女の子は可愛い生き物だと思う。キャーキャー黄色い声を上げて頬を桃色に染めて。本当に可愛いと思う。
俺には恋人が居る。女の子らしいとはお世辞にも言えない子。小学校中学校とバレーを続けて鍛えられしっかりと筋肉がついた身体。元々女の子の中では背が高かった。
高校に入ってからは俺が加入している男子バレー部のマネージャーをし始めた。俺目当てでマネージャーと違ってかなり真面目。

そんな彼女と俺は幼馴染み。小学校で地元のバレークラブに彼女を誘ったのも俺。親同士が仲が良く、平日も休日も一緒に遊んだり練習をしたりしていた。俺はこの頃からその子が好きだった。
中学に入ってからも登下校一緒でよく二人でどちらかの家の庭で練習していた。その時間が楽しくてつい「もう一回」を繰り返した。辺りが暗くなってからも笑って付き合ってくれた。

中学校の卒業式の日に告白した。自分でも驚くくらいストレートだったと思う。そうでないと伝わらないと思っていたから。想いを告げた時、「私でいいなら」と顔をリンゴみたいに真っ赤にして返事をしてくれた。あまりにも可愛くてキスをしたら思い切り殴られたっけ。

「委員会長引いた、悪い」

マフラーを巻きながら急いで来た事が一瞬で分かった。女の子らしくない俺の彼女がマフラーをリボンで結んだりする事はなくぐるっと一周巻いてあるだけ。

「岩ちゃん、ぐしゃぐしゃじゃない」

もう、と言いながらマフラーを巻き直してあげる。何気ないこれが彼女に触れるチャンス。

「つめた…っ」

岩ちゃんの顔に俺の手が当たってしまい岩ちゃんは目を瞑った。

「ごめ…」
「こんなになるくらいなら先帰れよ…」
「彼女は待つものです」
「じゃあ彼女辞める」
「ええ!?」
「及川が私のせいで体調崩したら困るだろ」
「エヘヘ岩ちゃんだいすき」
「…ばーか」

岩ちゃんの突き放す言い方は照れ隠しだって知ってる。必ず俺を気遣う言葉が隠れてる。そんな優しい岩ちゃんが好きだなぁって思う。
「岩ちゃん、帰ろ。んで、俺の部屋来て。エッチしよ」
「っ、ば、ばかやろ…っ」
「だって最近シてないもーん。俺の部屋が嫌なら岩ちゃんの部屋でもいいけど」
「及川の部屋でお願いシマス」
「え、いいんだよー?岩ちゃんの部屋でシて岩ちゃんママに声聞かれて岩ちゃんが真っ赤になるのでもウェルカムだよ!っ、痛い!」
「ばか、死ね!ばかクソ川、クソ及川っ!!」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!岩ちゃん痛いってば!」

こんな日が続くのもあと本当に少しだけ、か。寂しいなぁ。
気が付けばもう高三の冬、殆どの時間を部活に使ってた。休みの日は女の子とデートなんてして。考えてみれば彼女をほったらかしにする最低な男だ。
岩ちゃんと俺の進学先は近くない、寧ろ遠い。岩ちゃんは地元の大学で、俺は推薦が来た都会の学校。ちゃんとした男になって迎えに行くから、と前に伝えたら岩ちゃんは大笑いした。本気だと言っても全然相手にされなかった。それでも岩ちゃんは俺を待っていてくれるだろう。

「岩ちゃん」
「…なんだよ」
「大好き、ちゃんと待っててね」

予約、と左手の薬指にそっとキスわすると岩ちゃんは苺色に染まった。

「予約とか、卑怯だろ」
「及川さんの辞書に卑怯なんて言葉はありませーん!」
「…クソ川」
「なぁに」
「待っててやるから早く来いよ」

耳まで色を染めて言う岩ちゃんが本当に可愛くて思わずキスをした。甘酸っぱい果物の味がした気がした。レモンみたいに完全に酸っぱくはなくて、甘い中にちょっぴり酸味があるような。

このあと俺が岩ちゃんに思いっきり殴られた事は誰もが予想出来た事だろう。







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