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及川と岩泉
俺が唯一絶対の場所、青葉刑務所。囚人たちは俺に従い、俺の機嫌を損ねないように常に顔色をうかがっているのがよく分かる。
「おはよう、お前ら」
看守たちが囚人を整列させ、俺の挨拶で一日が始まる。無論、俺の挨拶には挨拶で返さなければならない。囚人たちは声を揃えて言う。一人でも口を動かさなかったり、遅れていたりしたらそれ相応の罰を下す。
囚人たちの中には未だに自分の無罪を主張する者もいる。そいつらは俺の言うことを聞かない。早くここを出たくないのかと問えば、返事は返ってこない。
奥にいる彼もまた、未だに無罪主張しているのだ。
「岩ちゃん、おはよう」
「…こっち来んなクソ川」
「もう、釣れないなぁ」
岩泉一。殺人罪で有罪になった者だった。彼は自分は無罪だとずっと主張し続けている。確かに彼のような者が人を殺すなんて考えられないだろう。でも、それはテレビでよく観る一般人の解釈。人なんて分からないものだ。彼の番号は4。でも俺は彼を番号で呼ばず、岩ちゃんと呼んでいる。
「さーて、岩ちゃんお待たせ」
「こっち来んな」
他の囚人たちが別の場所で運動だの、食事だのをしているとき、4番の彼を捕まえる。こうやって自分の地位を利用して彼を犯す。間違っても俺はホモでもバイでもない。ノーマルだ。これはセックスではなく、お仕置き。云わば、調教。彼が罪を認め、反省するまで止めない。
「ひぁ…!?」
シャツの上から胸を爪先でひっかく。岩ちゃんだってきっと、普通に女の子が好きだし男とこんなことをするなんて考えたことなかっただろう。