及川と岩泉

※CP要素なし、及川のみ


岩ちゃんは昔、神隠しに遭った。
あれは、確か五歳の頃。神社のお祭りに行ったとき。出店で買ったわたあめを食べていた。岩ちゃんは食べるのが早くて、俺はモタモタしていた。

『とおる。おれ、リンゴあめたべたいからかってくる』

そう言って岩ちゃんは走って行った。それっきり岩ちゃんは戻って来なかった。岩ちゃんのことだからすぐに戻って来ると思っていた。でも、三十分待っても、一時間待っても、岩ちゃんは戻って来なかった。俺はその場で泣き出してしまい、近くにいた神主さんが声を掛けてきてくれた。

『ともだちが、かえってこないの…』

ずっとまってるのに。
岩ちゃんはもともと、約束を破るような子じゃなかった。神主さんはお母ちゃんや岩ちゃんママに連絡して、大人たちは暗い中、岩ちゃんを探し回った。それでも岩ちゃんは見つからなかった。見つかったのは、岩ちゃんの大事にしていた怪獣をモチーフにしたコインケース。中には小銭が入っていた。
リンゴ飴を売っていた屋台のおじさんに尋ねると岩ちゃんらしき子供が小さいリンゴ飴を二つ買ったのだと言う。リンゴ飴を両手に持って来た道を走って行ったらしい。そうならば、俺のもとへ戻ってきているはずである。何かがおかしい。岩ちゃんは消えてしまった。

結局その日岩ちゃんは見つからなかった。


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