及川徹、岩泉一。もともと二人はどちらとも名家の長男だった。及川には姉がいて、岩泉は一人っ子だった。
タイプは正反対で趣味もバレーボールを除いたら全く合わない。そんな二人だったが、幼い頃からずっと一緒だった。
私立の小学校で出会い、そこから中高同じ道に進んだ。及川が誘って始めたバレーボールは熱が入っていた。


あの日までは。


岩泉の父親は人の鏡と言っても過言ではないような心優しい男性だった。岩泉もその人を見て育った。
父親は信用していた友人に金を騙し取られ、借金まみれとなり岩泉家は崩壊寸前となった。岩泉は父親を責めたり恨んだりすることはなく、黙って受け入れた。

そんな時、及川が岩泉にある話を持ち掛けた。それはもう嬉しい話であり、耳を疑うような話にも聞こえた。

「岩ちゃんが俺のものになってくれるなら、借金を肩代わりしてあげるし、おじさんやおばさんに仕事を提供してあげる」
「じゃあ俺、お前のもんになるわ」

岩泉は即答した。一瞬の迷いもなく、答えた。両親が助かるなら、これだけで親孝行になるのなら、と。
及川は満足そうに岩泉の手を引くと、「岩ちゃんは今から俺のものだよ」と目を細めて笑った。

岩泉は何となく察していた。及川のものになるということ、つまり自分が自由でなくなることなのだと。
別にそれでよかった。少しおかしい話でもあるが、岩泉は及川のことが好きだった。幼馴染みとして、親友として、ライバルとして、家族として…それ以上に想っていた。

「…及川」
「なぁに岩ちゃん」
「何でもねえ」
「ふふ、これからもずっと一緒だからね」
「…分かってる」

岩ちゃん、岩ちゃんと抱き締めてくる及川の背中に腕をまわした。何だか懐かしい。昔は、はじめちゃん、はじめちゃんとニコニコして自分の後ろを追ってきた及川がいつの間にか自分を支配しているのだ。
及川になら支配されたっていい。及川のものでいい。何でもよかった、及川と一緒にいられるなら。

「岩ちゃん、大好きだよ…離さないからね」
「及川…」
「俺、ずっとずっと岩ちゃんが好きだったんだよ。こんな形になっちゃったけど今の岩ちゃんには俺が必要でしょ?あんまり言いたくないけど、それが嬉しいんだよね」
「…俺、も…及川のこと」

好き、と言う前に口を塞がれた。岩泉にとってはこれがファーストキスで、初めての感触に戸惑った。及川はおろおろする岩泉にお構い無しで角度を変えて何度もキスをした。

「…っん、」
「岩ちゃんが俺のこと好きだったなんてびっくりしちゃった」
「お、俺だって…かなり驚いてる…」
「岩ちゃんと…シたいな、俺」
「っ、でも俺やり方とかわかんねえ」
「俺に任せて」

及川に再び口を塞がれた。舌が唇をノックしてきたので遠慮がちに開けると勢いよく浸入してきた。舌を荒々しく絡められ、呼吸が上手く出来ない。

「っん、ぅ…ふ、う…っ」

及川はこういったことに慣れているようで完全に及川にされるがままだ。
他人と舌を絡ませたことなんてないが、結構気持ちイイ。及川が上手いからってのもあるんだろう。

「んっ、ふ、おひ、か、っん」
「…ん、いわちゃん、じょうず」
「ふ、ん、あ…ぷは…っ」

息のしかたがわからなくて苦しかった。及川はきょとんとして鼻で息をすることを教えてくれた。

「岩ちゃんだいすき」
「…俺も」
「……ところで岩ちゃん」
「なに」
「勃っちゃった」

てへっ、と及川は舌を出した。待て待て。いつからそんな勃たせてたんだよ。

「岩ちゃん可愛いからもう我慢できないよう」
「…可愛い可愛いうるせえよ」
「可愛いよ、すっごく可愛い。…ね、岩ちゃんももっと気持ちよくなりたいでしょ」
「…任せるって言ったろ。好きにしろよ」
「耳まで赤くなっちゃって」

及川はそっと岩泉の衣服に手を伸ばし、ボタンを一つ一つ丁寧に外して行く。羞恥心ゆえに、岩泉の顔は紅潮したままだ。及川はこれまでにはないほどの妖艶な雰囲気を出していた。





title by ied



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