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松川と花巻
俺、松川のことすき。すきなんだよ。
言うたびに松川は苦笑いして「はいはい」って流すんだ。本気なんだけど、って言ってもダメ。決まって松川は俺を見ているようで遠くを見るような目をして笑う。
「…まつ、かわ」
「何?」
「俺の、こと…きらい、なの…?」
「…何で?」
「だって、俺が好きって言ったって、」
唇に温かく柔らかい感触。驚いて瞬きすら忘れてた。それから背中に腕が回ってきて、やっと抱き締められているのが分かった。
「花、ごめん」
「ま、つか…」
「泣かせてごめん。俺も花が好き」
「…ま」
松川が、俺を好き。
途端に目から雫が降ってきた。大粒の雨みたいに。