今は名字達が用意した色紙にメッセージを書きながら、タケが誰が誰に花束を渡すのか割り振っているところだった。マネージャーは先輩が3人に対して2年生が名字しかいないから、後輩と一緒に渡すことにしたらしくタケの手伝いをしながら色紙を書いていない部員に回していた。
夏のうちにこの行事を行う学校も多いみたいだけど、うちの野球部では毎年9月の第二日曜日に行うのが恒例になっていた。
毎年この時期に。夏がどんな結果に終わっても平等にやってくる。去年のように甲子園に行くことができても、初戦で負けても平等に。
今年の夏は初戦で終わった。うちは県内じゃ強豪だって言われてて、実際に去年の優勝校という実績だってあった。決して悪いチームじゃなかった。毎日朝から晩まで野球に打ち込んで、一生懸命努力して。それでも届かなかった甲子園。
去年ベンチからみた甲子園に今年は先輩達と行きたかった。けどそれはもう二度と叶わない。俺がはじめからちゃんと投げられていれば、もっと自分に力があれば、モーション盗まれたりしなければ、きっとこんなことにはならなかった。先輩達の夏を終わらせたのは俺だ。
先輩や部活のやつらに心配かけるわけにはいかないから、もう部活をサボったりはしない。しないけど、いくらこれからがんばったって俺が奪った先輩達の夏は帰ってこないんだと思うと、これからどうすればいいのか分からなくなる。
「準さん!ぼーっとしてないでタケさん手伝ってあげてよ。副キャプでしょ!」
という利央の声で我に返る。そうだ、もう副キャプ任されてるんだからいつまでも引きずってないでしっかりしろよ、俺。
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