エイプリルフール

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どうぶつになる のろいを うけた!
しじまと地上最強生物。


「姉貴! 五条さんがヤバい呪いモロに食らったって……なにしてんだ?」

恵は怪訝に顔を歪めた。珍しく平日に姉から電話があり、一言。『ゴジョー、呪い、ヤバい』背後のケタケタ笑いが明らかに人間のモノではなく、五条のためではなく姉の危機に駆けつけたのだ。
何故か高専敷地内に姉はいた。いつも訓練をするグラウンドに立ち、周囲は二年生三人が転がって死屍累々。本格的にヤバいやつかと近寄れば、各々が腹を抱えてピクピクと陸に上げられた魚状態だ。笑い死んでやがる。ここでやっと先ほどの笑い声がこの三人の爆笑だった可能性に思い至った。

「どんな状況だよ……五条さんは、」
「ん」
「ん、って」

何かを見せつけるように人差し指を差し出す姉。けれどそこには何も乗っていない。ふざけているのかと思えば、ふざける姉の姿が想像できず、睨むように目を凝らす。白い指の指紋の上に何か黒いものがある。紙幣の図柄からニホンの文字を探すように目を酷使すれば、それは動いて見えた。

「なんだ、ソレ」
「ゴジョー」
「は」
「ゴジョー、クマムシになった」

死んでいた真希が「ヒョェッッ」と奇声を上げ、狗巻が「ぉが、ぉかかおがかおがが!」とむりむりみたいなノリでもがいた。パンダは引き続き震えている。
クマムシ。氷点下にも放射線にも耐え宇宙空間でも生きられる最強生物。まあ、ほとんど仮死状態みたいな特殊条件下でのみの最強だが。
190cmが0.3mmほどにまで縮んだ。あの自他共に認める最強が最強の耐性を持つ動物に変化したのは、らしいというかなんというか。というかこの人がコレになったら今後呪術界はどうなるんだろう。
地味に張っているらしい無限から見知った呪力がジワッと漏れている。アラームが鳴らないほどの、雀の涙よりも少ない残穢。笑うに笑えなくなった恵である。

「コレどうするんだ……」
「大丈夫。強いよ」

人差し指と親指でプチッとするんじゃない。無限に阻まれるのを面白がるな。ビビったろうが。
結局なにをやっても笑い転げる二年生と頭が痛い恵、しばらく遊んで飽きたのか「どこ置く?」と聞き出した姉。そこでやっとというべきか、クマムシは身長と騒がしさを取り戻したのである。

「動物になれる呪具って言ったじゃん! なんでムシ!? は!? クマムシは緩歩動物? 知らぬェェーーー!」

もっとなんかあったじゃん、犬とか猫とかになってさァ!しじまに撫で撫でされてペロペロし返してスカートに顔突っ込む馬鹿犬のフリしてさァ!?
とか騒ぎ出した大人に恵と真希は渾身のローキックをお見舞いした。相手は無傷だった。

ちなみに最初の電話の笑い声は甚爾の引き笑いである。


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