光の粒子を集めるような

山ノ井くんのことを意識し始めたのは確か1年生の夏のことだ。下校途中、夜遅くまで練習に打ち込む姿を見て素敵だなと思った。それから気になるようになって、いつのまにか好きになっていた。

1年生と3年生、2年間も同じクラスだったのに、山ノ井くんとは片手で十分数えられるくらいしかお話したことがない。もともと男の子と話すことが苦手だったし、相手が山ノ井くんだとなおさら緊張して話せなかった。

前に友達に「告白しないの?」と聞かれたことがある。色々考えたけれど言わなくていいんだって結論づけた。それはクラスの中心にいる山ノ井くんを見ていたら声を掛ける勇気がなくなったからでもあり、親しくない私に告白されても彼は迷惑に思うような気がしたからでもあった。

そして迎えた卒業式の日。今日でこうしてみんなと会えるのは最後なんだと思うと寂しくて仕方がなかった。放課後教室に残って卒業アルバムの最後のページに友達と寄せ書きしあいながら、友達の輪のなかの山ノ井くんを見つめる。卒業式後ということもあるのだろうか、いつもより凛としてみえる山ノ井くんは一段とかっこいい。

きっと彼と会うのは今日が最後だろう。分かり切っていたことだけれど、いざとなるとどうしようもなく泣きたくなるのはなぜだろう。

「ねえ、それ寄せ書き?俺も書きたい」

泣きたいのを俯いて誤魔化そうとしていると、山ノ井くんが私の前の席に座って顔を覗き込んでくるので驚いて顔を上げた。山ノ井くんは相変わらずにこにこしてる。ただ顔を赤くするしかできない私をよそに山ノ井くんは私のアルバムにマジックで何かを書きながら続ける。

「俺のこと分かる?」
「うん」
「よかった、同じクラスだったけどあんましゃべれなかったからさ」
「そうだね」
「1年ん時同じクラスだったの覚えてる?」
「うん、覚えてるよ」
「そんときからずっと可愛いなって思ってたよ」

何も言えないままの私の髪をくしゃっと撫でて、山ノ井くんは友達の輪のなかに戻っていってしまった。視線を下に落とすと彼によって書かれた少しくせのある「好き」の文字が視界に飛び込んできて、思わず釘付けになってしまった。

顔を上げて山ノ井くんを見つめれば目があって、いつもみたいににっこり微笑まれる。私がずっと言えなかった言葉をどうしてこんなにさらっと言えてしまうのだろう?こんなの、ずるいよ。

片思いのままでいいなんて、伝えなくていいなんてやっぱり嘘だった。伝えなくちゃ、言わなくちゃ何も変わらないのだから。自分の気持ちを伝えたくて私は席を立った。


0301 「スタージュエリーに墜落」さまへ
高校の卒業式シーズンに間に合ってよかった。素敵な企画に参加させていただきありがとうございました

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