エイプリルフール

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どうぶつになる のろいを うけた!
幼女と愉快な仲間たち。


「右から順に、イタメシ、クロちゃん、くぎゅ、姉御、おにぎり、パンダ。それでね、この子がナナウミ!」
「愉快の極みじゃん」
「ふざけないでください」

幼女はイベントを楽しむタイプの幼女。特にお祭り事は皆で馬鹿騒ぎしたいので、たまたま四月一日に高専に来たのをいいことにはっちゃけた。
たまたま同じ教室で談笑していたから皆仲良く平等に。右から仔虎、ハスキー、茶白猫、黒い狼、白蛇、レッサーパンダ(!?)。そして極め付けは教卓に止まっている一羽。

「七海の何これ。フクロウ?」
「正確にはミミズク」
「あー、前髪と羽角が似てるかも?」
「悠長に喋っている場合ですか。説明」
「え?えいぷりるふぅる」
「今日から四月だねぇ」
「馬鹿が」

特に理由なく動物化すな。

「ナナミン口悪ッ」
「キレて当然だろ」
「猫派つってもなりたいワケじゃないんだけど」
「つうかなんで私が狼で恵がハスキー?」
「しゃけ」
「オマエら俺につっこまないの?レッサーなパンダに一言慰めは?」

なんやかんや多種多様な動物が集って話し合ってるのは癒される。

「喋る動物さんとかファンシーで最高だと思うんだ」
「何故五条さんだけ無事なんですか」
「そうよ。いっそ虫にでもなればいいのに」
「クマムシあたりがオススメだ。小さくて目に見えねぇ」
「君たち先生に対する敬意は?」

あるわけ。

「サク、五条先生は仲間外れでいいの?」
「だってゴダイゴと遊ぶ気ないもん」
「うん?」
「遊ぶって」
「デデニープリンセスごっこ!昨日さぶすくで見た!」
「えぇ……」×7「おかか……」

この幼女ホントにフリーダムだな。
ふにふにほっぺを赤くして仔虎に駆け寄る小さな体。装備は猫じゃらし。
ふりふりすれば虎杖と釘崎が嫌が応にもウズウズ。伏黒が呆れてわふんと鳴き、あまりの犬っぷりに耳がペッタリ。真希が無意識にグルーミングしかけて慌てて距離を取る。狗巻はどこまで半身を起こせるかチャレンジをし出し、パンダはあざと可愛い威嚇の練習。
七海は幼女の頭に飛び乗った。

「動物と触れ合いたいならその手の牧場にでも行けばいいじゃないですか。あまりに非人道的です」
「だってホンモノは懐かないもん。つまんない」

幼女はあくまで呪いなので、デデニープリンセスのように無垢なる存在とは対極に位置する。敏感な動物と戯れるなんて夢のまた夢な悲しい幼女なのである。
四月馬鹿はどんな馬鹿騒ぎをしたって大抵許されると思っている。邪悪さが隠し切れていないサクに、虎杖はふと思いついたことを口にした。

「そういやさ、俺ら普通に喋ってるよな?」
「だからなんだよ」
「動物って人間と同じような声帯じゃないって聞いた気が」
「そーなの?」
「おい馬鹿やめろ」

途端に全員の口からそれぞれの動物らしい鳴き声が漏れ出す。虎杖に両サイドから伏黒釘崎の尻尾がビタンビタンぶつけられた。

「動物だって喋りますよ。デデニーでもセバ〇チャンやフ〇ンダーが喋っていたでしょう」
「そーいえば」
「(あれって多分プリンセスが魚と話せる人魚だからだよな?)」
「(黙ぁってろ)」

瞬間みんなの喉が正常に戻る。一級術師ってすごい。特級と大違い。
その特級といえば、ニヤニヤ顔のままフクロウのように首を傾げている。

「名残惜しいんだけど、そろそろ生徒諸君の任務の時間が迫ってるんだよねぇ。僕もやることがあるし」

サクちゃん、と。五条がある方向を指し示した。首に狗巻を巻いて真希に寄っかかりながらパンダと威嚇ごっこをしていた幼女。キョトンとした顔で五条を見上げ、次に教室の掛け時計を見上げた。時刻はちょうどお昼の12時を過ぎたあたり。

「エイプリルフールの嘘は、午後にはネタバラシしないといけないんだよ」

──ボフンッボフッボフッ!
『みんな本当は動物なんだよ』という思い込みは、次の瞬間に全て嘘になった。
全員が教室の床に座り込んでいる中、七海だけ直立して気怠げにサングラスをかけ直している。それこそ狐に摘まれたような顔で生徒たちは自分の体を確認し、隣の学友を見た。いつも通り人間の姿だし、パンダはレッサーがちゃんと取れている。それはとても良いことなんだけれど。

「説得できるなら最初からしとけよッ!」×5 「こんぶ!」「はぁ……」

それはそれとして五条の適当さはどうにかならないか、とイラつく一同であった。

「せっかく買ったのにぃ」
「伊地知くんが、でしょう」

幼女は力なく猫じゃらしを振った。
そんな今年のエイプリルフールである。


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