6:兵法会議

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▼戦闘訓練

自衛官の戦闘訓練は広大な草原を駆け回り、目標地点までダッシュ、ほふく前進、遮蔽物に隠れて射撃しながら進む。

あらかじめ決められたルートがあるが、水たまりがあっても顔から飛び込まないといけない。(凹んでいる部分なので銃弾が当たりにくいため積極的に突っ込まされる)

雨の日の戦闘服を洗うのは至難の業で、落ちきらないと罰が待っている。

なお、射撃時は空砲である。


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「ここに居たか、エルヴィン団長」

振り向くとそこには、憲兵師団師団長のナイル・ドークが立っていた。

「ナイル? 何事だ?」
「エルヴィン・スミス、犯罪者を匿った容疑で兵法会議を開くことになった。ご同行願おうか?」
「なっ・・・」

ハンジが前に踏み出すが、エルヴィンは手で制した。

「そこの女も逮捕だ」

そう言うと、憲兵団が駆け寄ってきてエルヴィンとマコトに手錠を掛けられる。

「マコト」

動揺したマコトを安心させるように、エルヴィンは名前を呼ぶと

「大丈夫だ。君は私たちが全力で守る」
「・・・うん」

すると、銃で背中をグイッと押されエルヴィンとマコトは審議所へと連行された。





地下に連れて行かれると、マコトは檻に入れられベッドの上で鎖に繋がれた。
いきなりの事で頭が着いてこず、言葉も曖昧で断片的にしか理解できないが、今の状況はとても良くないと頭の中で危険信号が鳴っている。

エルヴィンもどこにいるかわからない状況で何時間、いや1日は経っただろうか。

ドアが開く音が聞こえ、コツコツとこちらへ歩いてくる音が聞こえたので自然と顔を上げると

「りばいさん?」
「よぉ、びびって小便漏らしてないだろうな?」
「・・・なんとか、平気」
「解放する事ができるが、オマケ付きだ」

そう言うと手錠をぷらぷらと弄ぶと鍵を開けさせ、リヴァイが入ってくる。

知っている顔が来てくれて助かった、と強ばっていた肩を下ろす。そのままリヴァイはベッドに座るとそのままグイッとマコトの頭を引き寄せた。

突然の事で混乱したが、リヴァイはマコトの耳元に唇を近づけると小声で

「いいか、お前は何も喋らなくていい。記憶が無い振りをしろ。質問以外は喋るな、黙っとけ。エルヴィンに任せろ」
「・・・う、うん」

頷くとリヴァイは頭をぽん、と軽く叩くと手枷を外して手錠に取り替えた。




リヴァイが法廷へと一緒に着いてきてくれたが、その道中はお互い無言だった。
扉の前、不安になり隣にいたリヴァイを見るとこちらの視線に気づき大丈夫だと言うように頷くと

「・・・開けるぞ」

そう呟くと扉を開いた。
法廷に案内されると、そこにはエルヴィンが先に拘束されており憲兵団、駐屯兵団がずらりと並んで全員がマコトを見つめていた。

「ほら、進め」

憲兵に背中を押されてマコトは道を進むと、エルヴィンの隣で柱に縛り付けられた。
エルヴィンは柱に固定されるマコトを上から下まで見ると安心したのか息を吐くと

「よかった、怪我ないようだな」
「うん、へいき。えるびんさんは?」
「私も大丈夫だよ」

すると、最後に入ってきた白い髭を蓄えた男性が入ってくるとジャケットを脱いでさて・・・とエルヴィンとマコトを見た。

裁判長にしてはラフだな、とマコトは呆気に取られてると、こそっと小声でエルヴィンが説明をしてくれた。

「彼の名前はダリス・ザックレー。3つの兵団を束ねる総統だ」

それを聞くとマコトは驚いてダリスを見つめる。

マコトの組織で例えるなら陸海空を束ねる統合幕僚長と言ってもいいだろう。


『(めちゃくちゃ凄い人じゃん・・・!)』


マコトは一気に緊張して心臓が早く鳴る。
ダリスはメガネをクイッと上げて品定めをするかのようにマコトを上目遣いで見つめると、

「さて・・・本題だが、君が噂の黒い人間かな?」
「くろい、にんげん?」

なんの事だ、マコトは首を傾げる。
・・・どうやら自分のカモフラージュメイクや服装が黒かったためそう呼ばれているらしい。あれは迷彩柄なのだが・・・と心の中でツッコミをいれる。

「君の出身は?」
「・・・分かりません」
「名前は?」
「マコト・マカべと言います」

出身不明の上に、マカべ?聞いたことあるか?とザワザワし始める。
頭を抑えたダリスがリヴァイを見ると

「リヴァイ、説明を頼めるかな?」
「・・・我々調査兵団は、憲兵団の依頼により黒い人間の調査をするため目撃情報のあったトロスト区ある森の中を調査。そこでマコトと民間人を確保、しかしマコトは記憶喪失で話している言語さえわからない状態でした。
救助した民間人の意向の元、我々調査兵団で保護しハンジ・ゾエ分隊長が言語教育を行い今では多少喋れるようにはなりました」

リヴァイの説明になるほど・・・と髭をいじるダリス。

「確かに窃盗団を倒してくれたのはとても助かる。しかし、撃たれた窃盗団には弾痕のような跡があった。あれは、君の武器でやったものなのか? 」

無許可での武器の携帯は禁止という法律があり、あの時は無我夢中だったので独断で発砲を判断するしか無かった。マコトはどう答えようか床のタイルを見ながら考えていると、ガチャと扉が開いた。

「ああ、これは失礼。もう始まっていたんですね」
「ヴァロア伯爵。何故こちらに?」

ダリスが目を見開き、兵団や傍聴人もざわめき始める。ヴァロア伯爵はにこにこと笑いながら

「それがね、うちの娘の友人とスミス氏が何の罪も無いのに裁判に掛けられたと聞いてね。事情を聞こうと思いまして」
「友人・・・?」
「そちらのマコトさんです!」

ヴァロア伯爵の後ろからエマがひょっこりと顔を出せばマコトは驚いて口をあんぐりと開けた。

「うちの娘が賊に誘拐された所をマコトさんに助けてもらったと聞きまして。・・・ああ、武器のことでしたら私の専属探偵にに事故現場を調べさせたら、こんなものが」

そう言うと髭の生えた執事が小銃を見せた。
確かにマコトは自分の小銃で撃ったのだがヴァロア伯爵はそれを隠すために証拠を新しく作り替えたのだ。

「そ、そんな・・・現場にはあんなもの・・・」

ナイルが唇を震わせているとヴァロア伯爵はにっこりと笑い

「ああ、憲兵団の方が無能とは言ってないんですよ。ただ、隅々まで探してないという事は最初からマコトさんやスミスウジを犯罪者にしようとしてたのか・・・と考えてしまいますよね? 兵団は罪のない人間を冤罪にさせる集団なのですかな? 事によっては、今年から兵団への資金援助を切らせてもらおうかと思い馳せ参じました」

その言葉に憲兵団のナイルは口をあんぐりと開きダリスも眼鏡をくいっと上げる。
税金だけでは賄えない兵団資金を貴族が援助してくれる時がある。ヴァロア家はその中でも高額に援助してくれる貴重な貴族なのだ。・・・もしそれが無くなれば兵団組織が金銭面で苦しむことになる。

「・・・つまり、彼女は盗品で彼らを攻撃したと?」
「はい、そう考えれば辻褄が合うかと。娘曰く、彼女と出会った時は手ぶらだったと言っております」

20kgの荷物を背負ってたなんて今ここで口が裂けても言えず、リヴァイの言う通り黙る。

「私がエルヴィン団長にマコトさんを保護して欲しいとお願いしたのです。 勝手な真似をして大変申し訳ございません。エルヴィン団長のせいではございませんわ」
「マコトさんの事でしたら身元は我々ヴァロア家の所に登録して頂いても構いません」

エマとヴァロア伯爵は涙ながらにダリスに頭を下げると

「ああ、頭を上げて・・・ゴホン。分かりました。そういう事でしたら正式な登録などの手続きをして引き続きをして、マコト・マカべを調査兵団の保護下に置いてもらう」

そう言うと、ヴァロア伯爵は満足そうに頷きマコトも安堵の息を漏らした。


***


審議が終わり、ダリスは席を立つと解散になった。
憲兵団に手枷を外され、マコトは開放されるとすぐにエマの所へ駆け寄った。

「エマ!」
「マコトさん、お久しぶりです!」

エマがマコトに抱きつくと、マコトは受け止め、

「エマ、ありがとう。」
「まあ!マコトさん、話せるようになってきたのですね」
「おおむね」

照れ笑いをするとマコトはヴァロア伯爵に向き合い背筋を伸ばすと

「ヴァロア伯爵、助けてくれた、ありがとうごいます」

少し言葉がおかしかったが、たどたどしく伝えるとヴァロア伯爵は気にしないでおくれと笑った。

「私の方こそ君に会ってみたかったんだ。改めて、娘を助けてくれてありがとう。感謝するよ」

握手を交わすと少し残念そうに

「君が男だったら迷わずエマの婿にでもと言いたかったんだが・・・」
「もう、お父様!」

顔を真っ赤にしてエマはヴァロア伯爵を叩くとすまんすまんと笑う。
貴族と言っても、その辺にいる親子と変わらないのだなとマコトは微笑むとエルヴィンが横に来て頭を下げる。

「ヴァロア伯爵、私からも改めてお礼をさせてください。本当にありがとうございます」
「いやいや。何とかなってよかった」

そう言うとヴァロア伯爵はこっそりエルヴィンに耳打ちをすると

「実は私が持ってきた小銃は偽物でね、私が捏造したんだ。そうでもしなきゃマコトと君は処分されていた。それは人類にとって大きな痛手だ。兵団の中で私は調査兵団推しでね」
「ありがとうございます・・・さすがはヴァロア伯爵だ」



この場が収まり、満足そうにヴァロア伯爵は微笑むと持っていた帽子を被り杖を持ち直すと

「それでは我々はこれにて、マコトさん。また我が家に遊びに来てください。歓迎しよう」
「はい。ありがとうございます」
「それでは、ごきげんよう」

スカートを少し持ち上げながらエマは頭を下げるとヴァロア伯爵と審議所を出ていった。


残された調査兵団のエルヴィン、ハンジ、リヴァイは安堵の息を漏らすと

「それにしても、マコトの持ち物はバレなかったのか?」
「それなら、ペトラ達に分散させて各自の部屋に隠してもらった。あの銃は、俺の執務室の床を外して隠してある」
「助かったよ、リヴァイ」
「ありがとうございます。あの、3人とも・・・私、きめた」
「ん?何を?」


マコトは4人の前に立ち、脚を揃える。

足の開きは60度、最短距離の動きで手を水平に持ってきて敬礼をする。

日本で嫌という程身体に染み付いた敬礼。
この世界に来て、助けてくれた3人に対しての敬意を込めると、


「帰れるまで、みんなの力になりたい。なにか、協力させて欲しい」
「・・・マコト、ありがとう」

そう言うと、エルヴィン、ハンジ、やらないと思っていたリヴァイでさえも胸に手を当ててマコトに敬礼をした。


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