黒尾と研磨


猫を拾った。
部活を引退してから、(推薦で既に受かっているのに)受験勉強の雰囲気に流され、母親に無理矢理塾に入れられた。冬服に衣替えして、しばらく経ったころ。塾の帰り、段ボールを見つけた。
小さくて細い。まだ子供の猫。手を伸ばすとびくり、と身体が震え、俺を怯えているようだった。近くのコンビニで牛乳を買ってきて、飲ませてやると俺を警戒しなくなったようだった。もちろん連れて帰るなり、母親にはため息を吐かれた。



「…猫?」
「おー可愛いだろ。この間拾ったんだよ」
「触っていい?」
「そいつチキンだからいじめんなよ」
「クロじゃあるまいし」

孤爪が子猫に手を伸ばすと、子猫はじっと孤爪のアーモンド型の大きな目を見つめた。孤爪は子猫をじっと見つめ返した。

にゃーん
子猫は孤爪の差し出した手に身体をすり付け、甘えるような声で鳴いた。

「…お前ら似てるな」
「俺と猫が?」
「そう」

確かに子猫は孤爪と似ていた。人間を警戒してなかなか懐かないし、かと言えば周りを見ている。気まぐれ屋で、普段つんとしているくせに突然甘えてくるし。

「…クロ」
「なんだい研磨くん」

少し間を開けたあと、孤爪は視線を子猫の方へ向けた。

「俺とこの猫、どっちが可愛い…?」

黒尾は目を見開いた。普段嫉妬のし文字も分からないような態度をする孤爪が突然発した質問に対し驚いたのだ。

「研磨の方が断然可愛い」
「…そう」

後ろを向いた孤爪の顔がほんのり色づいていたのが見えたのは子猫だけだった。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -