先輩達とのことだってそうだ。何か言われたわけじゃないのに、先輩達が俺を責め立てるような人達じゃないって分かってるのに。いつか何か言われるんじゃないかとか、心の底では恨んでるんじゃないかとか思い込んでは勝手に壁を作って。そのくせ大会前みたいに笑い合える仲に戻りたいと願って。これじゃただのひとりよがりだ。
名字といるとそんな自分の醜いところがありありと見えてきて苦しくて、どうして俺は自分勝手なのかとか、どうして俺はあんなふうに生きていけないのかとか、思えば思うほど惨めになる。
結局俺は自分の嫌な部分に目をつぶっていたいだけだったんだ。名字に近づけば近づくほど照らし出される自分の醜さを認めるのが怖くて、全部名字のせいにしてただけだったんだ。
「…ごめん」
上手くいかないの全部お前のせいにしてごめん、冷たい態度とってごめん。ちゃんと目をみて謝りたいのに、名字の目を見るのが怖くて掠れた声で呟くことしか出来ない自分が不甲斐なかった。
こんな俺に「高瀬くんはもうちょっと誰かを頼っていいんだよ」なんて言葉を名字がかけてくれるから、すがってしまいたくなって華奢な体に腕を回して抱きしめる。すると名字も同じように抱きしめてくれた。小さな手のぬくもりが背中から伝わる。
ああそうだ俺はずっとこうしたかったんだ。光に集まる夜光虫みたいにずっと名字に惹かれてたくせに、自分のだめなところを見たくなくて目を逸らして。本当はその優しさに甘えてしまいたいのに、光の届かないような遠くから名字を見つめては恋い焦がれて。
名字がこんな俺でも受け入れてくれることはなんとなく分かっていたのに、そこに飛び込むのが怖くて逃げて近づけない苛立ちを全部名字のせいにして。それでも俺は
「…好きだ、名字のことが」
腕の中で「私も、好き」と小さく呟いた名字を離したくないと思った。
絶対に幸せにする。と言い切れる自信はない。多分そんな自信一生持てない。きっと今日みたいに名字を深く傷つけてしまう日も泣かせてしまう日もあるだろう。それでもそばにいてほしいと思った。いつか今日という日が遠い過去になってもずっと。
結局どこまでいっても考えてるのは自分のことばかりで、情けなくなって少し泣いた。
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