及川と岩泉♀



一週間足らずで彼女がコロコロ変わる幼馴染みを見ていると、けっこうツラい。胸がチクチクする。なぜだかよく分からないが最近ずっとそうだ。

及川とは小学校から一緒だった。性別の差なんて考えなかったあの頃は、よく一緒に遊んでいたものだ。採った虫を互いに見せびらかして笑い合ったことも、もう今となっては遠い思い出のよう。中学生、高校生となっても登下校は共にしていた。誰が決めたとかそういうのは全くなくて、気付いたら及川が毎朝ウチに顔を出していた。大抵、学校の連中には付き合っていると勘違いされたが、私たちは全くそんなことは考えていなかった。

しかし、私たちの関係を特に気にしていなかったのは私だけだったのだと、これから知ることになる。



「俺が好きなのは岩ちゃんだからさ」
「へぇ、やっぱそうなんだな」
「え、顔に出てる?!」
「いや、普通見ていれば分かるデショ」

偶然、及川を迎えに彼の教室へ行った時だった。花巻と及川の声が聞こえた。嘘、になんて聞こえなかった。


「あ、岩ちゃん!」
「お、いかわ」
「意外と早かったね、帰ろっか。じゃあね、マッキー!」

及川はいつもの調子で花巻に手を振った。私はどんな顔をすればいいのか分からず、俯くしかなかった。


「及川、好きな奴いたんだな」
「え、聞いてたの!?」
「…ちょっと聞こえた。誰とまでは聞こえなかったけど」
「じゃあ割りと最後の方か」

及川には悪いけど聞こえなかったフリをした。何て返事をするのかが無意識に気になったのだ。

「…付き合うとか考えねえの?」
「…付き合えるなら嬉しいけど、その子は俺のこと何とも思ってないからさ」
「っ、…おいか」
「好きって伝えても気まずくなるだけじゃないかな。それなら今の方がずっといい」

私は最低だ。及川の気持ちを知りながらこんなことを聞き出すなんて。今までずっと及川を傷付けていたなんて。


「岩ちゃん、そんな顔しないでよ。俺が勇気出せないだけなんだから。あの子にはもっと、男らしい人がお似合いなんだよ」

なんだよ、泣きそうな顔して。辛いくせに。

「おいか、」
「もういいんだ。…諦めてるから。一生片想いでいい。そのうち、俺に可愛い彼女が出来ても、将来、美女と結婚しても、俺の一番はあの子になっていればいい」

この話はもうおしまい、という顔だった。待って、私、及川に言いたいことがある。潔く付き合うことを選ばず、幼なじみでいることを決めている及川に伝えても無意味かもしれない。それでも伝えなければいけない。

「ごめん、及川。ごめん…」
「岩ちゃん?」
「本当は、聞いてた…及川が私を恋愛対象として見てるなんて思ってなかったし、恋愛に興味も全くなかった。私、及川を傷つけて…」
「もう、岩ちゃんてばずるいよ。俺、もう、岩ちゃんのこと諦めていたのに」
「っ、ごめ…」
「謝らなくていいから、代わりに言わせて」
「及川…?」
「…俺、及川徹は岩ちゃんのことが好きです、大好きです。一生大事にするから、付き合ってください」
「…っ、ばっかじゃ、ねーの…恋愛なんて考えたこともないのに、一生とか言われ、たら……何て答えたらいいかわかんねえよ…」
「え、そこはお願いしますでしょ?こんなにカッコいいこと言わせて、そりゃないよ。…俺のこと、好きじゃなくていいから。今までの分含めて、これからいっぱい俺のこと見て」



会話文長すぎてボツ




title by 確かに恋だった


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