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花巻と矢巾
「卒業、おめでとうございます」
「…アリガト矢巾」
やだ、行っちゃやだ。本当はそう言いたい。男らしくないけど、離れるのが嫌で仕方ない。
花巻さんは背も高いしカッコいいし、おしゃれだ。普段も校則には絶対に引っ掛からない程度にシンプルなアクセサリーを身に付けていた。そんな花巻さんを女の子が見ていないはずがない。及川さんほどではないけどモテ男だった。
花巻さんの進学先は東京の共学。バレーも出来るらしい。不安じゃない訳がない。きっと可愛い彼女が何人も出来るはず。…嫌だ、嫌なのに伝えられない。だって俺は花巻さんにとってただの後輩の一人に過ぎないから。付き合ってる訳でも特別親しい訳でもない。
「矢巾に言いたいことがあるんだケド」
「な、なんですか…?」
「あー…ひょっとしたら引くかもしれない、いや普通引くよな…」
発せられた言葉にどれだけ驚いたか、どんなに嬉しかったか。ああ、俺も早く大学生になりたい。
title by レイラの初恋