向日(学園祭の王子様)
◆学園祭のチラシ
「名前、名前」 「がっくんうるさいよ」
放課後、必死で今日締め切りの宿題をやっていた私は、声の主の方を見ることなく返事をする。 彼は教室の後ろのドアからひょっこり現れてこちらに近づきながら、私めがけて紙飛行機を飛ばした。若干歪な形のそれは私の頭に見事命中し、同時に彼はナイスコントロールと言ってピースをかましやがった。私は頭に当たって床に墜落した紙飛行機を拾う。
「もー邪魔!」
がっくんは私の前の席に座っていた。そして再びノートとにらめっこをし、宿題をやり始める私の様子を伺いながら、机の端に避けておいた飛行機をノートの上に置き直した。どうやら今の私の状況など彼にはお構いなしらしい。
「私宿題出しそびれちゃうんだけど」 「俺のクラスさぁ、これやるんだ」
彼の耳は飾りなのだろう。私の言葉を華麗に流し、自分の話をし始めるではないか。
「ぜってー来いよな」
彼が指さす紙飛行機、どうやらその正体は学祭の出し物のチラシらしかった。 そして満面の笑みを浮かべて立ち上がり、宿題頑張れよと言いながら、私の頭をがしがし撫で回す。
「あ、ちなみにその数式ちげぇよ」 「え、嘘?」 「ばーか。じゃあな」 「教えてよケチ!」
嵐のように去っていった彼には悪いが、紙飛行機を広げてチラシの中身を見るのはもう少し後になりそうだ。
「名前はほんま岳人に愛されとんなぁ」 「いやいや忍足君ほどでは」
(101108)
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