・し・・・」


ドアを開けた先にはリヴァイが女性兵士を押し倒し、その女性兵士もシャツがはだけ、胸元がガッツリ開かれていた。

・・・この体勢はどう見てもアレ≠やる1歩手前である。

リヴァイもヤバい、と珍しい顔をしてマコトを見上げている。


マコトは口を抑えると

「おいマコト、待・・・」
「お、お邪魔しましたァ!」

そう言うと全力で頭を下げてドアを閉めると走って給湯室へと向かった。




.
.
.


「はっ、はぁ、はぁ・・・いけないもんみちゃった・・・」

給湯室までダッシュで走りにいくと膝に手をついて呼吸を落ち着かせる。
先程の光景がフラッシュバックしてマコトは頭を抱えた。




***



ドアが閉められるとリヴァイはアイラの肌蹴たシャツをまとめ、グッと胸ぐらを掴んで立ち上がらせると

「いいか、俺は見ず知らずの女は抱かん」

怒りを抑えそうドスをきかせて言い放つと、そのままドアを開けて追い出し鍵をかけた。

「はぁ・・・」

リヴァイはそのまま床に座り込んで前髪をクシャッと掴んだ。

あの光景はまずい、完全なる誤解を生み出してしまった。あれでは自分があの女兵士に盛ったように思われている。

・・・誤解を解くしかない、とリヴァイは部屋の前でマコトを待つことにした。





「(・・・え?いやいやいや、気まずいし、部屋入ってて欲しいし!)」

リヴァイが部屋の前で腕を組んで入り待ちをしてるのだ。

マコトは紅茶の入ったマグカップを両手で持ちながら廊下の角に座り込んだ。

ハンジの所かエルヴィンの所へ行こうか・・・しかし2人も忙しいので邪魔はしたくない。それにマコトもまだ仕事が残っており早く片付けてしまいたい。

仕方ない、腹を括って特攻しよう。

マコトは立ち上がるとふぅっと息を吐いていざ!と廊下を平然として歩いた。

案の定リヴァイはマコトを待っていたらしく、マコトを見つけると壁から離れた。

「マコト」
「あ、お疲れ様でーす」

引きつった笑顔でマコトはマグカップを両手で持ち、挨拶をしながら部屋に入ろうとすると肩を掴まれた。

「おいマコト、さっきのは・・・」
「あ、大丈夫です。見なかった事にするので・・・お取り込み中すみませんでした」

目を合わせられない。
マコトはリヴァイを見ずに湯気が立つマグカップをいじりながら

「えっと・・・私、まだ仕事残ってるので。」
「ああ、すまん・・・」

それでもリヴァイは肩から手を離さなかったのでそのまま無理やり脚を進めると自然と手離れた。

「じゃあ、おやすみなさい」

頭を下げて、マコトはドアを閉じた。


そしてマコトは机の上にマグカップを置くと引き出しからスマホを取り出して

「ああ、くそ、イヤホン・・・」

そういえばイヤホンが無かった。こういう気を紛らわす時は曲を聴くに限る・・・今は電池の残量など惜しくはなかった。

節電モードにして、お気に入りの曲を最小限の小さい音量で流すと、マコトは仕事に取り掛かった。

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