4:掃除
ここに閉じ込められて数日は経った。

『暇だ・・・』

マコトは語学の勉強に疲れ腕を組んでいた。
部屋を見渡すと、上質な部屋なので待遇は良いのだろう。ご飯も出るし、お風呂もある。

しかし着替え以外の武器も荷物も全て奪われてしまっているしスマホは圏外な上無駄な電池は使いたくない。

・・・それにしても、部屋が埃っぽい。
きっとマコトが来るまで誰も使われていなかったのだろう。

マコトは棚に乗ったホコリをみて眉をしかめ、手を払うと引き出しを開けまくり、雑巾を発見した。

「じっとしてても身体がなまるし、掃除でもしよう!」

水で雑巾を濡らしマコトは部屋の掃除をし始めた。



***



定期的に顔を覗くようにとエルヴィンからの命令通り、リヴァイはマコトの隔離された部屋へとやってきた。今日の当番はペトラらしくリヴァイを見るとお疲れ様です!と敬礼をする。がすぐに不安そうな顔になると、

「・・・あの、兵長。中から物音が」
「またか」
「また?」

また、とは以前の泣いていた出来事だ。
仕方ないとリヴァイはため息ついて何でもない、と呟くとドアを開けて見えないように身体を滑り込ませた。

「おい・・・蛇女。何してる」

マコトはまだ言葉が分からないので首を傾げた。


めんどくせぇ、とリヴァイは文字表を指さした。

なにしてんだ

そうじです

なるほど・・・リヴァイは頷くとドアに向かい

「ペトラ。すまんが掃除道具を持ってきてくれないか。」
「え? わ、わかりました!」
「雑巾、バケツ、箒、三角巾2人分。あとは脚立だな」
「了解です!」

リヴァイはマコトを呼ぶと

てつだう

マコトは驚いたが嬉しそうに笑うと恥ずかしそうに

「りばいさん、ありがとう」

通じてるかな?とこちらを伺う顔。
何も言わずリヴァイは頷いた。




ペトラが用意している間、マコトの掃除スキルをチェックする。ベッドを見るとシワひとつ無く綺麗に整えられており枕も乱れていない。

窓枠に指を這わせると、水拭きをした後に乾拭きをしたのかしっかりとホコリは取れている。
それから窓枠の部分やカーテンのレールなど椅子を使ってまでリヴァイは目を通す。

チェックされている・・・とマコトはドキドキしながらリヴァイの顔を伺うと。


「・・・ほお、やるな」


ここの兵士より掃除ができるようだ。
悪くない、そう意味を込めて頷くとマコトはパッと顔を明るくさせると胸を撫で下ろした。

ペトラからのノックが聞こえ、本腰を入れて掃除することになった。


パシリでオルオも連れてきたらしくマコトを見られないように道具を中に入れる。オルオは気になり思わず

「兵長、一体中で何が・・・」
「・・・そうだな。中のヤツは、掃除の技術が高い。ここの兵士よりな」
「・・・はい?」

答えになってないのだが・・・リヴァイはドアを閉めると中で「これを使え」や「頭に縛れ」「これは口だ、ホコリを吸うぞ」と甲斐甲斐しく世話をしているようだ。

「何なんだよ一体・・・」
「オルオ、兵長から話があるまで私たちは触れないでおこう」
「ああ・・・」

そう言うとオルオは去り、ペトラは警備を再開した。



バターン!



リヴァイが窓を開けて換気をした。

高い所の拭き掃除から終えると、マコトは床のホコリを集めてから濡らした雑巾で床を隅から丁寧に拭いていく。
素早く手際のいい動きは、掃除教育をされたリヴァイ班並の実力だ。

水拭きをしたおかげか床がワントーンが明るくなり、マコトは満足そうな顔をした。



さすがに高いところはやらせれない、とマコトはリヴァイを止めて上の窓を拭いていた。
リヴァイがお掃除セットを持ってきてくれたおかげで部屋がだいぶ綺麗になってきたので気分はとてもいい。

これで終わり・・・と一息ついてハシゴを降りようと踏桟に体重を掛けるとホコリを吸ってしまい


「ふぁっ・・・くしょい!」

クシャミをした瞬間、足を滑らせた。





『うおっ!』
「おい!」

咄嗟にリヴァイが手を伸ばして受け止める。
高いところではなかったのたがリヴァイはマコトを庇いそのまま床に倒れた。


『うぅ・・・』
「大丈夫か」


目を開くと、至近距離にリヴァイの顔。
お互い息が掛かりそうな距離まで近づいてしまっている。

リヴァイは特になんとも思っていないのか、自分の上に乗るマコトに声を掛ける。
事故であれ押し倒してしまったマコトは、顔を真っ赤にして何かを叫んで床に正座をすると、床に額を擦り込む勢いで頭下げた。

どうやら謝っているらしく、怪我は?とマコトはリヴァイを起こして腕や脚を触ってくるので問題ないと言うかのようにマコトの頭に手を置くと安心した表情になった。


人の頭を撫でるなんて、何年ぶりだろう。
リヴァイはふとイザベラの顔を思い出した。


「へっ・・・兵長!!大丈夫ですか?!凄い音しましたけど?!」


すると外からペトラの焦る声が聞こえた。

「大丈夫だ、ハシゴから落ちた」
「兵長が?! お怪我は?」
「俺じゃない。 無傷だ」

ドア越しに言うとペトラはよかった・・・と安心したようだ。

マコトは表を取り出すと


てつだってくれて ありがとう


申し訳なさそうにそう言うとリヴァイは

そうじは とくいだ

そう伝えるとマコトの頭と口から三角巾を外して部屋を後にした。



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