じゃない姉



姉ちゃんがいた。

オレと同じ肌の色で、目と髪の色で、同じ背丈で、同い年の姉ちゃんが。小学校に上がる前に他所にやられたから2歳だったエマは覚えていない。母さんはとっくに忘れている。オレだけが覚えている、本当の姉ちゃんのことを。


『イズ』


イザナをちゃんと言えなくて、変な呼び方を馬鹿の一つ覚えで繰り返していた。


『イズ』


姉ちゃんはガキの頃から強かった。オレと同じ細い腕のふにゃふにゃの拳で見た目をからかってくる小学生をぶっ飛ばしてた。何を考えているか分からないぼんやり顔で、ビックリしているオレを振り返って首を傾げる。


『イズ、まぁね』


その姉ちゃんは、最後まで舌足らずにどこかへ連れて行かれた。

後になってテレビに姉ちゃんの顔と名前が出た時は笑っちまった。姉ちゃんは白い道着で国を背負っていた。オレが年少で燻っている間に姉ちゃんはいいとこに引き取られてスポーツ選手になってたんだ。あの頃よりは長くてしっかりした手足で自分より大きな相手の道着を掴んで宙に投げ飛ばす。相変わらずの無表情に汗一つかかずカメラに向かってピースする。スポットライトを浴びて言葉少なに大人たちに感謝を伝える“キレイ”な女。吐き気が込み上げた。

母さんは、オレと血が繋がってるのは双子の姉ちゃんだけだと言っていた。でも、でもさ、こんなの見せられたら、血が繋がってたって仕方ないと思った。同じ血が流れてるとは思えないほどあっちはちゃんとしていた。ちゃんと人間だった。

オレは人間じゃない。

真一郎はオレを人間にしてくれたのに、勝手に死んで、勝手にマイキーという“ホンモノ”だけ遺していった。“ホンモノ”に取り縋って引きずり下ろすしか能が無いオレは、オレはもう、人間になれない。

人間になれないまま、一人で死ぬんだ。


「イズ」


銃声が二度響いた。

一発はオレの肩に。二発目はどっかの空へ。鶴蝶に二発目を撃とうとした稀咲の前に躍り出たオレは、代わりに一発もらって、さらにもう何発か受けるはずだった。なのに稀咲は銃を取り落として呻いているし、オレは倒れずに立ったまま。天竺と東卍が揃ってるはずのここは誰もいねぇみたいに静かだった。

耳下までの真っ白い髪、刈り上げたうなじ、小麦色の肌、紫色の目、何を考えているか分からない無表情。稀咲の腕を蹴り飛ばした足を下ろして、小首を傾げた拍子に耳にかけていた髪がサラッと流れた。表情がもっと見づらくなった。


「イズ、なにしてる」


肩が燃えるように熱いのに、背筋にはゾッと冷たい何かが走った。


「ね、姉ちゃん」
「姉ちゃん、なんで」


マイキーと声が被った。オマエが姉ちゃんの弟面をするなと言える空気じゃぜんぜんなくて……。


「これ喧嘩じゃない。殺し。冗談じゃない」


たどたどしい言葉。それでも何より深く鋭い殺気が分かりやすいくらいに死の恐怖を叩きつけてきやがる。



「私が殺すか?」



姉ちゃんは、オレが思うよりぜんぜん“キレイ”じゃなかった。





***





姉ちゃんがいた。

たった一人の腹違いの姉ちゃん。エマの本当の姉ちゃんで、エマは知らない秘密の姉ちゃん。


『にぃ!』


佐野道場の敷居を跨いだ細い足。小麦色の肌に真っ白い髪、紫色の石っころみたいな目が抱きついてきたエマを無感動に見下ろしている。オレよりいくつか上の小学生のガキ。コイツがエマの兄ちゃんかとじろじろ眺めた。第一印象は不気味なヤツ。何考えてるのか分かんねーツラでエマの髪をぎこちなく撫でて、エマがいくら話しかけてもうんうん頷いてばっか。エマの名前しか言わねぇから、エマが腹でも壊したのかと心配していた。後から知ったのは、あれは二つの意味で話せなかったんだ。


『コイツ、エマの姉ちゃん』


ソイツは自分のことを黒川だと名乗った。

真一郎が言うには、エマがもっと小さい時に別のところに引き取られた兄貴の双子の姉。……ややこしいな。とにかくエマの姉ちゃんで、ちょっと、かなり、だいぶ? 言葉が上手くなくて、喋るとボロが出るから黙ってたんだと。

なんで姉ちゃんだって言わないのか聞いたオレに、ソイツは、黒川は首を傾げた。


『エマ、わたし、しる、ないない』


自分のことを知らないから、知ってる方の双子のフリをして会いにきたらしい。意味わかんねぇ。

オレはダッと走ってエマにネタばらししてやろうと部屋を出た。ら、真一郎が声を上げてる途中で目の前に黒川が立っていた。オレが目を離したのは一瞬で、どうやって後からオレを追い越して通せんぼしたのか分からなかった。ビックリして尻餅をついたオレを黒川はやっぱり無言で見下ろしてくる。でも立ち上がろうとしたらちゃんと手を貸してくれて、そのまま手を繋いだまま部屋に戻って真一郎にバトンタッチされた。完全に落ち着きのないガキ扱いだ。


『だめ。めぇ』
『羊かよ』
『ひちゅ?』


本気で言葉が分からないらしい。

真一郎の乾いた笑いとオレのジト目を無表情で受け止める黒川。

──黒川が、本当は黒川じゃないことを知ったのはもっとずっと先のこと。テレビで天才柔道少女として紹介されているソイツは、全く知らない名字を名乗っていたから。


『名前』


外人みたいな名前だった。振り返ったソイツは無表情で、見慣れてきたからか逆に感情が読みやすい。勘で分かる程度には身内になったのかも。


『マンジー、知ってる?』


まあ、身内のわりにアイツはオレの名前もちゃんと言えてねぇけど。


『テレビで見た。オマエ黒川じゃねーじゃん』
『んぅ? ……エマのにぃ、黒川。分かる。simple』


エマの兄貴になりきるなら、ってことか。

数年でなんとか言いたいことが分かるようになったが、そればかりはぜんぜん納得できなかった。


『嘘つき』
『う?』
『オレにだけ、教えてくれてもよかっただろ……』


コロコロと飴を口の中で転がしてそっぽを向く。どうせ黒川は、名前はいつもの無表情に不思議だなぁとぼんやり感情みたいなもんを乗っけてるんだ。首を傾げて、真っ白い髪をサラサラなびかせて、紫色の目をパチパチさせて。オレや真一郎がおかしいみたいな態度をとる。たまにならともかく毎回は流石に腹が立つ。それでも女に手を上げるのは絶対ェなし。いくらコイツが人間辞めてるレベルの馬鹿力でも、女は女なんだ。


『ねーね』
『──は?』
『マンジー。ねーね、呼ぶ、いい』


エマがいないところで姉と呼べ、と。

よーく目を凝らさないといけないくらい、地味に、うすーく、小さく。初めてソイツが、##name2##が笑ったから。

その日から、オレに秘密の姉ちゃんができた。


『マンジー、ちょっと、バイバイ』


真一郎が死んでからうちに来なくなった、薄情者の姉ちゃんだ。




「私が殺すか?」


姉ちゃんは、オレの姉ちゃんじゃなかった。

エマの姉ちゃんでも真一郎の妹でもない。黒川イザナとだけ血が繋がった赤の他人。二年ぶりに顔を見た気がしなかったのは、黒川イザナが姉ちゃんにそっくりだったから。声をかけられた時は間違って姉ちゃんと呼びかけるくらい二人は似ていた。並ぶと姉ちゃんの方が髪が白くてちょっと小さいけど、それだけだ。

本当に、姉ちゃんはオレの姉ちゃんじゃないんだ。

イザナにぶん殴られたところより別の場所がじんじん痛い。鼻血が出るのと違う熱さが鼻の奥でむずむずしている。東卍の総長の立場を忘れるくらい姉ちゃんを見続けて、ハッとした。

姉ちゃんは着ていたジャケットをイザナの肩に巻き付けて、それから下に着ていたニットを脱いだ。その下に何かTシャツでも着ているのかと思えば、


「ね、姉ちゃん! ふざけんな!」
「んぶ」


下着かよッ!

ここにどんだけのヤローがいるのか分かってないのか。天竺と東卍で100はゆうに越えてるっつーのに。見られて気にするような女ではないと知っていてもオレの命の特攻服を投げつけるくらいにはビビった。イザナも固まっちまってる。たぶん血ぃ流しすぎたせいだけじゃねーな。

特攻服を頭から被ってもマイペースに鶴蝶の止血をし続ける姉ちゃんは、二年経っても変わんねぇ。2月の雪が降る夜に半裸で身震い一つしないとか人間辞めてるにも程があるだろ。

“見たら殺す”と目で周りに脅しをかける。東卍は全員逸らしたし、天竺も粗方目ぇつぶったとはいえ何人かキャパオーバーで突っ立ってやがる。あとで目潰ししに行くか。


「イズ」


鶴蝶の手当てが終わってまた立ち上がった姉ちゃん。オレの特攻服を羽織ってイザナを呼ぶと、肩を押さえたままイザナが姉ちゃんを見た。


「……い、今さら姉貴面しに来たのか、ああ? これでオレに恩売ったつもりか? 舐めてんじゃねーぞクソ女」
「ここにいる人、友達?」
「は?」


ぐるっと首を回した先にいるのは天竺と東卍のヤツら。ここにいるヤツ全員。

『オレが怖ぇーから戦ったんだ』

『天竺にあるのは恐怖と利害のみ!!』

『信頼や友情なんて実のない幻想だ』

オレとのタイマンでイザナが言ったこと。


「ハッ! おめでたい脳味噌だな。友達なんかじゃねーよ」
「じゃあ、殺す」

「──へ」

「殺す。イズが死にかけた、原因、ないないする」


待て。待てよ。


「姉ちゃん、何言ってんだ」
「殺す、言った」
「ガチじゃねぇよな」
「がち」
「そんなことしたら姉ちゃん、選手続けらんなくなるだろ」
「いいよ」


コキリ。首を鳴らして、拳を鳴らして、ブーツをトントンと鳴らして。紫色の目に冷たい光が走った。この目、知ってる。真一郎が死んだ時の、あの、何とも思っていないみたいな変な目。

人を殺せる目。

そのまま落ちていた銃を踏み抜いて、近くに尻餅ついてる稀咲の方に向かう。そこで半間の野郎がバイクで突っ込んだが、姉ちゃんはノールックで半間を蹴り落として無人のバイクがコンテナに突っ込んだ。たったひと蹴りであの半間を沈めた。次に稀咲の首を片手で締め落とした。アッサリ二人気絶させて、次はさっきまで手当てしていたはずの鶴蝶に手を伸ばした。「グッ、ガッ、ぉえっ、っ」


「やめろ!」


羽交い締めにしてもビクともしない。「ケンチン!」ケンチンも加勢してやっと両腕を捕まえられても、今度は足で鶴蝶の首を踏み始めた。


「なんだよソレ」
「友達じゃない、いいでしょ」
「何してんだよ……頭おかしいだろ、なんなんだよッ!」


イザナが肩を押さえるのを忘れて姉ちゃんの足に縋り付く。すると流石に傷を心配したのか、姉ちゃんの抵抗が弱くなった。


「イズ、肩、血」
「なんなんだよ、今までどっかでおキレイに生きてきたくせに、急に来て、助けたり、殺そうとしたり! ワケ分かんねぇよ! 何がしたいんだよ、──姉ちゃん!」


足にしがみついたまま、鶴蝶の血塗れの顔を見下ろして、イザナの目に涙が浮かんだ。

初めて姉ちゃんの体が止まる。急に抵抗がなくなったからオレとケンチンが後ろにコケかけた。

姉ちゃんは、足に縋り付いたままのイザナを見下ろして。しばらくして鶴蝶の上から足を退けた。そのまましばらくボゥッとしたかと思えば、風に紛れるくらい小さく、そっと、ガキみたいなことを言い出した。




「イズと、シンチロと、マンジーと、エマと、いっしょ」



──いっしょ、いたかった、ねえ。



なんでそんなこと、こんなところで言うんだよ。




***




名前の一番古い記憶は言い争う男女。生後半年かそこらの赤子と並んで薄ぼんやりと意味不明な言語を操る異人種を眺めていた。甲高い泣き声と野太い罵声の応酬。特に気が滅入るとか不快だとかは感じず、ただ、──『ジャポン語かあ』と。赤子らしからぬ目で途方に暮れていたのだろう。

悪名高い暗殺一家ではなく、パドキア共和国でもなく、ジャポンでもない。地球という惑星の日本という島国のごくごく一般的な家庭に生まれたのだと理解するまでに、母親であろう女が消え、新しい母親ができ、父親であろう男は消え、新しい父親ができ、新たに妹ができて、父親は消えた。新しい母はほとんど一人で双子の世話を焼いてはげっそりとタバコを蒸していた。『あたしの子じゃないのに』当時は意味がわからなかった言葉。つぶやいては頭を抱えて泣く姿はいっそう悲壮で、名前は必要最低限の生理現象だけに留めながら家庭環境の違いに戸惑った。所詮金持ちの子供だったので、お金がなく使用人も雇えない、狭いアパート暮らしで質素な生活というものがよく分かっていなかった。

双子の弟のイザナと同じような服、同じような髪型で外に放り出されるのはたいてい妹のエマの世話にかかりきりの時。不安そうなイザナの腕を引いて、できるだけ遠くの公園で遊びと称して体作りを始めた。およそ欠食児童に片足を突っ込んでいる二人は、それでも動ける体力をつけなければと躍起になっていた。いや、本気になっていたのは名前ばかりで、イザナは置いてかれまいと必死に縋っていたのかもしれないけれど。

暗殺者じゃない。強さは必要ない。未知の環境に置かれて、何をすれば良いのか時間を持て余す。きっと名前も戸惑っていた。父親という稼ぎ頭が消えて母と幼児と双子の四人がどれだけ生きづらいのか何となく理解してきた頃合いだ。小学生になれば給食という安定した栄養源が出ると知っていれば、あの時あそこまでの強硬策は取らなかったかもしれない。

子供が欲しい夫婦がいた。それも体が強い子供。何某かの後継者が欲しいらしく、異様な身体能力なわりに明らかに貧相な名前に目をつけた。名前の方も、食い扶持を減らした方が母にとっても弟妹にとってもいいだろうと素直に考えた。夫婦と母を引き合わせ、母と弟妹への援助を約束した上で名前は養子に行くことにした。誤算だったのは、夫婦が欲しかったのは男の子で名前が女の子だったこと。母の食いつきが強くてかなり揉めた末に渋々と引き取られたこと。

引き取られた先での教育は、世間一般で言う虐待に近かった。身体的と精神的で3:7くらい。訓練と称して様々な体罰があったし、言葉や常識がおぼつかない子供に飯抜きや家からの締め出しがあった。当時はまだありがちな厳しい躾だったが普通の子供なら情操教育に支障をきたすような所業の数々。けれど名前は前世暗殺者の普通じゃない子供だったので、『一般人はぬるいなあ』と首を傾げながら淡々とこなしていった。

そんな日々が続いて、小学三年生のある日。名前は初めて家出した。母が弟妹を手放したのだと義父母の会話を盗み聞きしてしまったのだ。


『にぃ!』


イザナが入った施設には門前払いをされた。なんと言っているのかは名前の言語能力ではいまいち聞き取れなかったが、元気でやっていることは聞けた。エマの方は完全に自分をイザナと勘違いしていた。なら、それでいいと思った。安否を確認するためだけに来たのだ。エマの中に自分がいないのなら必要とする兄を演じた方が早かったから。

自分が頼んだ援助だけでは足りなかったのだろうか。母の方の行方は分からず、それでも子供を捨てずに別の人間に預けた点は評価していた。ゴミ捨て場で育った知人は前世にいくらでもいたから。以前にいた父親と瓜二つな真一郎と万次郎がいるのも良い。父親の顔を覚えていなくても父親と同じ顔がそばにいればまだ寂しくないだろうと。様子見を終えて帰り、微々たる力で殴られて、いつも通りの生活に戻った。内緒で佐野道場に週一で通う習慣ができた。

イザナとは相変わらず会えなかった。真一郎の掻い摘んだ説明によると、本人のメンタルのために引き取られた兄弟は会わせない方が良いらしい。施設に入った自分と暖かい家庭に入った姉の落差で刺激してしまうと。そう言われれば無視はできなかった。エマの面倒を見る真一郎と面倒を見られている万次郎は、エマにとって大切な人間に違いない。未だにイザナのフリをして様子見に行く自分より、よっぽど。


『イザナは家族に飢えている。兄貴ができて喜んでいたよ』


などと真一郎が言うから。そうなのだろうな、と。数年前の名前は素直に頷いてしまったのだ。


『シニチロ、結婚しよ』
『ブッッ!』
『はぁ!?』


手っ取り早く家族になろうとして、真一郎と見知らぬ少年に止められたのは未だに納得がいっていない。

──断られた理由を、死んでも教えてくれなかったのも。






名前には寂しいという気持ちが分からない。きっと知っているはずなのに誰も教えてくれないから自覚できない。だから、他人のいう“寂しい”にちゃんと寄り添えない。


「友達、だ……」


足に縋り付く弟を見る。この世で唯一血を分けた双子の弟。血で銀髪を汚して、膝をついて、俯いて。涙まじりの小さな声は、手のひらに降った初雪のように淡かった。


「鶴蝶は、オレの、と、友達だよッ!」


あたりがざわついた。主に赤い服を着た集団が。

殺し屋に友達はいらない。恨まれるのが仕事の一貫である家業である。人質となりうる友人知人は作るべきではない。作るなら、足枷にならない程度の強さを持っていることが最低条件だ。自身も、相手も。

その点、イザナは弱かった。

名前の足の下で虫の息の男を助けることも、名前の足をどかすこともできない。弱くて寂しい、名前の弟。


「そう」


それでも、名前の弟だ。

殺し屋なんて関係ない。一般人の双子の弟だ。



「友達、できて、いいねぇ」



イザナごと足を持ち上げて、普通の女の子のように名前は笑った。兄貴は作ってやれなかったけれど、友達は自分で作れたのだ。それは“寂しい”がなくて良いことなのだろう。


「あれも?」
「ッ!?」
「あ、あれ?」
「あれ、あれも?」


適当に指差した左サイドに刺青が入った男。ギョッとしたのは本人ばかりではなく周りにいた数人も同じで。


「友達?」
「い、や、獅音は、」
「友達、違うの?」
「友達だ」


足をずらしただけですぐ肯定が返ってきた。何故だろう。

「あれは?」「蘭、も、友達」「あれ」「モッチーも、友達」「ん」「ムーチョ、友達」「ん?」「竜胆、友達」「あっち」「こ、このいも、友達」というやりとりを延々繰り返している最中、黙っていた万次郎がクイッと名前の特攻服を引っ張った。



「姉ちゃん、救急車呼ぶよ」
「あっ」



重傷者の存在を忘れていたニコニコ・名前であった。










途中からまったく絡みのない下っ端指差されて適当に「友達」て言ったら“友達なのに名前も知らないの?”って首傾げられ「田中、友達」「山下、友達」「あー、斎藤?」とか適当に命名していったイザナ。否定できずに「ジブン田中っす」「山下っす」と手を上げる下っ端。一周回って笑うしかない幹部。たぶん鈴木とか高橋とか五人くらいいた。






***





妹がいた。


「シンチロ」
「真一郎」
「シニチロ」
「真一郎!」
「シニィチロー」
「しん、いち、ろー!」
「シン、チィ、ロー」
「わざとだろオマエ!」
「う?」


真っ白い髪をサラリと揺らして首を傾げる女の子。エマや万次郎よりも大人びた無表情にほっそり伸びた手足。妙にボーイッシュな服装でパッと見は男に見えなくもない。何せイザナと双子だ。格好も髪型も合わせているンなら性別が迷子になっても仕方ない。本人がエマの前ではイザナのフリをしているモンだから、余計に寝ぼけたイザナにしか見えねえ。

そんなイザナそっくりの妹は人の名前を発音するのが苦手だ。話すのも苦手なまんまだが、特に人名で謎の呼び方を勝手に作る。万次郎やオレみたいな日本的な名前は特に。「やっぱ表情筋かー? 表情筋がガチガチだからベロ動かねえのかー?」「う、うみゅ?」もにもにほっぺをこねくり回してみても名前はされるがまま。少し迷惑そうに眉を顰めて、でも逃げたことは一度もない。こういうところがイザナとは似てない。子猫みたいに可愛い妹だった。


「名前さ、そろそろエマに本当のこと言わね?」
「ヤ」


この調子を何年も続けている。だいたい5年くらいか。女の子は男より成長スピードが早いからか、ヤローに混じっても女顔の男で通ってしまう。そのせいでうちの店に来るヤツはたいてい黒龍に勧誘するのかと聞いてくる。まあ、客や昔馴染みがいる時間に名前が来るのはマレだから、ほんの数人しか知らねえし、イザナが八代目を継いだ後は『昔はぼんやりしてたんだなぁ』と何やら勝手に勘違いしている。笑って曖昧に聞き流した。

マァとにかく。今はまだ男で通せるが中学卒業あたりで無理が来る。口で言うより先に嘘がバレればエマだって悲しいはずだ。早いうちからバラしちまえばいいのに、こうなるとテコでも動かないのが名前だった。オレより強いもんなぁ、コイツ。


「イザナに会うのもダメか?」
「イズ、来る、言うした」
「でもさ、こっちから行っちゃダメとは言われてないだろ? ちょっとくらい、」
「めーれい、守る」
「ったく」


家族の約束は命令じゃないんだぜ。何度言っても聞かない妹はそういうところだけ可愛くない。


「オマエ、まだあの家いる気か?」
「けーやく、守る」
「あっちは守る気ないのにか?」
「それ、これ、違う」


可愛くない。頑固者。

いつだか、名前がまだ小学生だった頃に身内とはいえ頻繁にウチに来るからせめてご両親に挨拶に行った方が良いだろうと。わざわざスーツに着替えて菓子折り片手に訪問した。


『社会のゴミが。血縁もないくせにたかりに来たのか? 恥を知れ』


その時吐き捨てられた言葉がソレだ。

眼前で締められたドア。立ち尽くすオレが呆然としている内にインターフォンから『早く退かないと警察呼ぶぞ』の脅し。どう考えたって人当たりが良い対応じゃなかった。そりゃあ相手のご両親とオレは血が繋がってない赤の他人だ。当たり前のことなのにどうして金をむしりに来たと勘違いされたのか。

ウチに帰ってから伝手を使って調べた結果、答えは簡単に見つかった。イザナと名前はオレと血が繋がっていない。エマの母ちゃんの前の旦那の連れ子だったんだって。さらに衝撃の真実、名前は自分が養子に行く代わりに母ちゃんやイザナ、エマの援助を求めた。その金が一切支払われていない。いや、もしかしたら初めに母ちゃんに支払われたのかもしれないが、少なくとも名前はイザナのいる施設と佐野家に支払われていると思い込んでいたんだ。

払われてもいない金のために名前はあの家にいる。細っこい手足に意味不明なアザをこさえながら。


「オレがどうにかしてや、」
「シンチロ」


釘を刺すようにジッと見つめる紫色。イザナと同じように黒目が大きくてどこを見ているのか分からない瞳。けど寂しがり屋のイザナよりずっと、もっともっと名前の目は闇深いものに見えた。明らかに細長い何かでぶたれた痕を見つけた時、オレはキレて単身であの家にカチコミに行った。

嘘つきどころの話じゃねぇ。
クソ以下のドブ人間が。
どっちがゴミか思い知らせてやる。

頭に血が昇って騒ぎを起こしたところで警察を呼ばれ、パトカーが到着する前に名前に抱えられて逃がされた。この細さでもアスリートなんだと知らしめてくる腕っぷしで俵担ぎのまま走られた時は怒りを忘れて固まっちまったっけ。


『アイツらにひどいことされてンの分かるか? オレは大事な妹をあんなところに置いてけねぇよ。あんなとこ逃げちまえ』
『ヤ』
『頼むよ、オレが嫌なんだ』
『うー…………せぇじん、じゅはち、バイバイすりゅ。まつ』


それだけ言ってアイツは首を振り続けた。契約だからと、相手が破ったからこっちが破っていいなんて道理はないと。首を振りすぎて目が回りかけている妹にオレは折れるしかなかった。

成人は二十歳だよ、と訂正してやらなかったのは早くあそこから逃したかったからだ。本当のこと言って『じゃ、にじゅね』なんて返されたらたまったもんじゃない。

それから不思議と怪我をする頻度が減った。無意味な暴力を避けるのを覚えたらしい。『今までも避けて良かったんだぞ』とか『やっぱりうちのバイク屋に住まね?』とかいろいろと小言を言うと『シニチロも、よけない、わざと?』と純粋に返されて膝を折った。オレが避けないのは避けられないからです……。万次郎にも似たようなこと言われたなあ。胸が痛いなあ。強い弟妹を持つ兄の勲章ということにしておこう。

18になったら相手がどう出るかは分からないが早々に連れ出してしまおう。こうなったら昔の仲間に頼みこんでもいい。名前は中学の柔道の大会を連覇しているし将来有望選手としてテレビに出たこともある。オリンピックに行かせてやりたいと鼻高々に語るあの夫婦がそう簡単に手放すとは思えなかったから。


「シニチロ」
「んー?」
「結婚しよ」
「ア? んんー……」


いつからか繰り返されるようになったプロポーズ。あまりに軽く口にするせいでオレも慣れちまった。

結婚。結婚かぁ。そっか。18なら余裕で結婚できるし一緒のところ住んでても違和感ないもんな。オレは名前のこと妹だと思っているけど、あのクソ夫婦から引き離すとしたら手っ取り早い、か?

見下ろす。見上げられる。ぼんやりした顔はいつの間にか随分大人になった。まだ中学生のくせに柔らかいほっぺは前よりスッキリした気がする。ガキ臭さが抜けてきて目鼻立ちがクッキリすると、もともとの外人顔になんとも言えない妖しさが出てくる。将来ものすげえ美人になるんだろうなって嫌でも分かる。今でさえポカンと半開きの唇すらポッテリ色っぽい。すぐにでも吸いつきたくなるくらい…………。


────ねェわ。


遠慮がちにTシャツの裾をつまむ指はきっと縋っているようでいてただの催促だ。コイツはイザナが家族を欲しがっているからオレと紙の上で家族になろうとしている。トチ狂った考えが一瞬でどっかに行った。オレはその指を丁寧に解いてやってから、無表情なのになんか言いたそうな顔を誤魔化すように鼻を摘んだ。



「妹とはしねェよ」



オレたちは、オレとイザナと名前はとっくの昔に家族になっている。万次郎やエマと同じオレの兄弟なのに。流石にソレはなしだろ。

ムッと眉間にシワを寄せた名前はどっからどう見たって可愛いオレの妹だった。












「やめろ一虎あぁ!!!」



じいちゃん、あの道場ひとりで切り盛りすンの大変だろうなァ。体壊さなきゃいいな。

エマ、アイツひとりで家事はしんどいよな。たまに帰って手伝ってやっか。ケンとのことも気になるし。

万次郎、喧嘩は強ぇくせにまだまだガキだもんな。オレが見ててやんねぇと。

イザナ、まだ仲直りできてねぇ。名前ともエマとも再会できてねぇし、万次郎にも会わせねぇと。アイツ、寂しがりだもんな。

名前、18の誕生日に迎えに行ってやって、家族6人で、みんなで、一緒に……いっしょ…………、なんで……………………、




「【オーラというものがあります。およその生物が生まれながらに持つ生命エネルギーの呼称であり、通常は全身にある精孔に蓋があることで緩やかに流出し、常人には知覚できません。その蓋を取り外した者が自在にオーラを操ることが可能です。これを念・念能力者と呼称します。しかし稀に訓練せずとも生まれつきオーラを操る者も存在します。世間では彼らを天才、奇才、超能力者、仙人、化物等々と畏怖する傾向にありましたが、この世界では何故か無意識下で微弱に操れる人間が散見されます】」



ぬるま湯に浸かっているみたいだった。目だけ出した状態で外を見ている。耳はずっとぼこぼこと泡の音ばっか拾って、その合間に聞こえる声はオレの名前を呼んでいる。そういうことが時々あった。

寝ているのか起きているのか、単純に寝ぼけているのか。曖昧な日々を裂くようにハッキリ聞こえた言葉。知らない外国語のくせに意味だけはすんなり頭で理解できる。いや言ってる内容は小難しすぎてサッパリだが。



「【シニチロもまた、その一人でした】」



シニチロ。シンチロ。あんだけ練習してやったのにまーだちゃんと言えないのかよ。そんだけスラスラ喋れるようになったってのに…………うん?



────名前?

「【念は念能力者が死んでも解除されるものではありません。むしろ余計に強力に、悪質に変化し生者を害する可能性がある。オーラを知覚できない人間の語る霊魂のほとんどは念能力者が死後に遺した念の残滓です。ゆえに、あなたの今の状況はシニチロの霊魂ではなくよくできた記録媒体です】」

────オマエ、そんなにしゃべれたのか。

「【オーラを介しての発音を試みているだけです。シンチロの記憶はオーラの形を取っていますのでオーラを舌に乗せれば繝上Φ繧ソ繝シ語も聴き取れるかと推測しました】」

────へえ。たくさん頑張ったんだな、偉いな。今度なんか買ってやるよ。縁日まだやってっかな。好きだろ、わたあめ。

「【ありがとうございます。現在記憶媒体が消えずに残留しているのはシニチロ一人の原因ではありません】」

────だよな。オレじゃなくて万次郎がどら焼き食ったんだぜ。じいちゃんもひでぇよ。エマだって勘付いてるのに。

「【……失礼します】」

────イザナはやっぱデコ出したほうがいいって。下手に隠すと逆にダセェよ。オマエのツラ、派手な見た目で迫力あるじゃ、ん! ……っ、んぅ、っん、んーーーっ!?



ポッテリとした唇が視界いっぱいに広がったと思えば、水の中にあったはずの口に思いっきり柔らかい感触が押し付けられた。それどころかするりと唇の隙間に舌を差し込まれて何とも言えない温かいものが注ぎ込まれる。温かい、いや、熱い? ビリビリして、なんだこれ。なにが、なん、どうしてオレは名前の唇を知って、くち、妹とキ、キ、キ…………ッ!?



────ぷはっ! ななななにしちゃってンのオマエ!?

「【私のオーラを注ぎ込みました】」

────なん、なに、兄妹でチューはナシだろ!?

「【粘膜接触は手段で目的は意識回復です。先程と比べて思考が明瞭になったでしょう。建設的な話し合いが可能になったはずです】」

────あ? あ、あー、いや、まぁそーだけど。つかオマエそんな難しい敬語使えたわけ?

「【一度説明したはずですが】」



あっ、いつもの名前だ。

ムッと眉間にシワを寄せて心底理解できない生き物を見るようにこっちを見上げてくる。高校に上がって国際大会に出れるようになったんだっけ。テレビで見た時はかなり感動したよなぁ。あのクソがコーチ席にいたのはマジで殺意しかなかったけどよ。



「【シニチロのオーラは死後暴走し親族の元へ分散した状態で張り付いています。あなたは私の元へ来た一部。ジィ、マンジー、エマ、イズ、私の5名に確認されました。内ジィはシンチロの葬儀の際に対処しましたが、他が少々厄介です】」

────オレが、暴走? じいちゃんや万次郎たちに、なに?

「【そもそもシニチロだけのオーラでは今回の現象を引き起こすには無理があります。仮定すればイズやマンジー、バイクショップに出入りしているシニチロの御友人方をはじめとしたオーラを微弱に操っている者たち複数名による共通観念が、】」

────待て待て待って話が早いし難しいって! もうちょいゆっくりカンタンにしゃべってくれ!



全力で止めたオレに名前の目は今まで見たことがないくらい生温かった。すごい、妹に哀れまれている。オレ死んだのに、死んでもこんな感じなのかよ……。



「…………シニチロ死ぬ、友達たくさん悲しい、悲しいエネルギー集まる、シニチロゆーれぇなった」

────……おー! なるほど!




まさかまさかのあのカタコト日本語にめちゃくちゃ感謝する日が来るなんて。死んでみなきゃ分からないモンだな。



────えオレ死んだのッ!?

「…………いま?」




馬鹿な兄貴で悪かったな。











幽霊になってから時間っつーモンが曖昧だ。ちょっと船を漕いだだけでいつの間にか季節が変わってやがる。なんでもオレを思い出すヤツが多いほど意識がハッキリするらしい。だからかちゃんと起きてられるのは大体夏か冬。オレが死んだ日か黒龍の結成日。いろんなヤツに迷惑かけちまってるんだろうな。

ま、死んでも変な置き土産を残しちまっているんだけどよ。

長く長く根気強く話し合った結果、どうやらオレは本当の佐野真一郎ではないらしい。佐野真一郎が死ぬ前に残した未練と佐野真一郎のことが大好きなヤツらの思い、執着? とかいろんなモンがオーラっていう不思議エネルギーになってこの世に残っちまった記憶なんだと。こうして考えたり名前と会話できるのは、なんだ、アイツの裏技だとか言ってたか。まあ同じような不思議パワーで幽霊みたいにいられるんだと。

そんで前のぼんやりしたオレは未練になって家族に張り付いている。じいちゃん、万次郎、エマ、イザナ、それと名前。今フツーに会話したり考えたりできるオレを除けば四つ、しぶとくこの世に残ったオレがいる。じいちゃんに張り付いていたオレは名前の裏技でどうにか成仏(処理って言ってた)できたが、万次郎とエマとイザナのが厄介らしい。特にオレを張り付けたまま近寄ると相乗効果で余計に成仏しにくくなるとか。じゃあ同じところに住んでる万次郎とエマはヤバいのか? って疑問にこともなく『ン』と頷かれた。じゃあどうすんのって聞いても『【時間を置きます】』だと。これで名前まで近寄って行ったらさらに厄介になるからと、アイツは佐野家に近寄らなくなった。

オレは、家族全員で仲良く暮らしてほしいのに。



────そもそもさ、オレ成仏しなきゃダメなわけ?

「【今は穏便に済んでいますが、どんなキッカケで悪化するか不明なので】」

────悪化?

「【分かりやすく喩えると悪霊化。その場合近くの人間の命は保証はできません】」

────バッカそれを早く言え! 今すぐぶん殴りに行くぞ!

「【近寄ったらいけないと言いました】」



変な外国語でしゃべる名前は別人みたいに落ち着いている。でもよく観察していると言葉が固いだけで表情も仕草も全部オレが知っている妹で。白い髪も、小麦色の肌も、紫色の目も、形のいい眉を困ったようにほんのり下げる表情も、上目で小首を傾げる動作も、半開きのポッテリ色っぽい唇も、ピッタリとしたタートルネックの上からでも分かる膨らんだ胸元も、いつの間にか伸びた背も、シニチロとまだ舌足らずにオレを呼ぶ声も、あれも、これも、それも……………………あれ?


────オマエいくつだっけ。

「じゅうはち」



18。18歳って、何か、何かあったような。なんだっけ。



「シニチロ」

────ぁ。



ぬろりとしたものが唇の上を這う。そのまま何回かペロペロと行き来した後で隙間に差し込まれた。ピッタリと押し付けられたふわふわの唇。口の中では舌同士が擦り合わされて、その度にないはずの脳みそがビリビリと痺れた。

妹とキスしている。
妹。
血の繋がらない妹。
生きている妹。
もう結婚できない妹。
妹。妹。妹……?



「【あなた・・・の未練は、私が18歳になって今の家を出ることで消えます。あなたは来年の3月に消えます。消えます。消えます】」



そっか。オレ、3月に消えるのか。あとどんくらいだ? 「半年」そりゃあ長いのか短いのか分かんねぇな。

正気に戻すために注ぎ込まれるオーラ。それよりも唇に残っている感触の方がガツンと来るなんて、文字通り死んでも言えねぇな。別の意味でぼんやりしだした頭を振って、透ける手でオレは妹の頭を撫でた。

次にハッキリ目が覚めるのはきっと黒龍の結成日あたりだろうなあ。名前は確認だと言って墓参りに行って万次郎やエマと蜂合わないように帰るから、今度もきっと会えないんだろう。

そう、思っていた。




「うおおお!!」
「稀咲!?」


バイクの排気音。知らねえヤツのがなり声。振り上げられたバッド。金髪のガキが目を瞑って身構える。路地の向こうに見えた景色がスローモーションのように動いて。バッドが誰を狙っているのか分かる前に名前が走りだした。持っていた花束を道路に放り投げて、ヒールのあるブーツのままコンクリートを蹴飛ばして、女の頭とバッドの隙間に滑り込んだ。──ッカアァァァン!!



「……だれ?」



エマの頭を大事に抱え込んだまま、名前の体が道路に倒れ込んだ。








画竜点睛フラックス

具現化系→特質系。オーラを注いだ物質を別の物質へ変化させる能力。──だったものが転生を経て物質から生命を生み出す能力に変化した。物質判定は名前本人が行う。人間のオーラは基本的に生き物判定だが死人のオーラはモノだと思っている。ズルい。ベロチューはあくまで応急処置。

真一郎は名前のことを本当に妹だと思っているけれど18歳の名前に迫られたらグラつくくらいには可愛いと思っています。でも本物の真一郎は名前が16歳の時に死んだし真一郎もどきはキッカリ成仏するので真一郎とはくっつきません。

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