7:カーネリアン
協力させて欲しい、そうドヤ顔で言ったものの・・・マコトは巨人を倒す技術も知識もない。

字の読み書きも特徴を掴んだおかげで読めるようにはなってきたのだが仕事が手伝えるとは到底思えない。マコトは死ぬ気でこの世界の言葉や文化を勉強した。


人類は突如出現した「巨人」により滅亡の淵に立たされた。生き残った人間は「ウォール・マリア」、「ウォール・ローゼ」、「ウォール・シーナ」という巨大な壁を築き100年の間生き永らえた。

3つの壁を合わせると総延長は7000km。
中心のシーナからマリアの規模を日本に例えると、東京〜大阪間ほどの距離だ。

マコトはハンジにもっと巨人の事を教えて欲しいと話すと、それはもうとても嬉しそうに目を輝かせてマコトの肩を抱くと執務室へと引きずり込んで行き、翌朝になってマコトはフラフラとしながら出てきたのをハンジの副官であるモブリットは小さな声で「ドンマイ」と呟いたのだった。


マコトの身の回りの物に、とヴァロア伯爵が資金をくれた。どのくらいの金額かは分からなかったが買い出しの同行を頼んだペトラとエルドが「こんなに!?」悲鳴をあげたのでとてつもない額だったのだろう。

念の為、とリヴァイが同行しリヴァイとエルド、ペトラ、マコトで市場へと買い出しに行った。
初めての外の街にマコトは物珍しさに辺りをキョロキョロしていると、後ろにいたリヴァイが頭を掴んでグルっと前にやった。

「おい、前向いてないと迷子になっちまうぞ」
「ごめんなさい!」
「初めての外ですもんね、今日は特に人も多いですし。 マコト、人混みは平気?」
「多少は・・・」

ペトラは笑うとマコトの手を取り引くと

「じゃあ早く終わらせちゃお!」
「は、はい!(ペトラさん可愛い・・・)」

グイグイ引っ張られていくマコトに後ろで荷物持ち役で来たエルドが笑いながら

「ペトラ達楽しそうですね。」
「ああ、あいつも息抜き出来て良かったんじゃねぇか」

1ヶ月前の泣いたマコトを思い出しながらそう呟く。普段見ないリヴァイの柔らかい表情を見てエルドは内心驚いていたがにこりと笑うと

「・・・ですね!ほら兵長、急がないと見失います!」






***





女の買い物は長い上、何処へ行くか分からない。
増えていく荷物にエルドは苦笑いし、リヴァイは眉をしかめると

「あいつらどこに行くか全く分かりゃしねぇ・・・奇行種か?」
「目に付いた店全部入ってますからね・・・」
「兵長、これで最後です!」
「ああ」

やっと解放される、とリヴァイとエルド安堵の息を吐いた。
そこはペトラのお気に入りの服屋らしく、女性客が多い中リヴァイとエルドは若干の肩身の狭さを感じた。
しかも女性客はリヴァイを見ると「リヴァイ兵長よ」と頬を赤くしてキャーキャー言っている。
それを気にせずリヴァイは腕を組んでペトラとマコトを見守っていた。

「ねぇマコトはどんな服着てたの?」
「あまりスカートとかは着なかったかな・・・?」
「えーっ!勿体ない!ねぇ兵長?」

突然振られたリヴァイは聞いてなかったようで、は?と顔を向けるとそうだな・・・とよく分からないが頷いた。
ペトラは吟味しながら服を見ていると

「これとか似合いそう!」

そう言って取り出したのは刺繍の入った白のワンピースだった。襟元と裾1周に刺繍がされており、派手すぎず見た目はスウェーデン刺繍のようなデザインだ。

「可愛い・・・」
「ね!あ、でもこっちもかわいい・・・」

ペトラとマコトは唸っていると、それを見かけた店員が試着してみてもいいですよと声を掛けてくれたので試着することになった。

「マコト〜、できたー?」
「は、はい・・・でもこれ私には可愛すぎ・・・」

どれどれ、とペトラは試着室のカーテンからこっそり覗くと

「マコト可愛い!似合ってるよ、兵長にも見てもらお!」
「えっ、は、恥ずかしい・・・!」
「兵長見てくださいよ、マコト可愛い!」

そう言ってカーテンを開けると、リヴァイはマコトを見て少し固まるとほぉ、と声を出して

「・・・ヘビを食う女には見えんな」
「ですよね!そのまま着て帰っちゃお!」

それは褒めているのだろうかと思ったが、マコトは少し照れながらうん、と頷くと何着か選ぶとそのまま会計へと連れていかれ、女性に絡まれていたエルドもマコトの服装を褒めてくれた。


帰り道、ペトラはリヴァイは話しながら。
その後ろにはエルドとマコトが歩いているが、エルドの荷物を見ると

「エルドさん、私ももつ・・・」
「え?いいよいいよ。こう言うのは男の仕事だから」

そう言ってにっこりと笑うエルドにマコトは紳士・・・と感じ、甘える事にした。

「マコトの時代もこんな感じなのかい?」
「ううん、私の所は大きな建物に全部お店が入ってる。」
「どういう状況だそりゃ・・・」
「巨人も多分、入れるくらいの大きさ」
「たはー・・・」

たまげた、と言う顔するエルドをみてマコトは笑うと

「でも、こっちの方が好きかな。お祭りみたい。」
「ははは、祭りはもっと派手にやるよ。またペトラと行くといい」
「うん」

話しながら歩いていると途中で露店の店員に呼び止められてしまい、マコトは急いでるので・・・と断り前を向いた瞬間

「・・・しまった」

マコトはリヴァイ達とはぐれてしまった。




***




「へ、兵長!!大変です!」
「あ?クソでも漏れそうか?」
「色んな意味で腹が痛く・・・マコトとはぐれました!」
「えっ?!」

エルドの隣にいたはずのマコトが消えてしまっている。

「・・・どこではぐれたか覚えてないか?」
「いや、俺が一方的に喋ってて聞いてるだけかと思ったら居なくて・・・うああぁ・・・すみません!」
「分かった。 ペトラとエルドはそのまま兵舎で待機。俺が探してくる」
「兵長、私も・・・」
「お前は十分に任務を遂行した。戻って休んでろ」

そう言うとリヴァイは早歩きで街の中へ戻って行った。



街に土地勘が無いので、下手に動かない方が良いだろうか・・・マコトは壁に寄りかかって街の景色を見ていた。
きっと途中で気づいてくれて、来た道を戻ってきてくれるかもしれない。

そう言い聞かせたものの、不安が募り俯いていると

「あれ、お姉さん1人?」
「俺たちと飲もうよォ」
「かわいいねぇー!」

泥酔した3人がマコトに寄ってくる。
あまりの酒臭さに眉をしかめると、男は顔を真っ赤にすると

「お姉さん一緒に飲もうよー!」
「すみません、人を待ってるので・・・」
「大丈夫!じゃあ連れの人も一緒に、ほらほら」

何が大丈夫だ・・・酔っ払いに言葉は通じないな、と口を開こうとした瞬間腕を掴まれて引きずられそうになる。

「ちょっ、待っ・・・」

すると、違う方から片方の腕を掴まれて振り向くと、そこには息を切らしたリヴァイが立っていた。

「おい、探したぞ。・・・アンタ達悪いな、こいつは俺の連れだ。削がれたくなかったらその汚い手を離してもらおうか」
「ヒッ・・・リヴァイの女かよ!」
「い、行こうぜ!」
「失礼しますー!」

一気に酔いが冷めたのか男達はそそくさとその場を後にした。息を整えているリヴァイを見上げてマコトは

「・・・りばいさん、ごめんなさい」
「来た道を戻ってよかった。あんな奴らお前だったらすぐ倒せるだろ」
「民間人だから、最悪腕を捻るくらいしようと思った。けどりばいさんが来てくれた。ありがとう」

そう言って笑うとリヴァイは大きくため息をついて行くぞと背中を向けた。
身長はマコトより数センチ高いくらいで、サラサラの黒い髪が揺れる。

ぼーっとそれを眺めていると、ふとリヴァイがある店で立ち止まった。

「りばいさん・・・?」

そこは石屋で、採掘された色々な石が売られておりアクセサリーもあるようだ。石が好きなのか?とマコトは隣に並ぶとカーネリアンの石が目に入った。

「ねぇ、りばいさん。あれ綺麗」

そう言ってカーネリアンの石を見た瞬間、リヴァイはマコトの目を見つめた。一瞬だが、リヴァイの瞳が揺れた。

「どうしたの?」
「いや、何でも・・・急ごう」

マコトは店主に頭を下げると、腕を引かれて兵舎への道を進む。

さっき何故リヴァイが切なそうな目をしたのか、マコトは分からなかった。


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