「風丸くーん、鬼道君がさがして…」

 扉を開けて教室に入ると、一人ぽつんと座っている風丸君の背中が見えた。まるで人形のように動かないでいる。額縁を持ってきてその中に彼をすっぽり収めてみると、綺麗な絵が出来上がる気がした。時間が止まった空間に足を踏み入れたみたいだった。

「風丸君?」

再び呼んでも返事は返ってこなかった。正面に回り込んでみると、頬杖を付いたまま目を閉じている。息、してるのかな。

「いっちゃーん」

 前に円堂君がふざけて、風丸君が小さい頃に呼ばれていたあだ名を連呼していたことがあった。その時は恥ずかしそうにしながら怒ってたけど、今彼はうんともすんとも言わない。
 顔に耳を近づけるとすーっと呼吸音が一定で繰り返されている。なんともまぁ、

「器用な寝方」

 呟いて、一瞬だけ風丸君の寝息が乱れた。それを合図に我に返った私は、距離を縮め過ぎたことに気づく。音を出さないよう素早く彼から離れたが心臓はうるさかった。

「起こすの、もったいないな」

 そう思いながら、風丸君の前の席に座り、動かない彼を眺める。綺麗な寝顔。部活始まってるよーと小さい声で告げ、彼の頭を撫でた。

「あーどうしよう」

 行かせたくないなぁ、なんて思ってしまうよ。



役立たずのイブニングコール






「風丸、山田何して…」
「あ、鬼道君」
「いや、その…邪魔したみたいだな」
「ん?ねぇ、見て見て。風丸君笑ってる」
「…ぷっ、貴重じゃないか」
「良い夢でも見てるのかなぁ」
「だろうな。後で存分にからかってやろう」

100206


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