「ねー、岩泉は好きな相手にどういう態度取るタイプ?」

風が心地好い屋上で購買で大量に買ったパンをリスのように頬を膨らませて食べていた時のこと。あまりにも理解し難い質問内容で、思わず「は?」と聞き返す代わりに質問者である花巻を睨んだ。

「睨まなくったっていいデショ」
「質問の意味が分からん」

そのままの意味なんだけど、と花巻らしい笑顔をする。そう言えば何となくこいつって及川に似てるよなぁ、と思って青い空を見上げると視界に入ってきたのは腹が立つほど整ったあの顔だった。

「岩ちゃん、空なんか見たって身長伸びな…いった!」
「松、イチゴミルクあった〜?」
「あったべ〜。あ、牛乳売り切れてたから岩泉はコーヒー牛乳」
「お〜サンキューな」
「皆酷い!及川さんを無視しないでよ!」

もぉ、そんな事するならこっちにだって考えがあるんだからね!、と人差し指を立てる及川に腹が立ち蹴りをお見舞いしてやる。

「…及川は、いじめるタイプじゃない?」

ひそっと耳元で囁かれ、思わず肩が震える。
まぁ、確かに及川はいじめるタイプなのかもしれない…端から見たら。実際、いじめるような奴ではない。普段だって、セックスの時だって傷つけるような事はしない。
「いじめては来ねぇよ」

一言言っただけなのに花巻は満足そうに頷いた。
及川は嫉妬深いし束縛だってする。さっき誰と何話してたの、なんて聞かれる事は日常茶飯事だ。
だからと言って激しいセックスを要求するだとか無理矢理抱いて来るだとかそんな事は絶対にしない。寧ろ「ごめんね、今日大変かもしれない」と先に言ってくるし、実際は身体に物凄く気遣いながらする。

「岩泉って、及川の事大好きデショ」

は、と睨み付けようとして自分の発した言葉を思い出せば忽ち顔が熱くなっていくのが分かった。自分で何言ってんだ、と思いながら花巻から視線を外せば大きな茶色い瞳と偶然にもばっちりと目が合った。

「岩ちゃん顔赤いけど、熱?大丈夫?保健室行く?」

ああ、もう、すぐにこれだ。嫉妬心の混じった心配そうな言葉。花巻がにやけていて松川が完全スルーしているのが見なくても理解出来る。二人の無言の「いってらっしゃい」モードにはもう慣れた。
「……行くべ」
「何?」
「保健室、行く」

どうせこのまま「マッキーと何話してたの」と尋ねながら俺の上に乗っかるのだろう。分かりきった事だ。なら、たまには誘ってやってもいいかもしれないという考えを持つ俺は馬鹿なのかアホなのか、それとも、

「じゃあ岩ちゃんが途中でぶっ倒れないようにこのイケメンな及川さんがお姫様抱っこしてあげよう!」

どや顔が気に食わなかったため取り敢えず腹に一発拳を入れてやる。及川は「それはイェスの反応?」と嬉しそうに言うので好きにさせてやろうと思った。
薬品臭いあの部屋まで宙に浮いていられるのかと聞かれれば余裕で答えられる。及川が俺を落とすはずがない、と。
薬品の臭いで充満した保健室の固いベッドで抱かれる腕の中、及川が以上に俺も嫉妬深いのかもしれないな、と自嘲した。


title by 秋桜




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