嘯くブリキ



「なるほど、つまり君は本当にシエラ嬢ってことなんだな」


この躯になった経緯をあらかた説明した後、ふむふむと興味深そうにこちらを見やるグレンさん……改、レヴィさんの顔をまじまじと見つめ返す。

これは余談だけれど、本来三つ子というのは二卵性双生児のうちの片方が一卵性双生児となって生まれてくることによってできるもので、三人のうちの誰か一人は違う卵からできている。

私たちで言うと、アリスたちが一卵性双生児で、私の躯は別の卵からできていることになる。

つまり、私はアリスたちと似ていない。

私が憑依した影響で灰色になってしまった髪の毛は、レイシーの流れるような黒髪とは違って緩くうねっている。瞳は他のアリスたち同様に紫の色彩を持っているものの、目元は似ても似つかない垂れ目である。

初めてこの顔を鏡で見た時、私は首を捻った。

私の予想として、レイシーの相手は金髪碧眼の彼だと思っていたけれど、この瞳の色がそれを否定する。何より、想像の彼が垂れ目であることに違和感しか覚えられなかったから。

改めて、レヴィさんの顔を確認してみる。

まとめるのに苦労しそうな緩く波打つ銀髪。焦点の定まっていなさそうな紫の瞳。誰がどう見ても、垂れ目。

似ている。どうしようもなく、似ている。

まさか、じゃあ本当に……。

辿り着きたくなかった結論。そこに辿り着いてしまったせいか、次の瞬間、


「えっと……パパ?」


私の口がとんでもないセリフを発してしまったのも仕方ない……仕方ないわよね?

ピキリ

固まった。レヴィさんの表情が。

と、同時に今まで存在を認識していなかったけど、レヴィさんの後ろに立っていた男の人の空気が凍ったのを、私は肌で感じてしまった。

自分でもちょっとやらかした感が否めない。余計な一言だったと今更ながら反省できる。けれど、言ってしまったことはもう取り返しがつかないわけで。しばらく固まっている男二人の様子を伺う。

するとおもむろに、何かから回復したように見えるレヴィさんがゆっくりと手を広げ始めた。

何をするのかと注視していると、彼はそのまま足を少し折って、私と目線を合わせる。必然的に近くなった垂れ目が遠くを見ているようだと、なんとなく察してしまった。


「む…………」
「む?」
「娘よ、会いたかった」
「素敵な棒読みねレヴィさん」


現実逃避は許しません。主に後ろのお兄さんが。
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