すき、と最近思う事が増えた。本当に些細な仕草や気遣いも、俺だけに向けられる優しい言葉も。ぜんぶすき。
好きになるのは必然的だったと思う。いつかは絶対にこうなるのだときっと心の奥深くでは思っていたはず。
人と関わるのが苦手で、でも周りの事を気にせずには居られなかったひとりぼっちの俺の腕を引っ張ったのはクロだった。部屋に閉じ籠ってゲームばかりしていた俺を外に連れ出してバレーを教えてくれた。
クロは俺と違って感情を素直に顔に出すタイプだった、昔は。俺は昔から喜怒哀楽に乏しかった。クロはそんな俺と一緒で何が楽しいのか知らないけど笑ってた。

高校入学してから、クロの事が好きだって気付いた。クロの彼女が変わる度に俺も女の子だったら良かったのに、と胸がチクチクした。でも、クロが一番大事にするのはバレーで彼女の事は二の次だった。
彼女を迎えに行く彼氏のように、部活を辞めたくて堪らなかった一年の俺をクロはわざわざ教室まで捕まえに来た。それがうれしかった。

クロがバレー部主将になってから、クロの隣に女の子が居たのを見たことが無かった。でも女の子の匂いはした。何となく分かった。彼女は作らず、不特定多数とセックスをしているんだって嫌でも理解できた。
愛の無いクロとのセックスですら羨ましくて堪らない。俺の知らないところでクロと女の子がぐちゃぐちゃになっているなんて考えたく無いけど、想像すれのは簡単すぎた。女の子の喘ぎ声とクロの低い声ですら幻聴となって聞こえてきた。

やだ、いやだ。
もう、こんな思いなんてしたくない。

「…クロ、」

クロの背中は大きくて男らしい。筋肉がついてゴツゴツしていてかたい。こんなクロとセックス出来るなんて、女の子はずるい。

「何だよ研磨、甘えたか?」

からかっているのがよく分かる。好きだと言ったら何て返してくるのか気になったけど怖くて言えない代わりに一言呟いてみた。

「男同士でもセックス出来るんだよ」

クロは驚く事なく「知ってる」と笑った。男の匂いは全然しないからしたことは無いんだろうけど知識は持っていそうな言い方だった。

「研磨くんは俺にどうして欲しいわけ」

ああ、クロは分かってたんだ。ずっと。ずっと前から。自分に好きだという想いを持つ女の子たちにも同じように言ったんだろう。何て意地の悪い、質の悪いことば。
それでも俺は言うしかなかった。ここまで来れば当然か。

「クロの手でぐちゃぐちゃにしてよ」

クロは満足そうに笑い、俺のジャージに手を伸ばした。幸い部室にはもう俺とクロだけ。見回りの先生もさっき来たばかりだから暫くは来ない。

ねぇ、クロ。好きにならなくていいから「好き」って言ってよ。絶対にそんな言葉を言わないクロが俺はすき。


title by 秋桜




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