どのシャンプーを使ったらあんなに綺麗な髪の毛になるのだろう。どこのマスカラとライナーを使えばもっと瞳が大きくなるのだろうか。どうしたらあんなに可愛く笑えるだろうか。彼女の努力の賜物か、あるいは生まれながらの差か。炎天下の中でもマンガの中のヒロインみたいに爽やかな彼女の笑顔は女の私でさえ惹きつけられてしまう。一方の私はと言うと暑さ凌ぎのため頭にフェイスタオルをかぶせ、団扇で自らを扇いだ。生ぬるい風がだらりと攻めてくる。
「可愛いよね」 「誰が」 「倉持の隣にいる子」 「……ふぅん」 「何よ」 「お前も可愛いぞハナコ」 「そりゃどーも」
どこからともなくやって来た御幸は、持っていたペットボトルの液体を胃に流し込んだ。水滴の付いてないそれはきっと温いのであろう。液体が胃に流れる途中、ごくりと喉が鳴る。その瞬間がなんだか艶めかしくてすごく好きだった。もちろん御幸の喉を見ながら思い描いたのは倉持の姿だけど。
「馬鹿御幸」 「俺に当たるなよ」
どうでもいい会話が今は少し救いだ。
「うん、ごめん」 「どうした?」 「私も倉持の隣に並びたい」 「はぁ?」 「羨ましいのだよ」 「あー…はいはい」
あきれた口調が耳を通り抜ける。同時に軽く閉じられていたペットボトルのふたを開けると、また温いであろう液体を口に含み、ごくりと一度喉を鳴らす。ほとんど中身の残ってないペットボトルが私に渡された。飲めばやはり温い。
「ごちそうさま」 「おう」
御幸が私の頭をなでる。何故その手があいつじゃないのかとそんな邪念を押し殺し、私たちはしばらくそこでそうし続けていた。そんな真夏日。
お隣さんは 100922
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