エイプリルフール

#month#/#day# #wday#

どうぶつになる のろいを うけた!
サッちゃんハムちゃん(韻)


「小さないのち……」
「握り潰しそう」
「ヂッッッ」

助けてママパパ恵くん。
一般成人男性よりも固くてゴツゴツしている一般術師男性の手のひらで震えるしかない。近くて興味深そうに覗き込んでくる黒い目隠しも怖い。ちゃんと六眼で解析してくれてるんだよね?面白がってるだけじゃないよね?

「私のことをなんだと思っているんだ。サッちゃんを握り潰すわけないだろ」

そう言って軽く握り込むのやめてくれません?普通に怖くて小さな心臓バックバクなんだけど。
いかに私が“ハムちゃんの頬袋”という術式を持っているからって、まさか本当に頬袋を持つことになるとは。ヘケッとする気力もない。
幸運なことに特級二人の目の前でボフンッとなったからすぐに保護してもらえたけれど、この感じからしてあんまり幸運ではなかったかもしれない。端的に言って怖い。怖っ。五条がツンツンしてくるのはまだマシで、夏油の小さな瞳孔がカッ開いているのが怖い。

「呪霊だったらずっと一緒にいれるのに……」

オマエに自称ママの矜持はないのか!?
「ヂッッッ」「あっ」ゲ油の手から飛び出して、腕、肩、お洋服を伝って大脱出。五条の「嫌われてやんの」の笑い声を背に全速力で逃げた。ハムちゃん意外と動ける。正直人間の体よりすばしっこい。

「リコ! どこだリコ!」

恵くんが私を呼ぶ声が聞こえた。
恵くん! 恵くんならあの二人から匿ってくれる! サッちゃん恵くんだいすき!
「チチッ!!」何もかも大きな障害物を避けて通って駆け抜けて、恵くんの声が近くなったところで。──ぬるっ。顔ほどの大きさの、ぬらぬら光る黒い物体。クルミの殻の断面に似ているソレが風を吸い込んだ。
玉犬の鼻だ。鼻さえハムちゃんの顔くらいあるなら、体は恐竜じみた大きさ。本能からふるふると体が震える。カパリと開いた口とその中にある長い舌、鋭い牙。いつもふわふわ撫でさせてくれる黒くんはワンちゃんみたいに大人しいけれど、今はキュッと絞られた黒目が、まるで、まるで獲物を見つけたみたいで。

「いたか?」

いま『食っていいぞ』て言われたら、私って即死……。

「ヂュヂュッッッ!!」

死にとうない死にとうない死にとうない!
来た道を逆走して、私は初めて自分から五条に助けを求めた。「うぉ!?」190cmをよじ登って上着の首元に入り込みプルプル震える。夏油が何か言った気がするけど余裕がない。

「小さないのち、服の下に入られると動けない……」
「だろ? 悟には荷が重いよ」
「そのよこしなさいって手やめろ」
「うちの子が心配なんだよ。うっかりやらかさないとも限らない」
「傑は僕がハムスターに乱暴すると思ってるの?」
「人間だって潰せるだろ」
「“できる”と“やる”は違いますぅ」

オマエらほんとさ、ほんとさオマエら。
プルプル震えているうちに呪いは解けたけれど、私はしばらく五条の腰にしがみつくことになったし、恵くんはなんかショックを受けて間接的に落ち込む事態に発展。

「小さないのち……」

夏油はいつも通りでやっぱり怖いなって思いました。


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -