Novel - Vida | Kerry

fumou



意外って言われるかも知れないけど観察眼は鋭い方だ。たとえば野球部で誰も気づかなかった迅の髪型の微妙な変化に気付いたりとか、たとえば多分みんな知らないけどバスケ部の吉木とうちのクラスの藤田さんが付き合いはじめたことに気付いたりとか、たとえば好きな子の好きな人が分かっちゃったりとか。

俺の好きな名字さんは準さんのことが好きだ。だから準さんのクラスが体育のこの時間、いっつもグラウンドを見てる。よく飽きないなぁ。辞めればいいのに。

名字さんと準さんは話したことすらない。つまり名字さんの完全な片思い。そんな彼女の横顔を見つめていたらため息がでた。完全な片思いは俺も同じだ。

ねぇ知らないでしょ、準さん1年の時からずっと片思いしてる子がいたんだよ。知らないでしょ、念願叶ってその子と付き合い始めたんだよ。今日も一緒に帰るんだよ。知らないでしょ、その子の話するとき準さんびっくりするくらい優しい顔するんだよ。知らないでしょ、その恋はいくら想ったって絶対叶わないんだよ。ねぇ、なんにも知らないでしょ。

全部知ればいいのに。そして傷付けばいいのに。大丈夫、俺が抱きしめてあげるよ。準さんなんか諦めればいいのに。大丈夫、俺がいっぱい愛してあげるよ。
気付けばいいのに、俺がずっときみを見てることに。俺のこと好きになればいいのに。

ねぇどうして準さんなの、どうしたら俺を好きになってくれるの?ピッチャーにでも転向したら、シンカー投げられるようになったら振り向いてくれるの?もう、わかんないよ。

窓際のきみの視線はまだグラウンドにある。こんなに見ているのに、今日も俺たちは目すら合わない。

あー、不毛だ、ずっとずっと不毛だ、それこそきみに恋なんかしてしまった日からずっと。


thanx : さよならの惑星

0303 最後の一文をさよならの惑星さまよりお借りしてます。


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