日曜日はここ数日のぐずついた空模様が嘘のようなさわやかな秋晴れだった。雨が降らなくてよかったと俺は心底安心した。こんな日まで雨だなんてあんまりだ。

先輩達との試合は接戦の末1・2年生が勝った。でも真面目にやっていたのは最初の一試合だけで、二試合目からは山さんと本さんのバッテリーが誕生したり(ちなみに山ノ井スペシャルとは山さんが本さんと習得した魔球のことで、その正体はただボールを山なりに放るだけの超スローボールだ。もちろん全員にぼこすか打たれてた。)和さんが慣れないショートを守ったりマネージャーの先輩達を代打に起用したりとだいぶおふざけが入っていて、最後までぐだぐだだった。

先輩達が楽しそうに笑っている顔や冗談を言い合う様子を見て内心少しほっとしたのと同時に、立ち直ったようにみえる強い先輩達の3年間の総決算を台無しにしたという事実が重くのしかかってくる。俺がここで一緒に野球する資格なんてあるのだろうか。
「片付け出来たやつから部室集合な!」グラウンドに響く和さんの声を聞きながらぼんやりとそう思った。

部室に入ると名字達が花束や色紙の準備をしていた。先輩達と向かい合うように一列に並んでそれを渡す。俺から花束を受け取った慎吾さんの「来年はいけよ、甲子園」という言葉に黙って頷く。

「3年は今日で正式に引退になる。2年半至らない主将について来てくれてありがとう。最後の夏は残念な結果に終わったけど、お前らと野球できた時間はすごく楽しかったよ。でもまったく後悔がないとは言えない」

最後に部長からと言われて口を開いた和さんが一度言葉を区切る。目頭が熱くなるのを誤魔化すように伏せていた顔を上げると和さんと目が合った。

「がんばれよ。俺らの後悔は全部ここに置いていくから」

先輩達は毎日真剣に練習してきた。彼らの努力する姿は本当に美しかった。あの背中に憧れたからつらい練習を頑張ることができた。だからこそ、もっと一緒に野球をしていたかった。勝ちたかった。最後までどこにも負けたくなかった。

俺のせいで負けたのに俺が先輩達のために出来ることは圧倒的に少ない。それでも俺たちが負けないことで彼らの3年間が少しでも浮かばれるのならば、少しでも償いになるのならば日本中のどの高校球児よりも努力して、誰よりも強くなろう。もう二度と負けないように。



     

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