「なー、お前御幸のどこがいいわけ?」 「え、何いきなり」
右手で頬杖をついたままこっちを向く倉持。見事に右の顔半分が潰れ、どこか不満げな言い方とじとっとした目つき。倉持も格好いいと思うけどと言う言葉は、その潰れた顔をもう一度目にするなり喉の奥に引っ込んでいった。
「おもしろくねぇ…」 「でも倉持もモテてるよ(たぶん…)」 「おっ、マジで?」
単純だ。瞬時にその曇っていた顔は笑顔に変わる。キラキラ輝いた顔になった。しかしそれもほんの数分のことで、また彼は眉間にしわを寄せた。
「まだ何か不満?」 「論点がずれただろ」 「あー…」 「で、どこ?」
振り出しに戻った。またあの潰れた顔で問いかける倉持。
「Sっぽそうじゃん」 「はぁ?」 「鬼畜って言葉が似合いそう」 「……お前馬鹿?」 「いや、でも御幸のSっぷりを想像するとゾクってする」 「へーふーんほー」 「言葉で攻めるのも上手そう!」 「お前楽しそうだな」 「うん。倉持もSっぽそうだけど」 「なんなら試してみるか?」 「山田も倉持も…お前らアホだろ」
私の馬鹿な会話に付き合ってくれる倉持も、ちゃんと突っ込みを入れてくれる御幸も、この緩い空間も私はとても愛しいと思うのだ。
101205
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